新学期
4月になってから、俺は初めてこの校庭に立った。地面には汚れた無数の桜の花びらが散らばっている。
校舎の正面玄関には新しいクラスをしらせる紙が貼り出されているらしく、そこには大勢の生徒が集まっていた。
生徒たちはクラス分けを見て、「よろしく」だとか、「うれしうぃっしゅ!」などと言い合って盛り上がっていた。
俺は、自分のクラスメートには興味がなく、
[3年4組]そこにあった自分の名前だけを確認するとそのまま
教室へ向けて足を運んだ。
教室に入ると既に数人の生徒がいて、
早速集まりあって一年間仲良くやっていこうと、集団を作っている。
その団結力には少し感心させられた。
しかし俺はそういう友情といった類いにはまるで興味がなく、
そのグループの輪に入る気はなかった。
今年も一人でやっていこう、と決めた。
その時だった。
「よお、岡山ぁ」
とても低くガラガラした、俺の名前を呼ぶ声に反応して顔を上げると、そこにはかなりの肥満体質の男が立っていて、俺を見下ろしていた。
「…ジャイアン、」
「岡山、どうやら今年も同じクラスのようだぜ、よろしくな」
なんだって?
これで3年連続じゃないか、冗談だろう。
ジャイアンは無駄な肉のついたニキビだらけの顔に笑みを浮かべた。
俺はこれ以上彼の顔を見ていたくなかったので
よろしく、それだけ言って俺は会話を終了させた。
しかし突然、俺は彼に学ランの胸倉を掴まれ彼の体に引き寄せられた。
その衝撃で机が倒れた。
彼のでっぱった腹が俺の体にあたる。
「そういえばよぉ、お前に紹介してもらった女、蒼井優似の」
「彼女がどうしたのさ?」
「ありゃ、あびる優似じゃねえか!」
そういって彼は俺の頬に拳をふるった。
俺は殴られた勢いで教室の床に倒れた。
「すこーしだけ顔が良いからって調子に乗りやがって」
ジャイアンはこのように突然怒り出す、
彼とまた同じクラスだなんて、本当に勘弁してほしい。
殴られた痛みで重くなった顔を上げ、倒れた机を起こした。
学ランの第1ボタンが壊れている事に気がついた、
仕方ないので1番下のボタンを付け替えた。
新学期早々ツイていない。
しかし、
これから先の1年間。
悪い事があったとしても、この程度のことだろう。
そう思った。