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1章の舞台裏

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おまけ   -恵一と出会う直前のお話-






「・・・これは?」
暗い空間の中で、男が問いかける。
「記憶添削装置。この子のために2週間かけて作ったの♪」
その隣にいる女が答える。
「本当に、やるつもりなのか?」
「当たり前じゃない、次のマスターに移る時に記憶が残ってたらメンドーでしょ?」
「・・・まぁな」
そのアホみたいに大きな装置の真ん中には、そう。
勇希がいる。
仰向けになって眠ってるようだ。
その勇希の体には、無数のコード―多分300本以上はある―が繋がれていた。
「さぁーて、作業を続けようかしらねぃ?」
女は、台に近寄り、
「スイッチオーン!」
横にあるボタンを押した。
勇希の体に繋がっているコードが、計り知れないほど脈打っている。
その横にあるホログラファーから、霧のようなものが立ち上がったと思ったら、
そこに映像が映し出されていた。
「不要な記憶はどこでしょうかねー?」
記憶を順に見ている男と女。
その記憶は、恵一の前マスターの記憶から始まった。



ここは・・・どこだろう。
私は何をしているんだろう?
行くあてもなく彷徨っているだけか、もしくは
何かの目的を持って動いているのか・・・。
「・・・ッ」
頭痛がする。
2年間ほど記憶が飛んでいる・・・。
その2年間に一体何があったんだろうか?
「・・・あっ」
頭痛が激しくなる。
たくさんの情報が失われる感覚だ。
いろいろなものが消えていく・・・。
何が消えるのかまったく分からない。
でも、意味不明な消失感はたしかにここにある。
「・・・あっ!」
ふと下に目をやると―私は空を飛んでいた―、何かある。
二人の男が一人の男を殴ったり蹴ったりしている。
あれは、俗に言う「イジメ」だろうか?
「あっ・・・」
小さな男の子のほうが、こちらを向いた。
目をむき出しにして、不思議そうな視線を投げかけてくる。
私が、見えてる?
そのうち、イジメっ子の二人は飽きたようで去っていった。
私が倒れている子の横に降り立つ。
「お姉さん・・・誰?」
やっぱり見えているようだ。
「・・・何見てるの、ほっといてよ・・・」
ほっとけると思う?私が。
「そう・・・見ていたいなら見ててよ」
その子は立ち上がって走っていった。
その手には、赤い光が。
「うおおぉぉおぉおぉおぉおぉぉぉおお!!」
何をするつもりだろうか。
と、見てると、その光が触れたところが蒸発して無くなっている。
あれで仕返しをするつもりか?
私は、すぐさま止めに入った。
「ちょっと、何するの?僕が傷つけられたんだ、仕返しくらいされても文句言えないだろう!?」
仕返し、ねぇ・・・。


「ここから、しばらく記憶が飛んでるわね。」
男は、続きを見始めた。


「あんたは、何がしたいんだ!」
優斗は相手に向かって叫ぶ。
「何ってぇ?んなの決まってるじゃないの。この世界を・・・ゲフンゲフン」
大事なところで咳き込みやがった。
「この世界を滅亡に導く、それ以外に何がある?」
へぇ、滅亡ねぇ・・・。
そんなことしたら、アンタ達「異者」も人間に憑けなくなるんじゃない?
「そんなこと知ったこっちゃないさ。ただ私は、人間に仕返しがしたいだけだ!」
仕返し・・・・?
「そうさ、仕返しだ!」
「なぁ勇希、こいつ、どう思う?」
どうって・・・昔のアンタ?w
「あぁ、昔の俺を見てるみたいで腹が立つ」
そういえば、この子も成長したんだなぁ・・・。
あんなチビッコだったってのに、今は世界を救おうとしてる。
すごいよ・・・優斗。
「お前に、世界は消させない!」
「なぜ!?人間は愚かだよ!君はどうしてこの世界に執着するんだい!?」
・・・。
優斗、どうなんだ?
そこは私も聞いたことがない。
あんたは、昔この世界からいなくなろうとまで考えたじゃないか。
なんでこの世界に執着する?
「たしかに人間は愚かかもしれない。いや、愚かだ!
 でもな、人間は悪いところだけじゃないんだぜ?」
優斗の言葉に、異者は返す。
「人間は弱い、弱い奴に存在意義なんてあるもんか!」
優斗は、それに重ねるように言う。
「違う!
 確かに、一人一人は弱いかもしれない。
 でも、その弱さをみんなで支えあって生きているんだ!
 世代、人種、国の差を越えて、
 それぞれが支えあっている。
 「信頼」というリングの中で、みんなつながってるんだよ!」
「それがどうした、ユート!?」
「そうか、分からないか。
 でもな、人間は弱くなんかないぜ。
 少なくとも、仲間のいないアンタ達よりはな!」
優斗、いけ!
「うおおぉぉぉおおおおお!!」



