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「これは、間違いないな。お前達がやったんだな?」
「わ、わたしたち、違います!」
「しらばっくれるな! その折れた大根が何よりの証拠だ。大方そのトマトで被害者の注意を惹き、ごぼうで目をくらませて大根でトドメをさしたんだろう」
「そんな、本当に違うんです!」
「わたしたち、そんな……」
「言い訳は署で聞こうか」
「待ってください刑事さん」
「何だね、探偵君?」
「そこの二人は犯人ではありません」
「じゃあ誰が犯人だと言うんだね!」
「被害者の頭部を良く見てください」
「頭部? アッ、これは……!」
「おわかりですね? そう、凶器は豆腐の味噌汁だったのです」
「と、となると犯人は……!」
「そう、味噌・汁夫さん、あなたです!」
「殺すつもりじゃなかったんだ……ただ、あいつが豆腐だけじゃなくてせめて油揚げくらいは入れて欲しいなんて言うから……すみません、刑事さん」
「わかった。もう何も言うな……連れて行け。探偵君、今回ばかりは君に助けられてしまった。礼を言わねばならんな」
「いえ、食べ物を粗末にする輩が許せないのはわたしも同じですから」
こうして事件の幕は閉じた。しかし、味噌・汁夫を凶行に駆り立てた本当の犯人はもしかすると、豆腐のみの味噌汁を認めないこの世界の方だったのかもしれない……。
<完>
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