子だくさんな女がありました。女は十三人の娘をもっており、どの娘もきりょうがよくってかわいらしかったのですが、とりわけ三番目の娘の美しさは群を抜いていました。
けれども、三番目の娘には悩みがありました。それは肌にすみついた小さなのみのことです。こののみときたら、やることは悪さばかり、三番目の娘はほとほと困り果てていました。それで、三番目の娘はのみのいるところに風を送ってみたり、水をかけてみたりしましたが、のみにはいっこうに効きません。熱い薬をつけても、冷たい薬をつけても、悪さをやめるにはいっときのことで、すぐにまた三番目の娘を困らすようなことを始めるのです。
とうとう三番目の娘は、のみにむかって言いました。
「こにくたらしいのみだこと。そんなに悪さが好きなら、気が済むようにしたらいい」
のみはすっかりよろこんで、好き勝手を始めました。三番目の娘の肌はのみのせいで変色し、ぼろぼろになっていきます。そして、気づけば三番目の娘の肌は、のみがすめなくなるほど荒れてしまいました。
「こいつは困ったぞ」
のみはぶつくさつぶやきました。
「このままじゃ、おいらが死んでしまうじゃないか」
のみは三番目の娘の肌を元に戻そうと、あれこれ手をつくしましたが、こうなっては後の祭りです。すっかり醜くなった三番目の娘の肌の上で、のみはとうとう死んでしまいました。
三番目の娘はのみの死がいをつまみ上げると、
「自分で自分を殺すなんて、まったく妙な生き物もいたもんだ」
と、言いました。
そして、のみのいなくなった娘の肌は、すぐにまたその美しさを取り戻しました。