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5話「見知らぬ世界」

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「勇希、どうしてるだろう」
勇希と楼牙は、俺と華菜のいる学校へ転入することになった。
楼牙は、もちろん偽名を使って。
楼牙の新しい名は、「水野 晃(ミズノ アキラ)」
晃は、俺や華菜と同じクラスになったんだが、
勇希は隣のクラスになってしまったようで、
文芸部の活動の時にしか顔を合わせることはできない。
今、「勇希ってお前の家に住んでたよな?」って思った奴。
そう、俺の家に住んでたんだがー・・・。
さすがにいつかバレると思ったらしくて、晃と一緒にアパートに住むことにしたらしい。
俺の家と華菜の家の、ちょうど中間くらいの位置か。
一度行ってみたが、なかなか広く、二人で住むのには手ごろな大きさだった。
金や食料はどうしてるのか、と聞いてみたら、
「そこは・・・ねぇ?ほら、作ったり襲ったりして食いつないでるよ?」
・・・続きは聞かなかった。
犯罪でも犯して、捕まったらどうしようか。
まぁ、そういうわけだ。
あ、ちなみに俺達4人が現・文芸部だ。
それ以外にはいない。
「何だい恵一、ぼへぇーっとしちゃって」
晃が、後ろからペンでつついてくる。
そういえば、こいつ後ろの席だったっけ。
「誰がボケッとしてるって?」
自分でも分かるくらい寝ぼけた顔をして言い返す。
「ほら、寝ボケてるよー」
華菜が、斜め後ろから言葉で刺してくる。
華菜の横には、あの坊主がいたハズだが、と思ったろう?
実は、晃の転入と同時に席替えがあったんだ。
窓際後ろから2つ目っていう、ナイスなポジションを獲得したと思ったのも束の間。
後ろにはこの2人がいた。
キョンと同じ場所じゃん、とか思ったと思うが、ここの席は俺的にもベストなんでな。
ちょっとうるさいのが後ろにいるがな。
「勇希の事、考えてた?」
「だろうな」
何か2人で言ってるが、あえて無視する。
あぁ、日常楽しいなチクショォ。

時は進んで放課後。
文芸部教室へと集結する4人。
実は、この文芸部の存在も危なかったんだぜ?
勇希に、あと1週間で部誌を提出しないと廃部だって言ったら、
ものの2日で書き上げてきた。
中身を見てみると、どうやら俺達がモデルのような気がする。
まぁいいか、と思って提出してみたら、これが案外好評でな。
首の皮一枚どころか10枚くらいで繋がったんだ。
「ところで、恵一?」
晃が、天井を指差して言う。
「あそこのシミは何なんだ?ずっと気になってるんだが」
「あぁ、あれは俺が入った時からずっとあるんだよ」
間違いなく、本当の事を言う俺。
「いやそれは分かるけどさ、日に日に大きくなっていってる気がするんだが」
「晃は心配性だな。大丈夫だろ」
それからは、いつもと同じく駄弁ったり本読んだりネット回ったりで毎日が過ぎていった。
恋の進展?んなもん知らないぞ。
んで、それから一週間後、大事件が起きる。

晃が、学校に来ない。
それだけならよかったんだ。
華菜も来ないんだ。
あの健康的で風邪も引きそうにない華菜までもが、
ここ一週間学校を休んでいた。
ちょうど、晃が天井のシミの事に触れた日からだ・・・。
「どうしたんだろうね、あの二人」
勇希も気にしている。本当に、どうしたんだか。
「あの天井のシミ見てから、全然来ないじゃん」
俺と同じ事を考えてるらしい。
しかし、シミを原因だと思うなんて俺も不思議に対する耐性が強くなったのか?
それともただのキ○ガイか?
「また、広がってるよ・・・?」
勇希は、天井のシミを指先で擦った。
「うわ、黒っ!?」
指についたススのようなものを気にしている。
おいおい、何してんだよ。
「だってススが・・・いったぁぁっ!?」
膝を机にぶつけたようだ。鈍い音がした。
おいおい、ちょっと薬貰ってくるから待ってろ。
「うん、できるだけ早くね!」
何でだ。
打ち身によく効くバンテリン。
作者も、これに世話になってる。
さぁ、早く持っていってやるか。
・・・あれぇ?
勇希がいないぞ。
どこ行った?外か?帰ったか?
鞄は机の上に置いてあるし、さっき下から来たんだから、外へ行ったならすれ違ったハズだ。
と言うことは、この中か?
おーい、勇希、出て来いー。
ほんと、みんなシミを気にするから休んだり消えたりするんだ。
こんなの気にしなかったら・・・って黒っ!?ススっ!?
指で擦ったら、やはりススのようなものが付いた。
気持ち悪いな、洗おう。
それが、ちょうど5分前の出来事だ。
それから、トイレへ直行するために俺は扉を開けて出たんだよ。
それがどうしてこんなことに?
周りを見渡せば、吹き抜ける風と共に揺れる草原。
かなり広い。遠くに低めの山も見える。
ここはどこだ?サバンナか?
カラカラカラカラカラ・・・・・・。
そんな音がした。
振り向くと、そこには何とも不思議なものがあった。
深く追求すると面倒くさくなると思った俺はあまり深く入りこまなかったが、
どう見てもあれは・・・馬車だ。
この平成の時代に、馬車なんてあるか?
シルクロードじゃあるまいし・・・。
本当に俺はどうしたんだか。夢でも見てるのかな。
ん・・・?
待てよ?
俺は、ここに来る前に何をした?
いつもと違う事・・・。シミに触った。ススが付いた。
それが原因ってか?おい。
でもよ、皆。それしか無くないか?
華菜と晃はシミを気にした日から学校に着てないし、勇希なんてシミに触った10分後には消えていた。
正直に、思った。
あのシミは、ここへ来るための扉か何かだったんじゃないか、ってな。
・・・皆って誰だよ。
ここには人っこ一人・・・、

