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悪魔を孕んだ熟女(作:山田一人)

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 私はとある苦痛に悩まされていた。
 最初は軽い吐き気だけだった。しかしそれは徐々に成長していき、しだいに激しい痛みに変わっていった。
 私のお腹には悪魔が宿っているのだ。そいつは日々大きくなって、内側から私を苦しめる。
 忌々しい。実に忌々しい。
 この四十年の人生で、私は何度もこの悪魔と戦ってきた。やつらは隙を見つけると私の体の中に宿り、そこでとどまり続けるのだ。
 しかし、今回の悪魔は今までのものとは一味違った。今までのやつらは自分の力だけでなんとか対処することができたが、こいつは独力で何とかできる自信がない。
 ああ、また悪魔が私の中で暴れている。こんなものに屈してなるものか。出産の痛みに比べればこんなもの屁でもない。
 私は一人、戦いの場へと向かう。


 一日経った。
 昨日の戦いも、結局膠着状態のまま戦いが終わった。
 依然として痛みは直らない。悪魔は休むということを知らないのだろうか。
 今朝は小学生の娘に顔色が悪いと言われてしまった。顔に出るくらい今の私は弱っているらしい。でも子供に心配をかけてはいけない。これは私の戦いなのだから。
 悪魔が挑発するように私の腹部を刺激する。上等だ、挑発に乗ってあげるとしよう。
 私は戦いの場に向かうと、渾身の力を腹部にいれた。


 一日経った。
 まだ決着はつかない。もし私が何らかの仕事をしていたら、間違いなく支障をきたしていたに違いない。それほど悪魔の攻撃は凶悪になってきていた。
 前日を大幅に上回る苦痛。悪魔は日に日に成長し、私の腹部で大きくなっていく。専業主婦でよかった。自宅というホームグラウンドで戦うことができるのだから。
 今日こそは、今日こそは決着をつけたい。
 昨日の夜は夫にまで心配されたのだ。これ以上家族に迷惑はかけられない。
 戦いの場へと向かう。これでもかというほどの力で悪魔の攻撃に抗う。消え去れ……消え去れ!
 しかし奮闘もむなしく、決着がつかないまま娘が帰宅する時間になってしまった。
 こうなったら最後の手段を使うしかない。なるべく自分の力でなんとかしたかったがそんなこといっている余裕はない。
 悪魔め、お前は知らないかもしれないけど、今の世の中にはあらゆる武器があるんだ。お前を倒すための武器だって、たくさんある。
 私は戸棚から錠剤を取り出すと、水と一緒に飲み込んだ。薬物投与でお前に止めをさしてやる。


 翌朝。薬の効果はさっそく現れた。
 私は起床してすぐに戦いの場へと向かった。最終決戦だ。
 悪魔は弱っている。倒すのは今しかない。私の体から早く消え去れ!
 力をこめる……こめる……こめる……!
 悪魔は抵抗を続ける。しかし昨日までの力強さはない。私は力を緩めることなく悪魔を追い詰める。あと少し、あと少し……!

 脱力感。
 ぽちゃんっ、という水の跳ねる音。
 腹部の圧迫されていた感覚が無くなる。
 勝った! 私は勝ったんだ!
 長きにわたる戦いの末、私はたまりにたまった老廃物という悪魔を己の体外に出すことに成功した。



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「悪魔を孕んだ熟女」採点・寸評
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1.文章力
 60点

2.発想力
 20点

3. 推薦度
 30点

4.寸評
 ある意味、ありふれている作品です。
 まあ、確かに"アレ"は時に悪魔のような存在ですが……オチは数行で読め、「ああ」と、この作品への関心を急速に失わせました(ネタが読めても最後まで面白く読める作品もあるのですが)。
 率直に申し上げて、これはアイデアがつまらないです。だから惹かれなかったのだと思います。

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1.文章力
 80点

2.発想力
 80点

3. 推薦度
 80点

4.寸評
 非常に面白い作品でした。悪魔の面白い例え方に加え、テンポの良い進み方、それにキャラクターが分かりやすくて良かったです。
 多分この作品、このテーマだとこれが限界の点数だと思います。なので作者様には胸を張って頂きたいです。
 (賞向きの作品ではないが面白い、そんな感じです)

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1.文章力 90点
2.発想力 30点
3.推薦度 50点
4.寸評
 これは同作者様の「怪物を孕んだ少女」のパロディのような位置付けですかね。遊び心があって非常にいいと思います。
 オチは非常に簡単に読めるのですが、文章や言い回しが楽しくて最後まで難なく読めました。

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1.文章力 50点
2.発想力 60点
3.推薦度 35点
4.寸評

 はっきりと言えば、オチがとても簡単に読めてしまうことでつまらなくなってしまった作品。
 こういった登場人物の行動が最大の謎であり、オチであると言っているような作品では、読んでいる人間がそのオチを予想しながら読むことを想定して話を作らなければならない。読者にオチがバレてしまった瞬間から、残りの話はただの消化試合になってしまうからだ。
 読者の予想をはるかに超えるようなオチを用意してみたり、ミスリードを誘うように囮のオチを用意して誘導してみたり、二段オチにしてみたりと、オチを隠すための工夫の方法は様々だ。もちろん、オチへのヒントを小出しにするなどという基本も重要だ。
 しかし、この話にはそういった工夫が全く見受けられなかった。あまりにも素直にオチに向かいすぎてしまっていて、それなりに察しのいい人間なら、最初の段落でもオチに気づいてしまうのではないだろうか。
 文章は読みやすいし、話としてはまとまっていると思う。しかし、オチへのヒントが前に出すぎてしまっていたのが残念。最後までオチをバラさずに引っ張れていたなら、確実にもっと面白くなっていただろう。

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1.文章力 40
2.発想力 30
3. 推薦度 20
4.寸評
 内容に笑いが起きなかったのと、オチが予想通りというか、小さすぎて今一だった。
 更に何かが続いていれば、と思う。

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各平均点
1.文章力 64点

2.発想力 44点

3. 推薦度 43点

合計平均点 151点
140, 139

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