1話-平行世界(パラレル)

「ふぅ。私の仕事は終わりか」
「そうですね」

++
此処は何もかもが普通のようで
そうではなかった
「何なんだいったい!?」
俺はもう何がなんだか判らない
････ッ････
「何だ････?」
違和感が走った。
背筋が寒くなる
「クソッ!」
前に見えるは市街地
街灯は点いていない。
「あそこなら･･･」
必死に走った。
不意に後ろを見た
そこに病院の建物はなかった。
++

**
彼は気付くかな
私は考えた、
会議室にいるのはある男から呼ばれたからだ。
彼の身を案ずるならば
すべてを教えてやればよかったのだ。
しかしそれでいいものかと。
彼は彼が望んでやってきたのだろう。
ならば
責任は彼にあるのかもしれない
また･･･
あるいは･･･
**

++
何だっていうんだ･･･
市街地なんてものじゃなかった
目の前に広がるものは･･･
･･･*･･･
「ぐぅぁ･･･」
頭に鈍痛
なにか、
見える
=
=
はっ!!
「此処は･･･」
俺がいた場所。
いたはずの場所だった。

「"天神"」

なんの悪戯だろう
おれは此処をよく知っている
見た目は何も変わらない
土地勘はある
が、
「何か･･･何か引っかかる･･･」
何なのだろうか。
それだけが気がかりだった。
++

**
ふと、私を探していたのか
彼女は会議室にやってきた。
「どうです?彼は、」
調子よく聞いてくる
「まぁまぁ、だろう。
　場所は把握したようだ」
彼女は少し考えてから
「なら、"判る"のも近いかもですね」
私は軽く頷いた
「ああ。そうだな。"判った"後は
　彼次第ではあるが。
　彼は心配する必要は無いのかもな」
彼女は不思議そうだった
「なぜです?」
私はふふっと笑って
「"じきにわかるだろう"」
これはもう口癖になりそうだ。
**

+
ッ!?
そうか
これだ！
「地面だ!」
ようやく異変に気付いた
コンクリートではない
ただの岩肌のようだ
「なんなんだ。これは?」
ふと、何かの気配を感じる
顔を上げると
「やぁ。どうかしたのか?」
そこには
同い年くらいであろう少年が立っていた
髪はツンツン
金色に染め上げられている。
目つきがいいかんじに怖い。
「どうしたもこうしたもない。
　此処が何なのかが判らないんだ」
少年は首をひねってから
「並行世界(パラレル）の人なのかな･･･?」
と
「ぱられる？」
思わず間の抜けた声で聞き返した
「そう。並行世界(パラレル）
　此処とは違う
　人は地面を歩き
　"ガス"なんてものを使って火をおこす」
俺は絶句した。
まさかまさかと思っていた。
日ごろから夢見てた。
妄想でしかなかったはずだった。
さっきまでは。
「まさか･･･とは思っていたが
　やっぱりか･･･。
　ここは
　"魔法の国"のようだと認識してもいいのか？」
少年は
「まぁー。そんなもんかな。」
と答えた。
思い当たる節は
唯一つ。
**

++
呼び出しておいたにもかかわらず
そいつは遅れてやってきた
相変わらず身長と態度はでかい奴だ。
「石川」
名をつかうのは久方ぶりだ
彼女はもういない。
私一人でこの場を切り抜けろというのか。
苦手なんだがな、この人は。
「はい。何でしょうか?
　"裏方"さん
　あなたが来たということは
　何か問題でも？
　特に問題は無いはずですが･･･」
"裏方"というのは
私のとある上司に対する
ある種の皮肉とでもいっておこうか。
黒スーツに全身を隠したそいつは
「ふん。"特に問題はない"か。
　笑わせるな!
　此処最近
　"向こう"からの来客
　何人か出しただろう?」
と。
なんだ。そのことか。予想どうりではあったが。
「彼らは望んでやってきてるのです。
　たまには"夢"を見させてやりましょうかと」
「"夢"か。これはまた面白いな。
　それはさぞかし最高の"悪夢（ナイトメア）"だろうよ」
皮肉なのかそれとも･･･
「何か･･･企みでも？」
彼はけたけたと笑って
「企みなんていうものじゃないさ。
　ただのお遊びだ
　"向こう"からすれば
　お遊びではないかも。だがな」
この人は････
「お前は自分の仕事の立場を考えろ。
　さもなくば"向こう"のやつらと
　同じ目になるぞ」
この場は合わしておくしかなさそうだ
「そうですね。検討してみますよ」
「そうするといい」
"裏方"。
何をするつもりなんだ･･･?
**

++
場所は変わって公園のベンチ
今はもうすっかり日が暮れてしまっている
「なるほど、君は"向こう"から来たのか
　興味深いなぁー」
軽々しく話されてるもんだ。
こいつからはいろいろと
情報を聞くことができた。
此処は並行世界（パラレル）で
俺がいた場所は此処から見れば"向こう"と呼ばれてる
此処では魔法が常用で
それこそがすべてなのだそうだ
"向こう"からの来客は
たまに訪れるらしい
こいつの名は･･･

「俺は鑑真（かがみまこと）
　"がんじん"っていったらぶっころすぞ?
　はっはっはぁ!」
なんていってた
なんかお寒いギャグじゃないだろうな。
さて、
今夜はこいつの家で
何とかしてくれそうだ･･･
さて。問題について考えるのは
夜でも間に合いそうかな。
今日は兎に角疲れていたんだ。
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