いたよ、おい。二人も。
なんで子供がここにいるんだよ。
そもそも、何だよその格好はよ。
片方は、全身青い服で固めた子供。なんか貴族っぽくてヤだな。
もう片方は、全身赤く染まってる女。こっちは庶民的だな。
なんか、二人してダウジングでもしてるみたいだが・・・?
「おーい、アル。なんかでっかい反応があるぞ」
「何?」
おいおい何かこっちに来てるぞおい。
「あ、止まった」
「止まったね」
何だ、俺が不思議物体ってか?
「そのとおり」
「そのとおり」
ハモるな、鬱陶しい。
「君、名前は?」
女の方が、聞いてきた。
普通に自己紹介してみた。下手だが。
「へぇー、恵一君か。よろしくっ!」
おいおいなんか握手されてるよ俺。
「なぁ恵一よ、武器も持たないで何してるんだ?」
子供の方が聞いてくる。
武器?なんだソレ?
そう聞き返した。
「・・・!?」
二人して愕然としていた。
何だよその反応はよ。
「ちょっと待って、武器も持たずにこんなとこに来たの?」
女が言う。
「いやアル、ここまではさすがに来れないだろ。途中黒クマいっぱい出るんだし」
子供が言う。
そういえば、あんた達名前は?
「あ、忘れてた」
忘れんなよ。
「私は、アル・サーベント。アルって呼んでいーよ」
「俺はウッド・サーベント。ウッドって呼んでくれ」
そうか。ところでアルにウッド、武器も持たずってどういう事だ?
「いやどういうことって、このゼンマイを武器無しで歩くとか自殺行為っしょ」
ちょっと待て、ゼンマイって何だ?
「え・・・?ゼンマイってここの地名だけど、知らないの?」
「記憶喪失か?恵一」
いや・・・記憶はあるんだが・・・。
あ、そうだ。
なぁ、俺と同じくらいの年の、女の子を見なかったか?
「・・・見た?ウッド」
「見てない」
そうか、見てないか・・・。
「何、人探し?困ってるなら、私達の拠点で探したらどう?」
「そりゃいいな、エンバなら人集まるしな」
エンバってどこだよ。
「結構近いよ。ここから北東にまっすぐ行ったらエンバ付近地域に入るから」
いや連れてってくれよ。道わかんねぇよ。
「しゃーないなぁ、連れてくか」
「んじゃ、私達の『兄さん』に会うことになるけど、いいよね?」
まぁ・・・いいけどよ。
「よっしゃ、出発ー!」
俺は、この時こんなことを考えていた。
(エンバって何?え、街?)
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エンブアーム。
それが、この街の名前らしい。
略してエンバか。納得した。
まず門をくぐる前に驚いたのが、目の前に広がる草原には人々が露店を出し、
とても活気付いていたこと。
あと、ルナゲートとやらが光ってたが、これはどうでもいいや。
「・・・もう夜かよ・・・いつまで歩かせるつもりだよ・・・」
俺は、無意識に文句を言う。
「ほら、もうちょいだから頑張れ!」
アルに半ば引きずられながら進む。
「なぁアル、考えてみたらさ」
ウッドの発言。
「んー?」
「ルナゲート開くまで待ってたら楽だったんじゃないか?」
しばらく考え込む動作をした後に、
「・・・あっ、なるほど」
頷いた。
何なんだ、俺は骨折り損か。(用法違ってるか?)
「・・・まぁまぁ、疲れた後のご飯はおいしいって言うじゃない!頑張ろっ!」
なんか下手に言いくるめられた気がするが・・・まぁいいか。
それより、ここのご飯は美味しいのか?

