～いんくじぇっとぷりんた～
紛らわしいが、「いんくじぇっとぷりんた」はインクジェットプリンタの中に住んでいる妖精だ。通称「ぷりんたー」である。
彼女は非常に働き者だった。が、少しおっちょこちょいでもあった。彼女の仕事は、私達がプリンターにしてもらっていると思っている、まさにそれである。
彼女は本当によく働いた。しかしおっちょこちょいなので、印刷がずれたり、刷るものを間違えたり、紙を詰まらせたりすることも少なくなかった。
「この糞プリンターがっ！！！」
彼女はよく叱られた。それでもなおいっそう頑張った。しかし、頑張りすぎるとプリンターが悲鳴を上げ、使用主をよけいイライラさせてしまった。
そんな彼女にも楽しみはあった。それは仕事の度に送られてくる「物語り」である。
彼女はお姫様に憧れ、素敵なボーイフレンドを想い、冒険を夢見たりもした。
「おれ・・・もうやめることにしたよ。」
彼女はいつも次の物語りが待ちどうしくて堪らなかった。
「こんな誰にも読んでもらえないもの書いててもしょうがない、明日からは真面目に勉強するよ。そうそう、いい機会だしあの古いプリンターも捨てることにしたよ。」
物語りのおかげで、仕事も全然苦にならなかった。