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崖の下のゆき(作:夢見る飛蝗)

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幽霊と呼ばれる存在を、真正面から認める人間などいない。
仮にいたとしても、そりゃあ頭の愉快な連中だけだろう。
どんな物事にも例外は付き纏うって話。
自分の頭はそこまで豊かじゃないので、幽霊なんざ信じていなかった。
だから自分の前に、自称幽霊だと言い張る少女が現れたときも、ニッコリと笑って頭の具合を哀れんだりした。
だが自称幽霊はそんな応対にも慣れているのか、はたまた生来のものかは知らないが明るく朗らかに言うのだ。
自分は幽霊です、と。
俺はなんだか本格的に可哀想になって、視線を外しながら距離を置いた。
すると自称幽霊は何を勘違いしたか、畏まって自己紹介なんぞを始めやがった。
咄嗟のことだったので、耳を塞ぐのが間に合わなかった。
片平ゆき・享年15歳・死因は崖からの転落死。
覚えちゃったよ。
俺は仕方なく、相手をしてやった。
季節は夏。
蝉声の狂い咲く公園の直中だったか。
背中に流れる汗の不快さと、自称幽霊が醸し出す不思議空間に吐き気すら催していたっけ。
彼女____ゆきの目的は、ハッキリとしていた。
『わたしの遺体を探してください!』
なんつーか、お前がイタイって話。
だが俺は快く了承し、ゆきにその場で待っている旨を言い含めると、迷い無く家路についた。
至極、自然かつ常識的な対応であったと自負する。
だがゆきは俺の考えなど見透かしていたのだろう、家までストーキングしてきやがった。
『住家が割られちゃ逃げられないっすよね』
その通り。
俺は110番通報した。変質者がいるんです、ええ家の前に!
だがそんな努力虚しく、駆け付けてくれたお巡りさんは俺を大層哀れみながら帰っていった。
なに言ってるんですかお巡りさん!ほら目の前にいるでしょ!?その色白女ですって!え?誰もいない?
あんたどこに目玉つけてんだ!あ、すんません。
独りよがりな切実さは時として、喜劇のエッセンスに成り得る。
『遺体、見つけて?』
ゆきに迫られる。
憑かれた、と確信。
およそ聞き知るすべての知識を総動員し、成仏させるにゃ未練を断つに限ると登山仕度を始めた。
生前ロンリーウルフだったゆきには友達と呼べる存在は皆無で、転落した日も一人ピクニックだったそうな。
ちょいと涙腺が緩む話だ。
家族は一人ピクニックをしてた事知ってるか、と聞くと、極めて明るく親に愛されていない過去を語られた。
山道を登る足に、ちょっとだけ力が入った。
ゆきが転落した崖までは、すぐに辿り着いた。
問題は、どう降りるか。
覗き込めば足が竦む。

崖は見た目緩い角度だったが、高さが尋常じゃない。
命綱無しでは二の足を踏む。

四苦八苦していると風に背中を押された形で、敢え無く転落。
信じられない浮遊間と本物のスリルを味わってから、激痛に呻き声を上げた。
その、すぐ隣りに、土塗れのゆきが転がっていて、笑えた。
声を掛けたが反応はない。
死体だから当然か。

さあ、どうしようかと迷っていると、土塗れのゆきが笑って手を伸ばしてきた。
幻覚を疑い正気を疑い、でもゆきだけは疑う気になれなかった。
仕方がないので、痛む体に鞭打って死体を抱える。
右手に感覚はなかったが、体力の続く限り歩いて脱出を試みた。

結果として、努力は報われた。
勿論ゆきは死体だったしその後、自称幽霊の姿は見ない。
彼女と交した言葉の殆どは色褪せて、ただ情景だけが脳裏に刻み付いている。
真夏の蜃気楼みたいな、輪郭の判然としない思い出。
涙もなければ歓喜もまた存在しない、ひとつの淡々とした物語り。
それでも夏が来るたび、思い起こしては口ずさむのだ。


彼女の名前を、冥福を祈りつつ。



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「崖の下のゆき」採点・寸評
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1.文章力
 70点

2.発想力
 70点

3. 推薦度
 60点

4.寸評
 物語に落ち着きがない印象です。
 テンポはいいんですが、もっと場面場面を効果的に魅せて欲しかったです。道中の運びが上手ければ、結びももっと綺麗に決まったのではないかと思うと惜しい。
 全力ダッシュから急停止――そんな話でした。


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1.文章力
 40点

2.発想力
 40点

3. 推薦度
 30点

4.寸評
 敢えて辛口に言いますが「どうでもいい話」です。面白くもなければひねりもない。かつ文章は肝心の序盤に段落分けがなく読み辛い。
 作者様の一人よがりの作品という印象が強いです。物語とはただ話としてつながっていればいいというものではないのです、時間を割いて読ませる以上読ませるに足るものである義務があります。
 もっとがんばりましょう。

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1.文章力 50点
2.発想力 40点
3.推薦度 40点
4.寸評
 文の粗さが、少し気になりますが普通に読める程度ではあります。――(ダッシュ)が__(アンダーバー)になっているのは、結構気になってしまいますが。
 それと、主人公の背景描写が皆無であることや、ゆきに対する心情変化の描写の少なさが感情移入を妨げていると思われます。唐突に感動を呼ぶことはできません。
 テーマは読み取れるだけにもう少し練って欲しかった作品であります。

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1.文章力 70点
2.発想力 40点
3.推薦度 65点
4.寸評

 お決まりのパターンと言わざるを得ない幽霊もの。
 話の流れ、幽霊であるゆきの目的、終わり方、どれも独創性があるとはとても言えない内容と展開で、発想力は低めにつけさせてもらった。
 さらに作中を通して、ヒロイン的な役どころであるはずのゆきがほとんど喋らなかったり、外見描写がほとんどされていなかったり、ということも気になった。
 主人公など年齢すら分からず、状況描写が全編を通して足りていないなあと感じてしまう。
 物語自体は、それこそテンプレートをなぞるような内容で完成しているように感じるのだが、ありふれている感は否めない。
 どこか、その物語の売りになるような部分を作ってみたり、登場人物に魅力を持たせるような描写を試みたりしてはどうか。

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1.文章力 30
2.発想力 20
3. 推薦度 20
4.寸評
 超展開でもいい。
 静か過ぎる故に、何か大げさなオチが欲しかった。

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1.文章力 (80)

2.発想力 (60)

3. 推薦度 (70)

4.寸評 
崖の上のポニョみたいに言うな。
典型的ボーイミーツガール、甘ったるい綿菓子のような短編です。文章力は高く、洒落の効いた言い回しが素敵です。しかし内容自体は当たり障り無く、感動も、驚きも薄いです。
ただただ、キャラクター同士の豊かな掛け合いを楽しむ感じでしょうか。しっかりと完結している点は非常に評価できます。内容に対して文章の長さが丁度良く、読後感も非常に爽やかです。

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各平均点
1.文章力 52点

2.発想力 42点

3. 推薦度 43点

合計平均点 137点
31, 30

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