「兄さん、たっだいまー!」
「ただいまー」
「・・・ども」
辿り着いた場所は、門壁の端のほうに建つ小屋のような場所だった。
どう見ても、子供の秘密基地のような場所だ。
その割に、生活用品はほとんど揃っている。
「おう、帰ったか。どうだった?・・・・・・どうしたの?その子」
俺のことか。
説明してもらうのも癪だから、自分で全部言ってやった。
シミのことからゼンマイでの出会いから全部な。
普通なら、「こいつ・・・飛んでるぞ!?」とかで終わりだと思う。しかしだ。
聞いた後の、兄貴とやらの反応はこうだった。
「そうか、大変だったな。メシ食べようか。ちょっと準備してくるから、アルウッドはこの子見ててくれ」
「「あーぃ」」
二人合わせてアルウッドか。
兄貴は、そう言うと台所へ向かっていった。
「・・・で、あの人の名前は?」
俺が聞く。
「ん?まだ言ってなかったっけ?」
「いや言ってないよ」
「ウッド、いろいろ説明お願い。私手伝ってくる」
アルは立ち上がり、歩き去っていく。
「ちょwww俺に任せるなwww」
もっともなことを言うな、この子供は。
「ふぅ・・・あの人の名前は、水面鏡。ミナモって読むんだ」
ミナモ、ね。覚えておくよ。
「お前、不思議に思わなかったか?」
何が。
「この世界に来た理由だ。お前、なんでここに来たと思う?」
ワカンネェから困ってるんじゃねーか。
「そうだな。・・・実はな、俺とアルと兄貴は、実の兄弟じゃない。
いやそりゃ見た目で分かるっしょ。
「そうか?」
うん。
で、兄弟でもないのになんで一緒に暮らしてるんだ?
「俺達も、お前とは違う時空から、お前と同じ理由で飛ばされたんだよ」
・・・はぁ?
「・・・話、長くなるけどいいか?」
うむ。覚悟はついた。
「覚悟って・・・。 まぁつまり、こういうことだ」
「俺達は、とある理由があってここに来た。
その理由、・・・いや、根源をつぶせば俺達は元の世界へ戻れるってわけだ。
その根源は、分かるだろ?」
「何だ?さっきのゴブリンか?」
俺は、さっき見た盗賊っぽいバケモンを指す。
「正確にはちょっと違うけどな。そう、その根源はゴブリンの親玉だ」
はぁ?何で?
「その親玉は、力を蓄えてる。今、まさに今だ。そいつがここに来てもおかしくない」
・・・わけ分かんねぇんだが。
「俺達が、その親玉を倒せる力を持ってるからこの世界に来た。そうは思わないか?」
ふむ、考え方によってはそうもとれるだろうな。
でも、ハッキリ言って俺無力だぞ?
「あれ、んじゃちょっと前に見た楼牙とかいう奴と華n」
ガシッ、と胸倉をつかんだ俺。
・・・見たのか?
「あぁ、この街で迷ってたから行き先を尋ねてみたんだ。
 そしたら、やっぱり飛ばされてきたって言ってた」
・・・その二人は、俺の友達だ。
今、どこにいる?
「その時は、とりあえずお金貸して宿に泊まらせてあげたけど。
 今日でお金も切れるんじゃないかな?」
「宿の場所はどこだ」
俺の胸倉を掴む力が強くなってくるのを感じたようだ。
「ここを出て、ユニコーンの像の前、エロスって奴の家だ。もっとも、ヒーラーの家だがな」
そうか、行ってみる。
「はーい、出来たよーっ!」
アルが、美味そうなメシを持ってきた。鍋つかみってどこの世界にもあるんだな。
「おぉっ、今日は何だ?」
ウッドが首を180度回転させ、言う。
「アルウッドが獲ってきたクマ肉のキムチ鍋~」
ミナモが、どうにも食う気なくすような説明をした。
「とりあえず、メシ食って落ち着こうぜ、恵一」
ウッドが号令係のようで、その号令に合わせて食べ始める。
「「「「いただきます」」」」
キムチ鍋食った後って、口臭いんだな。
まぁそんな事はどうでも良くて、今とりあえず考えてる事は寝る場所についてだ。
見た感じ、ベッドはあるものの3つしか並んでなくて
俺の分は誰がどう見ようとそこにはチリ一つとして存在しなかった。あぁそこには何も無かった。
「なぁ・・・俺はどこで寝ろって?」
俺がアルウッドに聞くと、アルはニヤッと口の端を持ち上げ、
「ここで寝る?」
自分のすぐ横をパンパンと叩いた。
寝たいっていうか、そこは男子として当然の答えなんだが、
さすがにこの中であんたとベッドシェアする勇気は俺には無いからな。
「えー、ほらこっちおいで?」
・・・遠慮する。
後ろを振り向いてみると、ウッドが物凄い形相でこちらを睨んでいた。
「なんだ、アルと一緒には寝たくないんだ?」
ウッドの体からは、
「何誘われてんだこの野郎俺だってまだ横で寝た事ねぇんだぞ。いてもうたろかゴルァー」
的なオーラが出ていた。
「・・・アル、ウッドと一緒に寝たら?だったらベッド一つ空くじゃないか」
うん、我ながらフラグ立てるのは下手だな。だが、こんな台詞言うのも勇気がいるんだ、察してくれ。
アルは、硬直したまま顔をしかめ、同時に火照らせる。
「わ、私は別にいいんだけど、ほら、ウッドは・・・」
アルがフルフルとウッドの方に目配せする。
「俺はいいよ」
即答。
流石ウッドだ。これくらいの事では動じないか。
何が流石なのかは分からないがな。よかったら教えてくれ。
そういえばミナモはどうしたのかと思い、そのちょうど120度左を見てみると、
「・・・zz」
既に就寝ですか、寝付きがいいですねぇ。
アルウッドはまだいろいろともめているが、あの口調や言葉から察するに、どちらも嫌ではないようだ。
俺は有難くウッドのベッドを占領する事にしよう。
・・・あぁやかましい。