「・・・へぇ。こんなこともあったのね」
機械をいじくりまわしつつ女は言う。
「これは消さなくてもいいわね。」
「あぁ、お前ががそう思うなら俺はいいと思うぜ」
そこから少し時間は飛ぶ・・・。



「ねぇ、勇希?」
優斗は、隣で寝転んでいる。
「君は、なんで俺のために命を張るんだ?」
・・・。
なぜだろう。
命令?指示?義務?使命?
どれでもない、ただひとつの目的のため。
今はそうとしか言えないよ。
「そうか・・・」
私は、どうしたらいいんだろう?
も、もしかして嫌われたっっ!?
「勇希」
ひゃいぃっ!?なんでしょうかっ!
「顔真っ青」
えぃぇっ!?どどどうして私のか顔が青くなれるるのっっ!?
「・・・プッ。知らないよ」
プッって何、ねぇプッって何よ!?
「静かにしないと怒られちゃうよ」
あぅ・・・。
「勇希って、最初は・・・天使だとか使者だとか言ってたけどさ、
 勇希もさっきの剣ってヤツも、僕達とさして変わりない人としか思えない」
・・・そう。
「何なんだろうね、僕らの違いって」
・・・暮らしてきた環境?
「争いの日々?」
そう、それ。
「それだったら、僕らも一緒じゃないか」
何で?
優斗は、ちょっと笑って言った。
「それほど大きな規模、戦争みたいなものじゃないよ。
 だけど、人間だっていろいろなところで争ってるんだよ。
 ケンカだって、戦争の縮図?みたいなとこあるじゃない」
・・・同感はできないな。
私は、人間の争いがとても幼稚なものにしか見えないよ。
私達は、領土や収益とは違う、
もっと大きなもののために戦ってるんだ。
「何?それ」
・・・何か大きなものだよ。
「誇り?」
さぁ?
「誇りをかけて戦うなんて、いいことじゃないか。
 人間は自分のために戦うんだよ?
 自分は戦わず、人を使ってね」
・・・それが、戦争ってものなの?
「そうだよ」
・・・どうして、戦うのかな・・・?
「知らないよ。でも、これだけは言える」
呟くように、優斗は言った。
「争いは、何も生み出さない」



突然、バチッ!と大きな音がして、機械から黒い煙が噴出した。
「何々?何これ!?」
突然の出来事に戸惑っている女。
「おい、ちょっと黙ってくれ」
男は、何かをいじくっている。
どうやらこの機械を直そうとしてるようだが、
その努力も無駄になりそうだ。
一部が、爆発した。
「ちょっと、逃げるわよ!」
「・・・分かった。でも、こいつはどうする?」
男は、言った。
「ほっといて!そんなヤツのためにケガするの!?」
男は、爆炎の中に入っていった。
「ちょ、ねぇ!?」
そのまま、男の姿は消えていった。
炎の中からは、何も出てこない。
「・・・私は逃げるからねっ!」

炎の中では、
「勇希、お前はあいつのもとへ戻るんだ」
男が勇希に手を当てると、勇希は一瞬でどこかへ消え去った。
「さて、あとは俺か・・・」
燃え盛る爆炎の中、男は一人考えていた。
18

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