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4.山菜

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4-1.

僕は山の急斜面を歩いた。

      否。

走った。
僕は山の急斜面を走った!

鉛のように重いその足を無理やりに動かして、
とても大きな肉棒を何度も踏みつけて、

ただひたすら頂上を目指した!!

何が僕を動かすのか、何が僕を、上へ上へと、押し上げるのか!
わからない!!わからないけど、走る!!走って、走って、まだ止まらない!

- -

4-2.

僕がお昼ご飯のキノコを食べようとしたらどこからともなくマヨネーズが飛んで来て高い木の上のほうにひっかかった。

      否。

なかった。
マヨネーズなんて飛んでこなかったしそもそもそんな便利なものはこの世界に存在しなかった。

僕の、僕の目的の前でマヨネーズを取ることが妨げになるというのなら、

いらない!

いらないんだマヨネーズなんていらない!!


ただひたすら上を目指す!!
なぜなら、山菜は頂上にあるから!!!さよならマヨネーズ!!
さよなら!!

- -
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4-3.

ウワァ!
崖だ!渓谷だ!

ワァォ!
あっちの端に橋があるぞ!

橋は遠い!
しかし、僕は知っている!こんなときは急がば回れだ!

つまり、急いで崖を飛び越えるより、時間はかかるけどあっちの端の橋まで行って安全な道を選んだ方が結果的には得をするのだ!
崖は5メートルで僕には越えられそうにない!さあ、急いであの橋まで

       「「 だ が 断 る !! 」」

僕は、一歩下がる。
崖から一歩、手前に下がる。助走はしない!

そして、おそろしいあの力やおそろしいあの力が、
僕の脚に、溢れ出て、 跳ぶ !!

ウワァ!
足元に小枝が落ちててうっかりバランスを崩したけどもう足は地面を離れた後だった!

ワァオ!
不思議なつむじ風が僕の背中を後押ししてくれた!

僕は、落ちる。
そう、落ちる。

離岸の、地面に、落ちる!

そして、そしてまた!走りだした!
なぜなら、山菜は頂上にあるのから!!!さよなら橋!!
さよなら!!

- -

4-4.

ガサッ!なんだ!何の音だ!なにかが、なにかが、いるッ!!

クマッ!

熊だッ!熊が、熊が!熊が、僕の前に現れたッ!!

バタッ!

死んだフリだ!死んだフリによって僕は、欺く!完璧にッ!
そう、誰も僕を生きているとは思わない!見てこの死んだような顔!ぐったり!ぐったりパラダイス!

       否!!

殴る!
僕はッ!熊を殴る!!

殴り倒すッ!!

熊は!
熊は立ち上がり、僕に向かう!

二本足で!!

「ははははははははは!!」

僕は笑う。

「アッハッハッハッハ!!!」

僕は笑う、熊の股間を凝視したまま、そして僕の肉棒が、

露出した!

奴の顔は表情を失い石像のように凍りつく、股間を隠しながら、

「わかった!わかったよ!!」

熊が喋った!

「わかった、認めるよ。お前のは大きい!それに比べて俺のはチンカスだ!俺の負けだよ!」

だけど僕は立ったまま一歩も動かないそして、奴の肉棒から目を離さない!!

「わかった、わかったから!」

熊が請う!

「お願いだから、もう、しまってくれ!!その、股間の、」

しまわない!!

ざざ。ざざざ。ざっざっざ。
凍りつく。奴の体が凍り付いて、動かない。
ざっざっざ。ざっざっざっざっざっざ。張り付いて離れない奴の手は股間を隠すために宙を浮いているッ!

僕は、僕は立ったまま、一歩も動かない、一歩も動ずに、



   「 しまわないッ!君が、絶望して、立ち直れなくなるまで!  
                        僕は、しまわない!!   」




ど ど
ど ど ど
ど ど ど ど ど
ど ど ど ど ど ど ど

ど ど ど ど ど  ど ど!!


風が。
風が、
風が、吹いた!

風は、股間を嘲笑うかのように、鳴くッ そしてっ!

熊をッ!吹き飛ばす!!
奴の精神力は絶望のあまり風を生み出した!その風がッ!

熊をッ!吹き飛ばす!!
だが!風は衰えない!まだ衰えない!僕の、生み出した風が、

僕を、押し上げる! !

頂上へと!
なぜなら、山菜は頂上にあるから!!!さよなら熊!!
さよなら!!

- -
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4-5.

走る、ただひたすら、走る。
頂上は見えない。

でも、ひたすら、走る!
足の裏の納豆が、ねばねば地面にこびりついて離れない!

それでも、走る!

否!!!

飛ぶ!

僕は、飛んでいる!!
肉棒の上を、飛翔しながら、頂上を目指していた!

僕の異常なまでの精神力が、風を!

風を起し、僕を飛ばす!!


何が。

何が僕を。

何が僕を動かすのか!?
僕の心を震わせ、僕の魂を揺さぶり、僕の脳を眠らせ、

僕を頂上へと。頂上へといざなうのか!?


愛?勇気?

違う!!

  じゃあ食欲?

違う!!


  山菜が僕を呼んでいる?プライドが僕を突き飛ばす?


えっと、うーん、・・


違う!!!


  僕を動かすもの、それは、

   惰性ッ!

惰性だッ!!

- -

4-6.あらゆることへの倦怠が僕をただ一つのベクトルへ直進させて止まらない。

僕の倦怠を邪魔しようと世界は障害物を送り込んでくる。
あと三分で僕が戻らないと偶然生きていた父が死んでしまうということを知らせる伝書が鳩によって届けられたり偶然森に埋められていた時限爆弾を複雑な手順で解除しなければ街が吹き飛んだり偶然珍しいきのこを見つけたと思ったらそれが悪い魔法使いにきのこにされたどこかの王様だったり偶然僕に絶望的な病気が見つかって近くの街ですぐに手術をしないと大変なことになったり偶然血のつながらない妹の存在を知ってドキドキしたりした。

どんなに洗濯死が生まれようともその洗濯死一つ一つを無視して進むのが僕の意思だとすればこれはただの倦怠じゃない。

                     倦怠と言う名の物語だ。

僕はその物語を作り上げながらただ惰性に従って上へ上へとのぼり続ける。どこか別の世界では仕合せな僕が明るい場所でご飯を食べていたりするけどそんな世界は大魔王によって滅亡することが確定だから僕は安心して僕の物語を作り続けることが出来る。その先に何が待っているかなんて関係が無いし僕はきのこご飯が大嫌いだからそんなこと問題ない。
しかし突然後ろから飛んできた肉棒に貫かれて僕の物語は終わってしまった。僕のより数倍大きい父の研ぎ澄まされた肉棒は始めから人を傷つけるための器官として存在しているのではないかと思われた。

彼は僕を殺しに来たのだ。

- to be continue-
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