「あ、ありがとうございま……あ」
女の子がお礼をいいかけて止まる。なんだ。何か変なところがあっただろうか。
「――太郎さん?」
何故俺の名前を知っているのだ。
「おまえ太郎という名前なのか。随分と古臭い名前だのう」
何時の間にやら近くに来ていた神女が、かわいそうに思ってそうな感じで言う。
何を言うか。平均的な日本人の名前だろう。むしろ俺は誇りにしている。
しかし何故この子は俺の名前を――ってよく見ると同じ制服か。同じ学校の生徒となれば、今日有名になった俺を知っていても不思議ではないよな。
「早退したんじゃなかったんですか? 何でこんところに?」
そうか、ナンパとかしてる間にもう下校時間になったのか。どうでもいいけど何も進展無かったし早退した分損だったよちくしょう。
「うん、まあ色々あって。ええと、君の名前は?」
俺がそう言うと、女の子は驚いた顔をして俺を見た。
「同じクラスじゃないですか」
「マジで」
「席隣りじゃないですか」
「マジか」
「きょ、今日告白してきたじゃないですか」
「本当にすいませんでした」
よく見ると最初に告白した眼鏡っ子だった。
今朝の告白でもう終わってる恋だしどうしようもなかった。切ない。