その夜、(久しぶりだなこの言葉)
なぜかパッチリと目が覚めた俺は、もう一度寝ようと思い布団を被ってもぐりこんだ。
もぐりこんだ・・・の・・・だが・・・。
寒い。
どうやら、窓が開け放してあり、外の冷気がモロに飛び込んできているようだ。
早く閉めないと俺が凍えるじゃないか、何してるんだあの二人は。
俺が窓を閉めようと近づいた時、
歌が聞こえてきた。
「Perche io verso lacero e sono cosi contento per averLa darlo sempre sempre
Io capii che io non ero da solo」
何か、心地よいメロディだ。
マンドリンかな、弦楽器と共に突き抜けるように鋭く、なおかつ撫でるように優しい声が響く。
「A proposito io Le diedi fastidio senza che io lo capii e lanciandolo
Ma io affrontai l un l altro seriamente Faccia parole di suoni di cuore ad un cuore di」
遠くに、人影が見える。
見た感じ、16~7歳くらいだろうか。城壁に座り、弦楽器を弾き、歌う女。
昔本で読んだ、セイレーンの歌の伝説を思い出す。
思い出すと同時に、あの綺麗な歌声に恐怖すら覚えてしまう。
「Perche la spinta dell onda penso da una voce che canta da qui per sempre・・・ん?」
歌が急停止、と同時にこっちを機械的な動作で振り向く。
「・・・え?」
静かに、それでいて威圧感を漂わせながら立ち上がり、こちらへ歩いてくる。
やばい。俺は、直感的にそう感じた。
目の前まで接近され、さすがに倒れそうになった時だった。
「ねぇ、キミ誰?」
さっきとは全く違う、活発な女の子のような無邪気な声だった。
二重人格でも持ってるのか?
「誰、って聞いてるんだけど?答えないの?」
・・・答えるヒマも無いじゃないか。
「俺は・・・恵一だ。尾住恵一」
女は、ニカッと笑い、
「そっか、恵一クン!よろしくね!」
あんたは誰なんだ、と聞く隙すら与えず、立ち去ろうと・・・
「私は、通りすがりの吟遊詩人だよ。以後よろしく!」
自己紹介モドキをしやがった。
「っと、ちょっと失礼するよ」
俺を押しのけ、部屋の中に入ってきた。しかも土足、あいつらとの繋がりも不明だ。
スタスタと、慣れた感じで部屋の中を見回していく。
すると、アルウッドを見つけたらしく、
「ふぅーん、この二人、こんな関係にまでなってたんだ?意外~」
普通に喋ってるぞ、コイツ・・・。
「キミ、私のベッド使ってるの?」
いや、それはウッドから借りた・・・
って、私のベッドってどういう事だ?
「あっ・・・言っちゃった。テヘッ」
いやテヘッじゃなくてさ、説明してもらえるか?
女は首をかしげ、面食らったような顔をして、
「弱ったねぇ・・・ミナモ兄から何も聞いてない?」
軽く、ミナモ兄と名を出した。
「さっきも言ったでしょ、私は、『吟遊詩人』なんだよ」
うんうん、で、その吟遊詩人がどうしたんだ?
「私は、ミナモ兄の船で生活してたんだよ。ミナモ兄の妹として。で、私の名前はフィアね。」
うんうん、で?
・・・って、船ってどういう意味だ?
「ンモー、察しが悪いなぁ。私も、この世界に呼ばれた人間なんだよ?」
ふーん。
「いや、ふーんってちょっとは驚くとか出来ないのー?」
目の前に、この世界に呼ばれた人間が3人いるんだ、今更そんなにビビれるかい。
「あぁ、そうだったかな」
とりあえず、こいつ等との関係は掴めた。
あとは、何故ここが「私のベッド」なのかだな。
「・・・で、私と寝るつもり?」
はぁぁぁ?
「だから、そこは私のベッドだって・・・」
だから?
「そこは、私のベッドなの!そう決まってるの!!」
随分強引な奴だな。
結局フトンひっぺがして寝ちまった。
22, 21

  

さて翌朝、
結局俺は床で寝たわけだがどうも心地よくて、
寝坊・・・してしまった。
「さーて、今日も張り切っていきましょーっ!」
アルが叫ぶ。
頼むから寝起きに大声で呼びかけるのはやめてくれ、頭に響く。
アルの後ろから、
「みんな、ちょっと聞いてくれ」
ミナモが話し出した。
「ちょっと俺は役所に呼ばれちまってな、今日はみんなと一緒に行けない。
 しっかり成果出してくれるよう祈ってるよ」
そう言って飛んでいった。文字通り、ピョンピョンと飛んでいった。
「・・・気を取り直して、いきましょっ!」
あーフィアも叫ぶな、うるさい。
「どこに行くか分かって言ってるんだろうな?え?」
ウッドが、少々痛みを感じる声で言う。
「えー、ゼンマイじゃないのー「違うんだよ、今日はネルナ港に行くんだ」
フィアの声に被せるようにウッドが目的地を告げた。
「・・・ふーん、了解」
その声と同時に2人は上に手を伸ばし、
「来い、ジャガバター!」
「Call Leona!」
同時に叫ぶ。
すると、どこからか蹄の音が聞こえ、
急に目の前に馬が2頭現れた。
「いつも通り、アルは俺と一緒に乗ってくれ。恵一は・・・」
「こっちに乗りなよ!」
手招きしてる・・・。
「いやそれ、ソロ用の馬じゃないか。2人乗れないだろう」
ソロ馬なのか、それ。
「ちょっと改良してね、ギリギリで2人乗れるようになったのさー」
「ん・・・んじゃ恵一はそっち。それじゃ・・・」
アルが号令をかける。
「いくぞォー!」
「「「オォー!」」」
こうして、ケアン港への冒険は始まったのであった。

華菜サイド

「・・・んー・・・」
ここは(多分)無人島。
数日前、私と晃はここに飛ばされた。
辺りを散策してみても、人っ子一人いやしない。
んで、とりあえず生活していくために草を食べたり即席の竿を作ったりして、
なんとか凌いでいた。
「・・・なかなか今日は食いが悪いねー」
横では晃が釣りをしている。
何故か、釣りもしたこと無かったはずの晃の方が釣果が・・・。
ビギナーズラック?
「あれ・・・どこ行ったんだろ」
横を見ると、竿を残して晃はどこかに行っていた。
何を一人で喋ってたんだ私は・・・。
「・・・・・・ぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!」
あーどうしたのー晃ー。
なーにか発見?
「ちょっと来てぇぇ!」
あー分かった分かった。
ちょっと待っててねー。
「・・・・・・」
目の前に、岩が座っていた。
文字通り、「座っていた」。
「さっき、これが動いてさ・・・襲ってきたんだ!」
何ぃーそれぇーおいしいのぉー(
そんな、こんな岩ごときが襲ってくるわけが
「オォォォォーン」
静かに唸って立ち上がるわけが・・・
「オォォォォーン」
立ち上がって歩くわけが・・・・・・
「ブオオォォォォ!!」
襲ってきたわ。
「ブォォォォォオオオオオオオオオオオオ」
枠内に収まりきらない程度に声を上げて追ってきたゴーレム。
そして漫画の枠に収まりきらない距離を逃げる私達。
あれーこれ、絶体絶命ってやつですか?
「どうするんだよ華菜、こいつ起こしちゃって!!」
いや起こしたのアンタでしょーが!
とりあえず、倒そうじゃない。
「エー( ´ω`)」
いや、エーじゃないでしょ。
このままじゃ死ぬっしょ。
「・・・ちょっと、見てみてアレ」
晃がプルプル震えつつゴーレムの方を指差してた。
何か「ブォオー」とか言いながら腕振り上げてるんだけど・・・。
何、あれ?
「走らないで!止まって!」
はいっ!
・・・って、反射的に伏せちゃったじゃん!誰だ、今叫んだの!
って言おうとしたら、人型の何かが真上を飛んでいった。
人型の何かっていうより、人か。
「ヴォオオオオオオオオオ!!」
ゴーレムの上げてた声が、悲痛の叫びっぽいものに変わったよー。
ちょっと目に入った光景は、
まるで、誰かが助けに来てくれた感じだった。
「ヴォオオオオオオオオオ!!」
2度目の叫び。
ゴーレムは、頭らしき部分にヒビが入り、それが相当痛いと言いたげだ。
「ウラァァァァァ!!」
さっき真上を通り過ぎた人の声。
上を見上げると、それと同時にカキーンという音が鳴り響いた。
そのカキーンと同時に、ゴーレムはパーツ毎にバラバラになり、
ヴォーの一つも上げずに崩れ落ちていった。
エーこんな弱いのこの石。
「ふぅ・・・さっきのは、スタンプっていって、走ってたり近くにいたりしたら衝撃波で
 吹き飛ばされちゃうんだよ」
あー・・・そういうことね。
理解しましたっ!
「よし、んじゃーまた会いましょー」
その人は走り去っていった。
でも、なんか私達だけだと頼りなかったから
着いていっちゃった☆テヘッ☆

