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二話

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そうして、放課後。

僕たちは町の楽器屋に来た。

「へぇ…」

壁にいっぱいエレキギターが並んである。

形もいっぱいあるんだなぁ…

「おい、ユキオ、これ見ろよ!」

タツが指差したそこには、でっかいVのような形のギターがあった。

「あれ、たぶんフライングVってギターなんだぜ。俺ちょっとギターについては昨日調べまくったからな。」

タツはそういって目をキラキラ輝かせていた。

ていうかすごい奇抜なデザインだなぁ…。

あんなん僕は絶対持てない。

あのギターに釘付けになっているタツを放って置いて、適当に楽器屋をブラブラしていた。

するとやけに汚い文字で

「男は低音!ベースコーナー!!」

と書かれた看板を見つけた。

このでかいギターみたいな楽器をもちながら、ベンチに座ってツナギを脱ぎかけている男の人はなんなんだろうか…

なんかイヤな予感がする…。

と、それに気をとられていると、

「いらっしゃいませー」

若い女の人の声で僕は振り返った。

そして僕は目を疑った。

その衝撃は今でも覚えている。

そこには、小柄で可愛らしく、まるで妖精のような可憐なお姉さんがいた。

「なにか探してるものございますか?」

「あ、いや、えっと…」

僕は非常に困った。まさかこんな可愛らしい店員さんがいるなんて。

元々タツの付き添いだしな…。

タツは、っと…あ、アイツすでに違う店員に声をかけられてやがる。

まずい。なんか気の利いた返しはないのか。

僕は慌てて周りを見渡し、「Fender Precision Bass」の文字が目に入った。

「プ、プレなんとかってのを探しにきたんですけど…」

「ああ!プレベですか!いいよねー、プレベ。」

お姉さんはニコニコしながら両手を前に合わせた。

か、可愛い…。

「お兄さんはベーシストなの?」

「あ、いえ、い、今から始めようかな~って、その、思いましてッ!!」

あ、不味い。なんかとんでもないことを口走ったような…。

「そうなんだ~。ベースはねぇ、いいよぉ~。」

そういって、ベースを構えるような格好をするお姉さん。

たまらん。

「あ、あのなんかオススメとかあったら…」

「初心者さんだったら、そうだな~…うん。やっぱこれがオススメかな。」

そういってお姉さんが壁にかかってあるベースを一本取り出した。

その赤い色のベースはなんだか、お姉さんにとてもよく似合っているような気がした。

「すげぇ…。」

「うふふ。すごいでしょ。」

そういってお姉さんは僕にベースを差し出した。

ズシリと結構重い。

「結構重いんですね。」

「そうなんだよ。だから私肩こっちゃって…」

「あ、お姉さんもベース弾くんですか。」

「うん。ちょっとね。」

えへへ、とちょっと照れながら言うお姉さん。

たまらん。

「ちょっと音出してみようっか。」

「へ?」

お姉さんは僕が持ってたベースを持って、何か黒く大きいスピーカーに繋がってるシールドをベースに繋げた。

「ちょっと待っててねー。」

お姉さんはそういって、ベースの頭の方の銀色のツマミを少し操作すると、

「はい、これでオッケー。」

俺は再びお姉さんからベースを受け取った。

「え、えと、どうしたら…。」

「まぁ、座って、座って。」

お姉さんが持ってきた小さな丸イスに座ると、

「えーと、はい、ピック。」

お姉さんがポケットから、三角の小さいプラスチックの板を取り出した。

ピックっていうのか…。

「これで、その一番上の弦を弾いてみて。」

「えーと、こう…かな?」

ボーン

「うおっ!」

僕はもう一回弾いてみる。

ボーン

「うふふ。」

「す、すげぇ…」

黒い大きいスピーカーから出る、ド迫力の低音。

体が震える。

「そう、これが、男の楽器「エレキベース」なのよ!」

お姉さんが拳を握って力説する。

「ちょっと貸して。」

俺はお姉さんにベースを渡すと、

…お姉さんの目の色が変わった。

さっきまで浮かべていたその可愛らしい笑みはなくなり、真剣な表情に。

でも、やっぱり可愛いなぁ…

と、そんなことを思っっていた矢先、

ボーン!!

と突然大きい音がしたかと思うと、次にはまた新しい音が出てきて、まるで打楽器のような音がスピーカーから溢れ出した。

お姉さんを見てみると、親指と中指を使って、ベースの弦を叩いたり引っ張ったりしている。

その姿はどこか野生的だった。

…凄い。

「ふぅ。どう?いいでしょ、この子。」

「凄いッス…正直、体が震えがとまりません。」

「あはは。褒めても楽器の値段は下がらないぞ~?」

「いや、お世辞じゃないですよ!あれって、なんかの曲なんですか?」

「えーっと、あれは一応私の入ってるバンドのオリジナルなんだ。」

「オリジナルなんすか!?」

ますます凄い。

「私、一応この辺のライブハウスとかに顔出してて…あっそうだ!」

お姉さんはポケットからオレンジのチケットを取り出した。

「ちょうど来週、ライブやるんだ。ホントはそれ友達のなんだけど、これなくなっちゃって…よかったら観にきてよ。」

俺はそのチケットを受け取った。

まさに天よりの宝札。

「必ず行きます。」
3

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