いつものように、家の少し手前の場所で遥子に話しかけられる。
前回は、石原達に相談して失敗したからな…。
今回は、遥子に相談を持ちかけることにしよう。
「先にあがって部屋で待っててくれ。俺は飲み物持っていくから」
「うん」
台所に入り、冷蔵庫を漁る。
お茶とオレンジジュースがあるが、どっちがいいかな。
遥子は、部屋に入るとベッドに腰をかけた。
ふと足元を見ると、ベッドの下から少し顔を出した、雑誌が目に入った。
「幼馴染とは言え、女の子を部屋に入れるんだから、もっとちゃんとしたとこに隠そうよ…」
ちょっぴり火照った顔に左手を当てて、数秒間その雑誌を見つめていた。
「…どんなのかな」
若干躊躇しながらも、そぉっと本を手にとってみる。
「少しだけ…少しだけ…」
ぴらり。
ページをめくってみる。
ガチャリ。
ドアノブが回転したと思うと、裕次が部屋に入ってきた。
「遥子。お茶持ってきたぞー」
「!!」
突然のことに驚き、身体がビクッとする。
慌てた遥子は、咄嗟に本をおしりの下に隠した。
「…どうした?何かちょっと息切れてないか?」
「え?!そ、そんなことないさぁ!!」
「そうか?まぁいいや。ベッドに座ってないで、こっち座れよ」
「お、おう」
ど、どうしよう。
いきなりのことで、何の考えもなしにおしりの下に敷いちゃったけど、
ここから移動したら本があるのバレちゃう…。
「あ…、ベッドに座って話すのはダメかな?」
「何で?」
「実は部屋に入る時に足挫いちゃって…」
よし!我ながらナイス言い訳。
これなら優しい裕次くんは、無理にベッドから移動しろとは言わないはず!
「ああ、だからさっき息切れてたのか。大丈夫か?」
「え」
裕次は、机から離れると私の足を見に来てくれた。
やっぱり裕次は優しかった。
でも、この状況は一般的に言うとピンチってやつだ。
…どうしよう。
「うーん。特に腫れてはいないみたいだな。家まで帰れるか?」
「それくらい大丈夫。家隣だよ?」
裕次は思った。
遥子はこう言うが、女の子が怪我してるのに一人で帰らせるのも男としてどうだろうか、と。
――…ん?
おかしいぞ。
俺は今、遥子の膝より下くらいの高さに目線がある。
そして、何故かベッドのシーツが少しめくれていて、
ベッドの下を見渡せるのだが、あるものがない。
――そう、“エロ本”だ。
これはどういうことか?
――そう、“誰かが俺のエロ本を発見した”ということだ。
まずい。非常にまずいぞ。
もし発見したのが遥子だったとしたら?
俺に幻滅するに違いない。
そうしたらどうなる?
今まで幼馴染だった関係が、ただのお隣さんになるのではないか?
そうでなくても、これまでの関係とは一遍した、よそよそしいものになるのではないか?
それはあまりに悲しすぎる…。
遥子が発見したのでなければいいのだが…。
「あのさ、ここ入ってから部屋を漁ったりしてないよな?」
「…するわけないじゃん」
よし、昔からの幼馴染だ。信用しよう。
遥子は白だな。
遥子は焦っていた。
もしかして裕次に私が本を見てたのがバレているのではないか、と。
だって部屋を漁ったかどうかの確認をするってことは、明らかに怪しんでるってことじゃない?
これ絶対バレてるよ…。
素直に『これ、落ちてましたよ』っていった方がいいのかな…。
それともこのままバレてると分かってても知らないフリをし続ける?
そんなことしたら嫌われるかもしんないし…。
やっぱり思い切って言うことにしよう!
…でも、裕次がショックでタイムリープしちゃったらどうしよう?
やっぱりいわない方が…。
――――…?
裕次がタイムリープ出来るわけない。
なんで私は、裕次がタイムリープ出来ると思ったの?