家に帰れば父さんが痛いほどに抱きしめてきてくれた。
暖かいぬくもり。
「ごめん。ごめんなさい」
丁寧すぎるほどの謝りかたには違和感を覚えても仕方が無かった。
だけど、これでやっと仕事を探す動機になったみたいで必死に職を探して見つけてくれたのは嬉しかった。
それでも家の財政は決して楽にはならなかったけど私はバイト、弟達は新聞配達と家族が始めて団結したようなそんな気がした。
燕尾には言っても足りないほどの恩を感じてしまった。
事が重大だったのでそのままチームは解散、燕尾の家に行ったのに夜逃げという最悪のパターンで私たちは自然消滅してしまったあの悔しさは今でも忘れていない。忘れていないほど悔しかった。
そして高校になり長かった髪を切り化粧も薄め。
きっちりと真面目っ子の街道をまっしぐら……というわけにもいかなかったが曲がりなりにもその道を歩んでいた。
「それでさ~」
見知った声が聞こえた。
振り返るとそこには燕尾がいた。
「燕尾? 燕尾~!」
「え? うわ! ちょっと!!」
有無を言わさずの手厚い抱擁。
「燕尾! 燕尾ぃ!」
「は、はいぃ!? キミ、誰!?」
おっと、しまった。私はもう昔の私ではなくなったのだった。
「え~とごほん。一目惚れじたので付き合ってください!」
我ながら恥ずかしいことをいったと思った。第一彼は私の顔など全然覚えていないのだ。だから答えは、NOだった。
だけど、これだけは言った。
――ありがとう、と
彼は意味が分からないといった困惑した顔で
「え? うん」
頷いてくれた。それでも私に返事をしてくれた彼が愛しかった。嬉しかった。
もう一度、私は抱きしめた。