6話-別世界
もう、いったいいくつ世界はあるんだ?
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「んで、思い当たる節とかないか?」
鑑と唯可に聞いた、
「っていっても、"向こう"をしらんからなぁ。
なぁ、唯可?」
そうか・・・
それもそうだな。
「私(わたくし)としては、多少知識はあります」
心強い。
「石川にも聞いておきましょう」
頼りにしてはないがまかせたぞ、石川。
「あ!」
鑑が叫んだ。
「あそこはそうなんじゃないか?
地下街の"別世界(アナザーワールド)"
あそこはあってもらっちゃ困るぞ!」
また、世界・・・
どれだけあるんだよ。
「とはいいましても。世界ではないのです。
世界のような規模のものであるので
"別世界"と呼ばれているだけです」
ほぉ、興味があるな。
二重の意味において。
「いまからいける?ってか何処?」
「比較的近い場所です。直線距離において2キロほど」
近いんだろうか。2㎞なんかわからないぞ。
「移動が電車で3駅ほどです」
いく距離にしては近いってことか。
「ま、考えてもグダグダ御託並べるよりも、
とっとといちまおうぜっ!」
鑑はいく気満々だ
が、
「移動賃。どうするんだ?特に俺」
この問題は忘れちゃならん、
無一文だ。
「心配要りません」
唯可のおごり?
「いえ。石川につけときます」
・・・
うっわ。鬼だ・・・
新たな一面。
というかこの人ほんとに地のキャラじゃなくて
演技とかじゃないのか?
「ご冗談を。」
全くもって
怪しい・・・
俺らはとぼとぼと駅へと歩き出した。
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デスクワーク・・・唯可。手伝ってくれ。
かむばーっく・・・
「ちったぁ進めたらどうかね?
さっきから何行・・・いや。何文字かけたかね?」
あぁ、うざいのがきたな。
ざっと5文字だ。どうよ。
「私のペースでの作業に何か不服でもあるのか?」
まぁ、あるんだろう。
「それはな、後がつっかえているのだよ。
何も期限ぎりぎりにだす規則(きまり)はないだろう?」
そうだな。全くだ。
「だが。期限より早めにだす規則(きまり)もないな」
相手はかおを歪めると
「冗談言ってる場合ではないだろうに。
とっとと終わらしたまえよ」
見た目こそ紳士なこいつは"裏方"より上に位置している。
その癖なにやら私に関わっているときは
「その口調、気に入った。そのままでかまわんよ。」
と私の皮肉満載の口調に適応したりと
よく判らない。
と、
考え込んでいるところに
「まぁ、"石川"よ。アドバイスだ」
いらん。どうせ計画的にしてみたらどうだ?とか言うのだろう。
「まぁ、聞け」
するとそいつ・・・"荒神(あらがみ)"は
耳元まで近づいてから
「"霧徒"といったか。彼の観察は隠密にやることですぞ。
それに。唯可を向かわせたならば変装ぐらいは・・・。
彼等は"別世界"へと向かっておるようだ。
あそこには"待ち構えし者"がおる。
いってやれ、ここは私が何とかする」
まさか。
「上のやつ等の企み・・・ってことですか?」
ふふんっと"荒神"は笑って
「スパイぐらい用意しといた方が良かっただろう?」
と。
まったく。どいつもこいつも。
考えすぎだっての。
全く。
俺は身支度を整えて
駅のホームへと向かった。
彼の言うことは。罠で無ければいいのだが。
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おや、予想外の動きですね。
勘付かれましたかな?
そんなはずはないだろうに。何弱気になってんだ。
まま、お互い落ち着いて。
まだ様子を見守りましょう・・・
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「ふぁ・・・・ぁ・・・・」
ねむい。ねむい。
駅についたはいいが電車まで15分。
切符を買ってホームの椅子へと座り込んだ。
こんなに時間が空くなんて、
なんという計画性の無さだ。
まぁ、時間ができた。
今のうちに聞いておこう。
「唯可」
彼女はすばやく反応した。
訓練でもされているのだろう。
「はい。何でしょうか?」
心配しても始まらないのだが。
「"別世界"には危険要素はないんだろうな?」
彼女は表情を曇らせ、
「無いとは言い切れませんが。
殆どないでしょう。
それに、優秀な護衛もいますので」
護衛?はてさて?どこに?