「はぁ・・・スバルめ、何をしろっていうんだ?」
ブツブツと呟きながらどこかへ歩いていくその人は、
ゴブリン・・・て言うのかな?青い生命体と会話して、
・・・商売かな?して、戻ってきた。
「はいこれ、飲んで」
何か赤い液体を渡された。なにこれ?
「はぁ・・・ありがとうございます」
また会いましょうって言って去っていったのに、
なんでついて来た事分かったのかな・・・。
とりあえずその液体を一気に飲み干してみた。
「「っぷはぁ!」」
何コレ、あんまりおいしくない・・・。
「おー、いい飲みっぷりだ!」
よく見ると、格好は十分男っぽいけどよく見れば女の人だったよ。
女の人があんな大きい怪物を一撃で倒すなんて凄い!
「あのー・・・お名前は?」
やっぱりするべき質問はしておかないとね!
「あー私?えーっと・・・メリダ!そう、メリダだよ」
なーんか怪しい人だなぁ、失礼だけど。
何で名前言うのに考える必要があるのかな。
「あのー・・・本名を・・・」
晃が思ってたことを口に出す。
「え?メリダが本名だよ。最近船長としか呼ばれてないからねー」
あーなんだ、最近船長としか呼ばれて・・・
・・・せ・・・・・・
「船長ォォォォォォォ!?」
恵一サイド

「ねぇ、なんか・・・おかしくない?」
今、俺達はネルナという名の港へ向かってる。
向かってる・・・ハズなのだが、
「さっきから同じ場所をぐるぐる回ってるような感じがするー」
フィアも、少々疲れてきたみたいで、
ほんの数時間前までの元気が嘘のようだ。
「おかしいな、こっちで合ってるハズだけど・・・」
アルは、頭の上に?を浮かべながら馬を走らせている。
普段狩りをしているだけあって、こっちはピンピンしていた。
「おなかすいた。メシー!」
フィア、うるさい。
「あ・・・ここ、やっぱりさっき来たとこだよ」
下には、馬の蹄の跡が、数本刻まれていた。
「1,2,3・・・7回もここ通ってるねー」
「絶対何かおかしいって!誰かの罠か!?」
ウッドが騒ぎ始めた。うるさい。
「ウッド、黙れ」
アルが凄みを加えた声で黙らせた。
「それにしても、誰の仕業だろう・・・」
俺も、しばらく付近の地形を把握しようとして周りを見渡していたから、
このあたりの地形と通行路は大体分かってる。
しかし、このカモレフのドラゴン遺跡付近という地域は、
どう考えても一本道、枝道など無い。
「いや、私は誰の仕業かより、ループさせる方法を「うるさい」
アルの凄みの効き目は相当のようだ。
「磁力波を帯びた霧の影響か、それとも・・・」
ウッドが珍しく真面目に考えている。
さっきまでのポケーッとした顔とは大違いだ。
「ねーねー、おなかすい「「うるさい」」
フィアは、ついにウッドにまでたしなめられるようになってしまった。
「しょうがない、今日はここで野宿しましょうか」
というアルの提案に、皆疲れていたのか軽くOKしてしまっていた。

華菜サイド。

「ねぇねぇ、船長ってことはさ、船とか持ってるのか!?」
晃がハイテンションモードになってしまった。
しばらく一緒に暮らしてるから分かるけど、
こうなると、ガッカリさせない限りこのテンションのままなのだ。
「あーごめん、ちょっと乗組員とケンカしちゃって、今は船無いのよね」
ズーン
という音が聞こえてきそうな程、晃は残念がっている。
ところでメリダさん、ここから出る方法は・・・?
「あー、あっちにゲートがあるんだよ。おいで」
おいでって、見えてますが。
「あれはルナゲートって言ってね、私たちの間ではMGって呼ばれてるものなんだよ」
ミディアムゲイ?
「違う。あれは、一種のワープポイントみたいなものなんだ」
ははぁ、つまり、あれに入ると
「街に飛んでいけるってわけですな!」
人の台詞を取らないでほしいな、晃ー。
「まぁようはそういうこと。ただ、日によって行ける場所は違うのよね」
まま、この怖い島から抜け出せるならどこにいってもいいよ。
さっさと出ようよー。
「そうだね、今日の行き先は・・・カモレフか」
私達は、そのカモレフのドラゴン遺跡前とやらに飛ぶことになった。

