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05『Automatism #1』   作:小鉄

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Automatism #1

 俺の名はキンゼイ三世。かの名高きセックスドクターアルフレッド・キンゼイの孫だ。世界中の性欲者が俺に血ちんぽ。あるいは血まんこ。それは生理と云う。前者は血尿。ケツ尿は温泉浣腸。官庁の官房長官は暴漢。

 そんなキンゼイ三世の俺であるが、この頃いっこうに性欲が減少しつつある。朝、俺が目を覚ましても相棒はまだまだ夢のなか。以前ならまったく寝るどころか横になることすらヨシとしなかったあのボウイが近頃じゃすっかりフヌケ、マヌケ、キスケ、浅漬け、ぬか漬け、一夜漬け、づけ丼、素うどん、ドンキーコング、鈍器法廷のたぐいだ。考えてみれば俺も57才……精力の途絶え衰えは、祖父のレポートをひもとかずとも予想できるものであった。

 しかし性エネルギー、すなわち精力とは「生力」なのだ。性欲の衰えはすなわち生への求心力の衰えにつながっている。死に向かっているのだ。死にたくない。もっと性エネルギーを、性欲を。ところでエロスの対語がタナトスなら、エロいの対語はタナトいとすべきだと思うが、どうか。

 さっそく俺は街へ出た。途中、本屋により、俺は何か猛烈な圧力――それは俺の存在にも関わるような――を脳にびしびしと感じ、なぜか本屋へと向い、さまざまの辞書をひろげて「一応呪文」「浄化の隕石」「拉致説」「surpass」「釈明会」「バカ食い」などの単語を調べた。調べ終わったからと言って何の感覚もない。なぜこんな行動をとったのかわからない。俺はわからないということだけがわかったしわからないことはわからないからわからないことをわかったしわかったし井上和香った(←とてもおもしろい)。

 俺は100円ショップに入った。世界中の100円硬貨の97%がこの店で消費されているという。おそらく残り3%のうち、1%は100円フェチのカネゴン、もう1%は百円玉食える?ヒャー喰えんというダジャレ、もう1%は内田百円によって消費されているに違いないと俺はにらんでいる。やぶにらみで。ぎろり。ロリ。

 まず文鎮を手にとった。ずっしりとした手頃な重さに嬉しくなってしまう。しかし手頃な軽さではない。俺は文鎮をもとの位置へ戻した。乱暴に置いたせいか棚がメコリと言って欠けた。どうも棚にとっては手頃な重さを超えていたらしい。私は棚の手頃な硬度のなさに同情してしまう。涙が出る。涙が今はこぼれるけどポケットにいっぱい虹をつめて…オー・レインボウ!雨(Rain)の弓矢(Bow)だからレインボウ。おお、なんという上手い表現だろう。弓のように孤を描いているからね虹は。だからレインボウ。こういうセンスのある連中、すなわち白人相手に竹やりを振り回したって、そりゃ勝てるはずはないね……と思っていると、東条英機の幽霊が苦々しげな表情をしているのに気づく。凄い形相で俺をにらんでいる。やぶにらみで。ぎろり。ショタ。

 次に俺はアイスを見た。いろいろでさまざまでおのおのなアイスがきらびやかなパッケージとともに並んでいた。冬場でも俺はアイスを食べる。特にクリーム型のものを。愛す・クリーム。あるいは、I Screem. (ここまで一気に自動筆記したが、ここでいったん切れる)

 さて、俺は次に食品コーナーで、ピーナツ・バターを見つけた。かなり濃い茶色に、ところどころ粒のナッツがまじっている。しかし、このフォルムはまるで……いやよそう。もし、この小説を読みながら、スカトロプレイを楽しんでいる人がいれば、失礼にあたるからだ。俺はうんこバターを放り投げて、沢がにを手に取った。沢がにはゴキブリホイホイの中に鎮座ましましましていた。ゴキブリと間違えて入ってしまったのだろう。かわいそうに。だが俺は同情しなかった。その沢がにというネーミングセンスに以前から何か違和感というか不気味ったらしいものを感じていたから。そもそも「蟹」という字じたい、よくわからないじゃあないか、どうだい、解る虫と書いて、カニ……いったい何をわかニっているんだと言いたくなるでしょう。どうです。そう思いませんか。まあ、漢字にごねだすときりがない。月の夜と書いて腋というのも俺らの脳髄を何メートルも突き出てしまった理解の余地をチラリとも(ヨチチラ)見せないじゃないですか、え。

 そうこうしている内にすごいものを見つけた。ささえ棒だ。小型のさすまたのようなものだ。わかりにくければ、パチンコだと思ってほしい。パチンコといってももちろん怪しい外国人の集金システムのほうじゃなく、あの、少年まんがでちっこいキャラ――主人公のことをアニキと慕っているタイプの――の武器として使われるような、パチンコである。つまり、これを、勃起不全の男が、股にはさみ、棒をささえるのだ。これを考えたやつはさぞ特許でおおもうけ、あとは喰って寝てぶくぶく肥えるだけでいい夢の酒と脂肪の日々を続けているに違いない。俺はさっそくこれを買い求め、まだ見ぬ彼の脂肪の増加を手伝った。

 ささえ棒……よく考えると、「棒ささえ」というべきなのかもしれないが……とにかく、ささえ棒は重宝した。立つのだ。実に立つ。その状態を立つというかどうかは個人の判断に任せるが、俺にとってはまさしく立っている。英雄ここに復活。かくして俺はキンゼイ一家の男として恥ずかしくない雄々しい姿を取り戻すことに成功したのだ。すべては100円ショップのおかげだ。俺は100円フェチのカネゴンが島流しになり、、百円玉食える?ヒャー喰えんが絶滅し、内田百円が下血してくたばることを祈り、100円ショップの明るい未来を無性に夢想し夢精した。
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