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自信と実力差

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「それで・・・詳しいルールを教えろよ!」
「あせるなよ、今から教えるから・・・」
そして春によるルール説明が始まった。
「まずアンタたち三人が好きなイスに座る、そして前にあるロープのうち一本をこっちが切る。
 それを6回繰り返す。
イスの上にはそれぞれ1キロ・2キロ・3キロ。
重さが違う鉄アレイが左から順に並んでるから。」
春は淡々と話していたが明らかにこれではギャンブルではない。
「おい、俺たちが聞いているのは進行の話じゃない。
 勝ち負けについてのギャンブル的要素の話だ!」
カイムは少しイライラしてきている。
「いわれなくても話すよ。順番ってものがあるだろ。
 このギャンブルは、いわば心理戦。
 あたしはどのロープを切るか、アンタたちはどのロープを切られるのか、その読み合い。
 そっちには毎回2つのストッパーが渡されるから、好きなロープにストッパーをつけて守る。
 そして、あたしがストッパーがないロープを切れたらあたしの勝ち。
 もし、ストッパーのあるところだったらアンタたちの勝ち。」
カイムは疑問に思った。これではこっちが勝ち安すぎる・・・
(3分の2はストッパーで防げるのに防いだだけで勝ち?
 そんな都合のいい話はそうそうない。
 しかも、切る側と切られる側の交代はないみたいだし・・・都合がよすぎないか?)
さらに春は続ける。
「この勝ち負けは、6回やってうちの3回そっちが防げればそっちの勝ち。
 逆に4回当てれたらこっちの勝ち。」
カイムはさらにおかしいと感じる。
(そんなバカな!3分の1を6回中4回?そんなの普通に考えて無理だ!
 めったに起こることじゃない!イカサマなのか?)
するとモロクが問いただした。
「イカサマなんじゃないのか?そんな確率、そうそう起こるもんじゃない。」
「これは確率の問題じゃない。相手の心をどれだけ読めるかの心理戦だ!
 相手の表情から読み取れるものもあるし、
 鉄アレイの重さからして3キロのとこは当てられたくないとか、
 いくらでも考えるところはある。
 その経験の差をハンデとして差し出してやってるんだよ!
 なんならそっちの防がないといけない数増やそうか?」
カイムたちは何も言えずに立ち尽くしていた。
「それじゃあ、始めようか・・・・退学を欠けたギャンブルを!」
春の言葉に反応してカイムは口を開いた。
「立会人がいない・・・・
 これじゃあお前たちが俺たちのストッパーの選択箇所を仲間が教えることもできる。
 立会人を用意するべきだ!」
春は何のためらいもなく答えた。
「そうだな、いいだろう。
 じゃあお前たちが呼ぶんだ。早くしろ。」
あっさりと条件を飲んだことに対してカイムは焦った。
(そんなばかな、絶対にイカサマをすると思ったのに。なぜだ?
 それほど自信があるのか?なら揺さぶりをかける!
 今やつにプレッシャーをかけて心を揺らす。
 そして勝負のときに冷静に判断できないようにする!)
カイムはさらに提案した。
「なぁ、このギャンブルだと、俺たちは鉄アレイによって怪我をするが、
 お前たちは100%怪我をしない。だから俺たちが勝ったときには傷を負うべきだ!
 俺たちが勝ったら俺と付き合え!」
!!!????
「ちょっ、カイムさん。こんなときになに言ってるんですか?
 彼女作ること考えてる場合じゃないですよ!」
「モロク。いいからだまってろ。
 さぁ、この条件飲むのか?」
春は間をおかずに即答した。
「ああ、その条件飲もう。
 私がまけたらあんたと付き合ってもかまわない。」
(そんなばかな!将棋や囲碁なら100%実力で勝てるが、
 これは運!9割がた運の要素だ。
 そんな裏を引く可能性が大有りのギャンブルで負うのか?
 それほどのリスクを。尋常じゃない。
 少なくとも俺には無理だ・・・・)
そして立会人には咲とその友達、総勢6名を呼んだ。これでは武力によるイカサマ鎮圧にはならないが、少なくともこのギャンブルの肝ともいえる部分のストッパーの位置決定だけは公平にできそうだ。

そして、一回戦がスタートした!


