―――― 間話
乳を搾ったり、草を刈ったりしているうちに、日が落ちて、晩になった。その間、ぼくはただぼーっと彼女の言うことに従っていた。特に逆らう理由もなかったからだ。それにやはり体を動かすのは心地良い。なんだか、久々に運動した気分だった。
「もう真っ暗。うちに入りましょう。夕飯を作るわ」
ぼくはにべもなく肯いて、彼女について玄関まで歩いた。そこでふと、
「トイレは何処?」
ぼくは訊いた。これから夕飯ならば、先にトイレを済ませておきたい性分なのだ。僕はそういうタイプの人間である気がしたのだ。
「トイレは外にあるの。あの小川のそばの小屋よ、わかる?」
うん、と肯いて、まぁほんとは暗くてあまりよく見えなかったが、
「これ、ランプ、暗いから持ってって。じゃあ先に夕飯作ってるわね」
ぼくはそのランプを借りて、トイレ小屋に向かった。
年季の入った木造の小屋だった。ドアをぎぃ、と開けると、床に中くらいの穴が一つ空いていた。どうやらそこで用を足すことになるらしい。さらさらと川が流れる音がした。穴をのぞき込むと、ランプの光が水面に反射した。小屋の隣を流れているように見えた川は、この小屋の下にも繋がっているらしい。
ぼろっちいな、と思った。ということは、ぼくはこれより良いトイレを使ったことがあるんだろうか。まぁ、いいか。
用を足して、母屋に帰った。