勇希サイド

「ん、うーん・・・」
私が目覚めたのは、どうやら白いベッドの上。
ここはどこなのだろう。
知らないところだったら嫌だな、怖いから。
とりあえずここがどこか誰かに聞こう。
幸い、玄関は開いてるみたいだし、
サーッと歩いてれば人一人くらい見つかるよね。
・・・そう思って、外に出たはいいものの、
どこだろう、ここ・・・。
なんか大きい・・・私の知ってる中でこの形に該当するものは・・・、
そう、「ドラゴン」って呼ばれてたな。
その化石が発掘されている。
目の前に、看板がある。
「カモレフ ドラゴン遺跡発掘現場」
カモレフってどこだろう・・・。
ドラゴンってこれかぁ・・・。
すごく・・・大きいです。
「ねーねーおなかすい「「うるさい」」
どこからか声が聞こえる。
「誰かが霧を張って、方向感覚を狂わせてるのか?」
誰かの声だ。
なんだか、聞き覚えのある声・・・とても懐かしい。
「何か狩ってくるねー」
こっちは聞き覚えのない声だ。
「おう、いってらっしゃい・・・って、勝手に離れるなよフィアっち」
これも聞き覚えのない声。
フィアっちと呼ばれた声が、どんどんこっちに向かってくる。
誰だろう・・・。
「食料ォォォ―――!!」
飛び掛ってきた。
気持ち悪い、向こう行ってよん。
「ピャー!」
ちょっと突き飛ばしただけなのに、変な声をあげて吹き飛んだ。
さすがに「力」を使うほど強い敵でもなさそうだけど・・・、
敵なのかも分からない。
「どうした、フィア!」
聞き覚えのある声。
「ひ・・・人型の強い魔物が・・・ガクッ」
私のことか。
「お、おい!倒れたぞ、大丈夫か!」
「大丈夫、こいつ死んだフリうまいから」
声が交差してる。
「おーい、人型の魔物ってアンタか?」
誰だろう、赤い服を着た女が向かってくる。
誰が魔物よ。
「お、人語が分かるみたいだ。みんな来てみなよ、珍しい魔物だよ」
だから誰が魔物だ!
「え・・・勇希?」
あれ、なんで私の名前を知ってるの?
24, 23

  

