ある日 父のかわりにクマが帰ってくる。
クマは自分の事を父だと言い張る。
母は困惑しながらもクマに帰ってくれと頼む。
クマは「ここが私の家なのに・・・」
と言ってひどく哀しそうな眼で母と僕を見つめる。
母はその目に堪えきれなくなったのか結局クマを家に入れる。
深夜、両親の寝室から母の喘ぎ声が聞こえる。
そして獣のおぞましいうなり声も。
僕は耳を両手で押さえ込んで眠りにつく。
朝になるとクマはいなくなっていた。
「父さんならもう会社に行ったわよ」
そう言う母の顔はいつもより活気に満ちていきいきとしていた。
その日 父は人の姿で帰ってくる。
母は少々、残念そうに「おかえりなさい」と言って父を出迎える。