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患者

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看護師が男の部屋へと入ってきた。この部屋は彼の診察室兼自室なのだ。
看護師が入ってきた瞬間本を読んでいた彼はすぐに反応した。
「患者か」
「はい」
「そうか。最近患者が来なかったからな。そろそろくると思っていた。いつも
来てる人か」
男が最後に患者を診察したのは3日前のことだった。
「そうです」
「彼には本当に手を焼いている。治る見込みがないからな。すぐに通してくれ」
患者はすぐに入ってきた。この患者の症状は誇大妄想だった。自分はとても
えらいと思っているらしい。数年前からずっとここに通い続けている。男は
内心変なやつだと思っていたが、医師の義務だと思い診察を続けてきた。
しかしこの患者は全く回復の傾向を見せようとしなかった。男は半ばあきらめていた。
しかし診察は続ける。それが医者の義務だからだ。男は本に書いてあった新しい
治療法を試してみた。だが無駄だった。やはり患者は全く回復の兆しを見せなかった。
男がもう返っていいですよというと患者は礼を言い部屋から帰っていった。
そしてつぶやいた
「全く変な患者だ。自分のことを精神科医だと思っているんだから。しかも
定期的に診察をしないと暴れだすから困る。さらにあいつのために特別な部屋を
作ってやった。本も私が読んでるやつをそろえてやった。まあ普段は本を読んで
おとなしいからいいが…。しかしあいつを診ていると本当に自分が精神科医なのか
疑いたくなってくるな」
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