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正体

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平日の昼間、寂しげな公園で冴えなそうな中年の男が一人でベンチに座っていた。
そこに若者が通りかかり声をかけた。
「隣座ってもいいですか」
「どうぞ」
若者は中年の男の隣に座り、しばらく男を眺めていた。やがて若者は男に声をかけた。
「あなたもこんな平日の真昼間からこんなところにいるということは仕事は
していないんですか」
「いや仕事はありますよ。しかしながら大変でね。私の部下は無能でね。つい
さぼってしまったんですよ」
その言葉に若者はうなずいた。
「そうですか。分かりますよ。仕事は大変です。私の場合上司が恐ろしいやつでね。
下手すると殺されかねない」
「いやしかし私の方が絶対大変ですよ。最近は私のことをよく知らんやつもいるから
腹が立ちます。働くのがいやになってきました」
「そんなあなたにいい話があるんですよ」
「何ですか」
「あなたの命を私にくれませんか」
中年の男は驚いた表情で
「なにいってるんですか」
と答えた。若者はあわてて
「冗談ですよ」
といった。
「そうですか。ですよね。冗談とはいえ本当に命をあげたい気分だ。最近
ろくなことがない」
「今の話本当ですか。私に命をくれるといいましたか」
「まあ…」
その言葉をきき若者はしめた表情でこういった。
「実はね私の正体は悪魔なんですよ。冗談とはいっても契約は契約。早速実行
させていただきます。文句は言わせませんよ」
すると中年の男は驚いた表情で
「私の正体は閻魔大王だ。私を見破れないとはとんでもない部下だな。お前
みたいなやつがいるから、私は大変なんだ」
と答えた。悪魔はあわてて
「冗談ですよ」
とごまかそうとしたがときすでに遅く閻魔大王によって悪魔は跡形もなく
消されてしまった。
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