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『嘘ばっ仮』

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 その僕の人生が終焉を迎えようとしている頃、『この』僕は、校舎の脇を流れるどぶ川の淵で途方に暮れていた。
 ついでに日も暮れつつあった。何もかもが腐海に沈みつつあった。

 なぜ僕が途方に暮れていたかと言うと、つまりはこの本が延々と空白によって叙述されていたからで、結局は無意味だからなのだった。

 ある物語世界は、その物語の解釈可能性の数だけ存在するのだが、この物語はただの空白ではないですか。これをどう解釈しろと言うのだろう?
 このまっさらな台本にセリフをつけなければならない。

 僕は立ち上がった。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」

 見ると、仮子が歩いている。2番目の仮子。僕がこの物語世界の中心であり、彼女がそれに対する役割を与えられているのは明白だった。となると、彼女との絡みは必須のはずだ。
 僕は駆け出した。

「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」
 彼女は、僕の呼びかけに振り向いた。
「えっ?」

「「くぁwせ」
「ちょ、ちょっと、何よ!」
「p;@」
「いやっ、やめてよ」

 彼女は僕の手を振りほどいた。
「くぁw」
 肩に手をかける。

 次の瞬間、僕の頬は鋭い痛みを訴えた。
「あっ…」
「lp」

 気づくと、僕は彼女を突き倒していた。
 周囲に人の気配がないことがわかっていた。

「あっ、やっ、やだ、やだよっ」
「k」


 それから僕が彼女を凌辱しようとして、いかなる暴力的行為に及んだかは記述しようもない。なぜなら、『これを記述している僕』は、そのような行為に及んでいないからだ。


 ただ明らかなのは、その一番肝心な時に、性的充足を得んと僕を突き動かしていた一物は、機能不全に陥った、そういうことだった。

「qawsedrftg」

 突然様子がおかしくなった僕を見て、ほとんど裸同然に剥かれた仮子は声を掛けてきた。

「ど……、どう、したの…?」

「ed」
「やっぱり」

 僕は狼狽した。

「じこ」

 なぜだ。

 なぜ、世界は僕の思うように動かない。



 背後には、教室であの僕を惨殺した1番目の仮子が迫っていた。
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