カイムたちの座り位置は、


鉄アレイの重さ    1kg  2kg   3kg
座っている人     カイム  モロク  アスラン
ストッパーの有無    無    有     有


そして春は大きなはさみを持ってどのロープを切ろうかと選んでいる。
春はカイムの前で立ち止まり、話しかけてきた。
「カイム。お前のところは、ストッパーがないだろう?
 だから切ってやるよ、このロープを!」
バチン!
強くはさみを閉じる音がした。しかし、
ロープは切っていなかった。わざとロープを切らないでこちらの反応をうかがってきたのだ。しかし、それをされた側は反応してしまう。しかもほんとうにストッパーがないのだからなおさらだ。カイムはそれに反応して目をつむってしまった。
カイムは春のおちょくりに対していらだった。
「そんなことをしてなんになる!?
 さっさと切れよ!こちらが恐れる姿を見て楽しむとか、
 そんな変体趣味はやめろ!」
春はばかにしたように答える。
「お前、これが何のためにやってるのか本当に気づかないのか?
 そうやって驚く様子を見て、そこにストッパーが有るのか無いのか判断する。
 そんなの少し考えれば誰でも思いつく作戦じゃないの?」
(クソッ!)
カイムはまんまと春の罠にかかってしまった。こうなってはもうはずすわけが無い。必然的に当てられる。そして落下!カイムの頭上に鉄アレイ1㎏!
「いまの反応で確信した。カイム、お前のロープにストッパーはついてない。」
カイムがすぐさま答える。
「なぜ言い切れる?そうじゃない可能性もあるだろ。」
「私はこのギャンブルを何度もした。だからわかる、素人が行き着く思考回路が。
 まず、初回からどれほどの痛さが来るかわからないので、
 2・3㎏のとこは守らなければならない。
 さらにリーダーの位置に立ってるやつが始めにそんな役回り、
 貧乏くじを引かないと、周りのやつはついてこない。
 それにいかにも周りのふたりはダメそうだ。
 自分からあたるかも知れないところを志願するわけが無い。
 それに初回だ、当てられても仕方が無いとか考えてるんだろ。
 そして駄目押しの今の反応。
 もしストッパーがあるのならあそこまで体が縮こまることはまずない。
 それらを踏まえてです答えはひとつ。
 カイム。アンタのところにストッパーは無い!」
カイムは鼓動が聞こえてしまうかと思うぐらい脈拍があがった。

   バチン!

離し終えると同時にロープが切られた。
ゴチッ!
カイムの頭上に鉄アレイが落ちてきた。身体的な痛みは差ほどでもないがやはり痛い。そかし、それよりも致命傷を負ったのは心!カイムの思考を完全に読まれていた!さきほど春が言っていたことは、カイムたちの考えそのものであった。
(あいつ・・・本当に強い。
 やはりあれだけ勝利宣言をするだけあって、
 人の心を読むのは相当うまい。これから俺はどう戦っていけばいいんだ?
 勝ち目はあるのか?)
カイムはおびえる。相手の読みの強さにおびえる。
そして春が催促してくる。
「さぁ、2回戦をはじめよう。早くストッパーの位置を決めてくれよ。」
周りの者たちにもカイムの劣勢は感じ取られた。咲は顔が拒んでいるし、この異常な状況に咲の友達もおびえている。アスランとモロクはなおさらだ。しかし、このふたりはおびえている場合ではない。カイムを励まさなければならない。今度はこの立場に自分がなるかもしれないのだ。
「カイム殿!元気を出してください!カイム殿が頑張らないでどうするんですか?
 それに試合前は一回戦は負けてもかまわないといっていたではありませんか。」
「そうですよ。カイムさんの考えが当てられたのも、
 たまたまかもしれないじゃないですか。まだ、負けたとは決まってませんよ。」
カイムは力の無い声で返事をする。
「ああ・・・そうだな・・まだ、決まってはいないな。」
「そうだ、カイム殿。今度は私が当たるかもしれない役を引き受けましょう。
 自分で言うのもなんですが、私ならポーカーフェイスも得意ですぞ。」
カイムは考えた。普通ここはこんな単純に当てたれた人と違う人のなかで正義感の強いほうを選ぶと、一番怪しまれると思ったが。それは逆であるとカイムは考えた。
(だからこそ読まれない。
 そんな単純なものはさっき当てられた側としては選びにくい。
 だからこそ選ぶ!そうやって常識を覆していかないとこの勝負は勝てない。
 だからいくんだ。さらに常軌を逸したことを!)
「アスラン。」
「何ですか?カイム殿。」
「お前1kgのしたでストッパー無しで座ってくれ。」
驚いたモロクが反論する。
「それじゃあさっきと一緒で当てられるかもしれないじゃないですか。
 なんでそんな作戦にするんですか?」
「だからこそだ!あてらるかもしれないからそれは無いと思わせておいて、
 その無いはずのところをつく。それしかないんだ!」
モロクもしかたなく納得する。

そして決定!2回戦の座り位置!


鉄アレイの重さ    1kg  2kg  3kg
座っている人    アスラン  モロク  カイム
ストッパーの有無    無     有 有




カイムたちはストッパーをセットして席に着いた。



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