恵一サイド

「あれ、なんで私の名前を知ってるの?」
いや知ってるも何も、俺だ。恵一だ。
「あれ、恵一君、知り合い?」
だよ。魔物じゃない、一応人です。
「一応ってひどいよ恵一」
ちょっと、みんな向こうへ・・・。
「あいよー」「はーい」「ういよ」
で、お前はどうしてここにいるんだ?
「こっちが聞きたいよ。なんでここにいるの?」
いや・・・俺はさ、
いきさつを説明してみた。
・・・ってわけで、
「へぇ、大変だったね・・・」
お前は?
「いや、私は目を覚ましたらここにいてさ、なんか歩いてたら襲われるし・・・」
フィアは後で殴っておこうと思った。
それよりも気になるのは、今はこの霧のことだ。
誰が張ってるんだろう・・・。
「・・・ッ!?」
出た、勇希の気配察知。
何かが来ると、頭の上に!が浮かぶくらいの警戒をするのだ。まるでメタ○○アソリッ○だな。
「恵一、誰か来る」
あぁ、そうだろうな。
お前がそんな顔をするのはそんな時だけだもんな。
「ひどいな・・・誰だろうね」
意外と、この霧の張本人だったりしてな。
・・・俺はほんとにそう思ってたよ。
でもな、まさかここでこうくるとは思ってなかったんだよ。
「声が聞こえる・・・人語みたい」
あぁ、聞こえるぞ。
「ねぇ、ここで何するのー?」
「とりあえずクマでも狩って食料確保ね」
「へぇ、クマもいるんだ。面白いねここ」
なんか聞き覚えのある声が2つとない声が1つ。
誰だろう・・・。
「なんか聞き覚えのある声が2つあるね・・・」
お前も気づいたか。
まさか、まさかあの2人か?
「かもね・・・」
こっちが出るまでもなく、向こうから声がかかってきたのはなぜだろうか。
「あー!恵一!」
「勇希もいるよ!」
「あれ、あんたら知り合い?」
華菜と晃、あと・・・ローブとおっきい帽子を被った女。
が、目の前にいた。
「あれ、もしかして全員集結?何かのフラグ?」
間違っちゃいないだろうな。
さっきから誰かに見られてるような気がするんだ。
と、勇希が目を細める。
この目をする時は・・・、
「恵一、来る!」
戦闘隊形に入る時だ。
霧がかかってるから何も見えんが?
多分この視線の主のだろう、殺気を感じる。
・・・っ!?
「恵一、危ない!」
何かが真っ直ぐ俺に向かって飛んでくる。
思わず避けようと体を反らすが、どうやら飛んでくるものはコントロールできるようで
俺の眉間に向かって一直線に飛んでくる。
「ん?」
「え?」
華菜と晃は何も知らないといった顔をしている。
「うわぁっ!」
思わず手を前へ突き出した。
―――すると、
「・・・け、恵一、何それ?」
華菜が化け物でも見たような顔をして尋ねる。
飛んできた物はどうやら氷の矢のようなものだったが、
それは俺の手の中に納まっている。
その氷の矢の形を把握した時、それは赤い光に包まれて俺の手の中にあった。
修行の成果だろうか、次元を思った通りに扱える。
「恵一、いつの間に扱えるようになったんだ?」
晃はコレを知ってるみたいだが、
まさか俺が使うと思ってなかったようで驚きを隠しきれていない。
「・・・あっちだな」
今までほとんど空気だったフィアが、マンドリンの弦を外している。
と、結構な速度でその弦を投げた。
片方の端は手の中にあるが、投げた先は意思を持つかのように伸びていく。
「捕えた!」
フィア、アルウッドも協力してその弦を思い切り引っ張る。
「うわぁっ!?」
ドスッという鈍い音を響かせて、何やら黒い物が落下してきた。
ドラゴンの石像の上にずっと立っていたようだが、
「お前誰だ、何故俺達の邪魔をする」
ウッドが威圧感たっぷりにワンドの先を突きつける。
今だからわかるが、これは人型をして黒い全身を覆うローブを着ているものだ。
多分中身も人間まではいかなくとも人型の生命体なのだろう。
「・・・邪魔?俺はただ命令された通りにここに霧を作っただけだが・・・」
命令ってことは上にも沢山似たようなのがいるみたいだ。
「あぁ、あとこういう命令もされている」
る、と言い切った直後に腕に付いている筒の中にさっきと同じ氷の矢を詰め込み、
「見つかったら殺せ、ってな」
上に放った。
なぜ俺達はその様子をただ見ていたのだろう。
それが、そいつの攻撃ではなかったと知っていたら、打ち上げるのを阻止したはずだ。
上空で氷が炸裂し、青い光を放つ。
「・・・IS式閃光弾!?みんな、逃げるぞ!」
閃光弾って、あれだよな。仲間呼ぶアレだよな?
「その通り、アレは攻撃用の術を使った閃光弾。多分、近くにいるモンスターが寄ってくる!」
ウソーン
「ウソーン」
華菜、真似するな。
「ごめん」
とりあえず逃げよう、話はそれからだ。
俺達は逃げ続けていたハズなんだ。
真っ直ぐ進んでいたハズなんだ。
しかし確証は無い。
なぜなら、ここは霧に包まれている。
前が見えるハズがない。
「ちょ、ちょっと・・・どこに向かってるの?」
華菜が疲れてきた。
俺もそろそろ体力の限界が近いんだが、俺達はどこへ向かっているわけでもなく、
進むがまま進んでいるだけだった。
「あはは、バーカ。この霧は、ボス特製の何だっけ・・・チャフとかいう武器を応用した霧だ。
方向感覚まで狂っているだろう、逃げられるわけがない!」
チャフって・・・。
・・・待てよ、この世界にチャフなんてあるのか?
「なぁ、恵一・・・チャフって何だ!?」
無いみたいだ。
さすがに走りながらの会話は疲れるから、霧を晴らすことに専念しようじゃないか皆の者。
「どうやって晴らすんだよ・・・」
梨も息が上がってきている。あれだけ体力に自信ありそうな事言ってて・・・。
「霧は水蒸気の塊らしいから、ウッドがフレイムプレスでも撃てば・・・」
「いやたぶん無理だろう」
フィアの提案、ウッドの否定。
そのココロは?
「この霧はチャフの原理を利用しているって言ったな?
俺達はチャフというものが何か知らない、ということは、この世界での常識も通用しない。
多分だが・・・」
だが?
「恵一の世界には、チャフってのがあるんじゃないか?」
あるよ。
金属片を詰めた爆弾みたいなものなんだがな、
それを撒き散らせてレーダーの索敵能力を一時的に低下させるという、
隠密行動専用とも言える兵器だな。
「なるほど・・・じゃあ、ここには電磁波があると」
ウッドが何か閃いたようだ。
俺達は走るのを止め、ウッドの意見を聞くこととする。
「もしここに電流が流れているとすれば、俺のライトニングの能力をフル活用できる。
それで何とかアイツを仕留めることが出来れば、あるいは・・・」
・・・アイツは何処だよ。
「今、索敵してる。待ってて」
メリダがメイスを顔の前に出し、少し魔力を籠めている。
「ところで、恵一。奴を一撃で倒せるような攻撃は思い浮かばないか?」
そのライトニングとやらで一撃で倒せないのか?
「それがダメなんだ。さっき見た感じ、奴にはマジックシールドがかかっている。
だから、魔法をぶつけても跳ね返されるだけなんだよ・・・私達の攻撃はそんなに強くないし」
ウンウン、とフィアが全力で頷いている。
攻撃力か・・・何か無いかな。
「私は思い浮かばない」
「私も、そっちはあんま詳しくないからー」
「知らないよそんなの」
・・・あ。

「・・・捉えた!」
メリダが真っ直ぐに指を指す。
あっちか・・・、
「行くよ、恵一!」
おう!
俺と勇希は、既に連結してある。前の大砲の、小さいヤツだな。
俺達の弾も魔力に近いものがあるようで、多分跳ね返されるらしい。
「私から行くよ」
晃が華菜の肩に手を乗せている。
「え・・・え?何?」
俺達は前もって聞いてあるが、華菜には何も言ってなかったからな・・・。
晃は、少し前に言っていた。
なんとか生き延びることが出来たが、連結以外の能力
はほとんど残っていないから戦力にはならないと。
そして、その連結の相手として華菜を使う、と。
「・・・回路連結(アーマーコネクト)」
俺が勇希と連結した時は、青と緑を混ぜたような色の光を発した。
しかし晃が発した色は・・・、
「え・・・うぇぇぇ!?」
深紅だろうか、赤黒い光だった。
ドス黒い光に包まれ、華菜が手にしていたモノは、
「何これ、よく切れそう・・・」
鎌だった。
死神の持つような大きなモノだ。
〔さ、華菜。恵一の指示に従って!〕
「う、うん!」
おいおい俺は指示出せるような偉い奴じゃないぞ。
俺達は、メリダが索敵し続けている間その方向に飛び続け、
「そいつ」を捕らえた。
「おいウッド!捕まえたぞ!」
ウッドに聞こえるように大きい声を張り上げ、叫ぶ。
「・・・ところで、あの三人は一体何をしてるの?」
「離せって言っても離してくれないんだろうなぁ?」
俺達は、ゆっくりとその黒ローブを地上へ降ろす。
地上に着いた時、それはうっすらと見えた。
そう、ウッドの作った電磁波・・・チャフ霧に使われたであろう金属粉を操り作り出した、
「磁力」。
その磁力が波となって、一直線に黒ローブへと向いている。
「オーケー、こっちも準備出来たぞ」
アルは腕に備え付けたシリンダーを黒ローブへ向け、
そのシリンダーを矢が貫き通すようにフィアは矢を構えている。
そしてウッドは、その横で電磁波を操っていた。
「・・・ま、まさか・・・!?」
ウッドが叫ぶ。
「撃てェェェ―――ッ!!」
フィアが矢を放つ。
その矢が、シリンダーの中に作られた風の渦により回転し、
銃弾のように回転しながらシリンダーを貫いた。
その貫いた矢は、電磁波へ突入。
「・・・電磁砲・・・レールガンの応用?」
あぁ、そうだ。
磁力へ突入した矢は、磁場の波を貫き、貫いて次の磁場へ向かって加速する。
その速度で貫かれたモノは、まず生き残れないだろう。
「やめろ、やめてくれ!放してくれぇぇぇ!!」
あーあ情けない、涙声で叫んでるよ黒ローブ。
「放さないよ・・・私達を殺そうとしたんだから、その報いってね」
うわぁ、なんか華菜がちょっと黒くなってるよー。
そしてその矢は、黒ローブへ当たる。
「うがっ!」
回転した矢は肉をえぐり取り、その衝撃は外側へ。
体が裂け、飛び散り、いくつもの欠片となって四方八方へ散らばった。
26, 25

