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第三章 編纂編

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 ライトノベル投稿死南

 第三章 編纂編

 さて、小説の書き方には「こうしなければならない」という決まりはあってないよ
うなものです。プロットをほぼ完成品の小説と変わらない密度で書いてから、もはや
書き写すだけの方もおり、人物の相関図――名前と性格・身の上のデータに、他の人物
達との間に矢印をひっぱって好き・嫌い・友人・ライバルなどと表わすあれ――(*1)
だけを元にさっと本編を書いてしまう作家、あるいは最初の一行をきっかけに、あたか
も一度火が入り動き出したピストンが機械的に吸気、圧縮、爆発、排気を行いつづけ
横から誰かがおい止まれとエンジンを切るか、オイルを与えるのを忘れ鉄ごと溶けさ
せてしまうまで止まらないような人もまた存在するのです。
アルファベットをAから覚える決まりはないように(*2)、覚えやすい字から取り掛か
ればよいのです。ここでは、表現したいシーンだけを別々に完成させてページを埋め
ていくのが容易でしょう。

 誰しも食べ物で好き嫌いの一つや二つはあるものです。野菜炒めに入っているピー
マンだけがどうしても食べられない、という具合ですね。この場合、食べようにも体
と舌が全力で拒絶するものを食べろと強制された場合の子供がとる行動は、ピーマン
だけを避けて他の野菜を食べ、最後に大量のピーマンと対峙することです。小説のい
いところ書きも、この偉大な先駆者と同じ轍を踏むこととなるのです。適度に口をご
まかせる他の野菜といっしょに口に放り込んでいれば少しは楽だったのが、わざわざ
苦いものだけ選り抜いて他を一掃してしまったがために、甘いキャベツの銃士隊や、
水っぽいもやしの石弓隊、熱を加えられ甘くなったニンジンの寝返り伏兵の力を借り
て口の中で苦味という敵をやっつけることができたのに、あなたはコップ一杯の水だ
けで恐るべきピーマンを独力で片づけなければならないハメに陥ります。全部食べ終
えるまで昼休みにならない、懐かしき小学校時代の再来です(*3)。
「どうすんだこれ、思ったより面倒だぞ」
 3度目ともなると、あなたの腕組もだいぶハクがついてきます。思うままにメモ帳
に書き連ねた戦闘、あるいは仲間とのいさかい、愛の語らいなどを、今度は自然な流
れで無理なくつなげていく必要が発生します。ここからは根競べです。ダーツの的の
ど真ん中に矢が当るまで、束で矢を投げつけるようなものと思ってくださるとよいで
しょう。いつかは終わりがきます。理想としては、次のシーンまでのつなぎがまるで
平坦な道を歩いていたのに、気がつけば地上80メートルの位置の高台まで登ってい
た、くらいのまったく無理がないナチュラルさがよいでしょう。ここまで丁寧にやっ
ておいて「場面転換が急だ」などと抜かす輩がいたらその人は風が吹いただけで心臓
が止まるほどに虚弱な方でありますから、無視してかまいません。極端な意見にあわ
せれば大多数を裏切る形になるだけなのです。

*1 矢印が引いてあるのは結構なのだが、あれはどこから見るのが正解なのだろうね?

*2 「Sの一つ前は?」と聞かれて即座にRと答えられる人を私は尊敬している。
 私だったらABCの歌をSまで歌う時間が必要だから。

*3 あのシステムには合理的理由がひとつとして見当たらない。もしその日の献立に
たまたまタバコと葉巻がついていたら、それを吸い終わるまで教師は許さないのに違い
ないのだろう。その場合、私は子供で教師となぐりあいになってもいい。
3

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