「私(わたくし)」
そりゃ、アニメのように目が点になっていただろうな。俺。
「その目はなんですかっ!
護衛に来てるのですからね!?」
うぅむ。たしかにそうだが。
たしか朝「お役に立ててませんが」
とか言ってなかったか・・・?
「気のせいです」
あらそうですか。そりゃ失礼しました。
「気のせいです。」
2回も言わなくていいですよ。
よくわかりましたよ。
一応対策を考えておけ、と。
「酷い・・・
これじゃあんまりです・・・」
作戦には無くてはならない。
唯可・・・泣かないでくれ・・・
「うそなきってしってます?」
大笑いしてやがる。
なんて根性してんだ。
鬼か。鬼畜外道。
極悪非道だな。
「褒め言葉として取っておきますよ」
やばい、この人真剣に怖い。
間が悪くなって鑑を見てみると
「ぐぁー。すぴー」
アニメみたいな寝息たてて寝てた。
なんていうかな
「緊張感なんていらないのか・・・」
「それはそうですよ、行き慣れてますから」
そういうものか。
ショッピングモールかなんかか?
「そういうものです」
さいですか。
長話だったようで
待ちに待った電車の到着だ。
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「クソッ!」
渋滞にはまった。
"力"があるとはいっても一部にしか
"飛ぶ"ことはできない。
"力"のジャンルが在るゆえだ。
「このままじゃ10:15分には間に合わないな・・・」
水晶が無ければ
"心境観察(マインドウォッチ)"も使えない。
それに、
あの水晶はあの部屋のみ作動する。
持ってきても意味は無い。
「唯可。無事でいてくれ、
彼を守ってやってくれ!」
いやな胸騒ぎだけが
心に残っているのだった。
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「鑑、おきろー」
寝てる。
「かーがーみー」
寝てる。まだ寝るかこいつは
こうなったら
「鑑真(がんじん)」
ぼそっといってみた。
「だあああああれええええええがああああだああああああああ!」
おきた、すごいな。がんじん。
「こらぁ!誰が過去の偉人だっ!
俺は今の偶然の産物の偉人だッ!」
いや。意味わからないし。偉人じゃないし。
「だああああああああああああああああああああああああ!」
五月蝿いぞ。近所迷惑。
「ううぅー」
凹んでる。
「ほら。電車乗るぞ~」
「おうっ!」
立ち直りは早いのな。
「いきましょう。」
唯可は仕切るのになれていたようだ。
っていうか。コントか今の。
3人はそろって前から3番目の車両へと乗り込んだ。
3両目前のほうの席が4つ空いていた
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「3両目です。」
「了解。」
久々の任務だってのに仲間(パートナー)が
女じゃねーのかよ。ついてねぇー
「黙って働け。」
へいへい。
おれは4両目から3両目に移動。
準備しておいた。
「まだ、観察だけだ。」
あいよ。
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電車がついた。
2人は息を呑んでいた。
「ありえない。こんなはずは。」
そこには見たこともない光景が広がっていた。
赤に染められた町並み
赤に映える青の色
青なのはただ、境界線。
「これは・・・」
唯可は戸惑っている。
俺が思いついたことであっているのだろうか
「此処は誰かに乗っ取られ、
俺達を待ち受けて罠張ってたってことでいいのかな?」
「そうみたいだな」
鑑が答えた。
「これは指定された人間だけを入れる
"封魔結界(オンリーフィールド)"
境界線。青で見えてるか?」
見えている、そう答えると。
「そうか。お前はそうなんだな。」
鑑には青じゃないらしい、
「青は進め、赤は止まれ、黄色は気をつけて進め」
鑑が補足する。
「おれには赤だ。進めない。入れないんだ。」
すると唯可は
「私には黄色です。多分、石川でも黄色でしょう」
なぜだ?
「黄色の円に不思議な模様があります。
普通の"封魔結界"ならばないものです。
ならば、これは個人でなく団体。
つまり、私達組織を指しているのでしょう」
なるほど、
俺の青は確かに青だけだ、
青以外の模様は無い。
「真の"別世界"へようこそ」
俺達ではない誰かの声が聞こえた。気がした。
これが、戦いの幕開けとなった。
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