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其の弐 "成績なんかどうでもいい。大事なのは中身だっ!"

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もういなくなったかもしれない。

俺は勝手な想像を膨らませ、期待半分で扉をそっと開けて外を確認する。
――が、彼女は先ほどと表情一つ変わらず固まったように、こちらに微笑みをたたえたまま立っている。
半ば諦め扉をしっかりと開けてその「メイド」と対峙する。

「何か御用でしょうか?」

あまり感情を込めること無いよう淡々と聞いてみた。あくまでも動揺が伝わらないように。
すると「メイド」は、模範解答的な笑顔を浮かべたまま、不審な俺を怪しがりもせずに口を開く。

「貴方、如月竜也さんに用事があるからですぅ」

あれ――俺はここで強烈な違和感を覚えた。目の前のいかにも使用人である彼女が発した言葉。
なぜか敬語じゃないような気がしたが……。まぁ、それはいい。とりあえず何の用事何だろうか。
それを聞かない限り帰ることもないだろう。今日はせっかくの休みの日なんだ、もっと寝ていたい。

「用事ってなんですか?宗教とかなら間に合ってますよ」

無愛想にいかにも迷惑です帰ってくださいと言っているような態度で接した。これ以上かかわりたくないからだ。
しかし、俺の言葉の真の意味を理解していないのか、眉一つ動かさずパーフェクトスマイルをたたえている。

「私の御主人になってもらわないと困るのですぅ」

ですぅってお前……どこの翠色の人形の口癖だよ。リアルで聞いたこと無いからあれだけど、やっぱり可愛ければ許せるな。うん。
それにしてもこのご時世にメイドか……職が無くて大変なのか。そこまでしなくてもいいと思うが。
心地よい風が俺達をそっとなぜる。それに伴い軽く揺れる彼女の髪がまた彼女の魅力を引き立てた。
俺は思わず見とれ掛けたが、追い返すことが目的なのを思い出し我に返る。

「あーっ、明らかに信じられないって顔したのですぅ!なら、証拠を見せますぅ」

こいつ萌えを狙っているのか素なのか……狙っているならすごく痛いぞ。
おもむろに足もとに置いてあったであろう鞄を持ち上げ、中をがさごそあさり始めた。
少し待ってみたが目的のものは見つからないらしく、より一層焦りが混じった探し方になっている。
と、そんなとき鞄から紙切れが落ちた。俺はそれを拾うと、紙面に書かれた内容に目を通した。

「ミカガミレイ……御鏡零。メイド育成専門学校――階級C+」
「あぁっ!なんで持ってるんですかぁー」

そいつは俺から名刺チックな学生証を取り上げると、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そしてしきりにこちらの顔を何度も見ている。何かに気づいていないかを見ているようだった。
生憎だが、あんたみたいなのは知らない。
それにどこに恥ずかしい要素があるんだよ……それを見つけようとして落とした方が恥ずかしいだろ。

「それにしても、階級C+ってなんだ?」
「メイドのランクですよぉ。そのメイドの出来る力に合わせてAから順にCまでありますぅ」


――ちょっと待てよ。


「ってことは、あんた。ほぼ、っていうかかなり最低ランクのメイドじゃん」



  突如俺のもとに現れたメイドは駄目イドだった。
2

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