  

しかし、その飛び散った肉片は人間のものではないと分かった。
同時に、それは黒ローブが人間とは別の人型生命体であることをも示していた。
「な…なんだコレ」
肉片と同時に飛んだ血液は、薄い瑠璃色だった。
俺達はこれまでに瑠璃色の血液を持つ生き物を見た事がなかったから、
当然不思議に思う。
「まさか、人工的に作られた生命体か?・・・ってお前何してるんだ!」
ウッドの横では、フィアが肉片を食っていた。
おい、汚いぞ。
「・・・ぷへっ、何これ虫みたいな味するー」
虫って・・・、お前は虫を食ったことがあるのか?
「あるよ」
おいおい。
「待てよ、虫か・・・」
メリダが何か閃いた様子。
空気になっていた華菜と晃が聞く。
「虫で何か思いついたの?」
「この世界には、魔術・錬金術・神術の3つがある。
魔術はさっきウッドが使ったようなライトニングなど、攻撃的な
ものだ。そして神術は、この中ではフィアだけが使える、
野獣化という技・・・用は神の力を借りた変身だな。
で、錬金術・・・これは、あるモノから別のものを作り出すという術だ。
もしもコレが虫から作られた人間だとしたら・・・」

その夜。

俺達は無事ネルナ港に辿り着き・・・遊んでいた。
一体目的は何だったのだろうか。
「そおいっ!」
「負けるかぁーっ!うりゃ!!」
アル・ウッド・華菜・晃は、2チームに分かれてビーチバレーをしている。
こっちの世界にもバレーはあったんだな。
そして海岸の方を見てみると、メリダがなにやら大きい魚と戦っていた。
見た感じ、こっちの世界のマンボウに似た魚だ。
・・・晩飯にアレ食うのか、微妙な気分だな。
フィアは・・・潮干狩り。
この海岸の向こうには宝石や貴金属の鉱山があるらしく、
砂金や砂鉄、小さい宝石などがゴロゴロしてるらしい。
フィアはそれ目当てでずーっとふるいをシャカシャカ鳴らしている。
ふるい、どこで手に入れてきたんだろうか・・・。
そして俺と勇希は、ヤシの木陰で休んでいた。
勇希も相当疲れたのだろう、ぐっすりと寝ている。
それにしても、錬金術か・・・。
こっちの世界では大昔に、石や鉄を金に変える方法として錬金術が開発され、
それにより今の冶金や金属加工の技術が発達したんだっけか。
この世界では、それが成功したってわけか・・・。
突然、風を切る音と共に一本の矢が飛んできた。
「ッ!?」
俺の目の前で急減速したその矢―正確には減速させたのだが―には、
手紙がくくりつけられてあった。
リスナーの皆、聞いてくれ。

こんにちは。
この世界の生活には慣れてきましたか?私は、あなた方をこの世界へと導いた本人です。
もし迷惑だと言うのなら、今すぐその矢をこちらに投げ返してください。
何とかして、私が元の世界、元の時間に帰します。
しかし、あなた方を呼んだのには理由があります。

この世界は、ある強大な力を持つ者により滅亡しようとしています。
世界征服、と言ってもいいかもしれません。
彼の名は、「ベヒーモ」。
彼は、この世界へ突然やってきました。
そして、錬金術をマスターし、ウォールと呼ばれる軍隊を率いて人間を襲う準備をしています。
・・・彼はキリンと呼ばれる魔物を召喚し、
そこにいるアル、ウッド、ミナモの三人は
キリンの討伐に成功しました。
しかし彼はその能力を使い、人体練成を行っています。
その最終目標は、神術と錬金術を織り込んで魔物を作ること・・・。
あなた方を呼んだ理由はもうお分かりでしょう・・・。
お願いします、この世界を滅亡の危機から救ってください。
彼は、神術を得るためにレッドドラゴン「メア」の力を借りています。
メアを撃破すれば、彼は神術を習得するのに長い年月を必要とするでしょう。
レッドドラゴンの巣は、そのネルナ港から船に乗った先・・・イリスの地にあります。
お願いします、この世界を滅亡の危機から救ってください。

なんか唐突すぎるが、俺達が帰ったらこの世界が滅亡するらしい・・・。
早く帰りたいと思っていたが、なんだか一騒動ありそうな気がしてきたぞ。
「おーい、晩御飯できたよー」
メリダが呼んでいる。
ま、とりあえず明日からのためにメシ食って力つけよう。
「おう、今行く!」
俺は大きく答え、みんなの下へ向かった。
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坂口春南 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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