『一件のメールが届いています』

　
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　受信メール：一件

　送信者：yu-ka@xxx-xxxx-xxxx
　件名：アルバイト終わった？
　
　内容：終わってたら、お疲れ様。まだだったらごめん。
　　　　それと、今日は突然、本当にごめん。
　　　　本当はずっと、えぇと、その、大好きでした。
　　　　信じられないかもしれないけど。私も夢みたい。
　　　　ごめん、なんか上の文章、変だね。

　　　　明日なんだけど、文化祭の準備の都合で、
　　　　先生たちが会議するから、
　　　　生徒は学校でてなきゃいけないんだって。
　　　　だから明日の部活はおやすみです。
　　　　午後の話し合いの時に、猪口も聞いたと思うけど
　　　　一応書いておくね。

　　　　また明日。またね。
　　　　　
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　それは、やってはいけないこと。
　わかっていても、見てしまう。

　覗いてしまう。追いかけてしまう。
　不安にかられて、叫んでしまう。

　貴方は変わっていく。変わっていってしまう。
　あの日のこと、随分と忘れてしまったのね。
　
　貴方は変わっていく。
　どんなに辛かったことも忘却し、これから先の、
　限りなく広がる世界を夢見ている。

　戸惑いながら、時には間違い、傷つきながらも、
　力強く躍進し、前へと進んでいる。
　進みたくて仕方がないと感じている。
　
　ドコに行ってしまうの。

　私を置いていかないで。
　過去を不要としないで。
　煩わしく思わないで。
　
『――クロが一番だから。だからお願い、どこにも行かないで』
　
　貴方が、言ってくれたから。私は嬉しかったの。
　貴方が、心の底から、私だけを必要としてくれていた。
　貴方が、その手に抱いてくれた。外の世界を、見せてくれた。
　
『クロと一緒なら、怖くないね』

　そう。貴方といるから、怖くない。貴方がいるから、私は在る。
　ここに在り続ける。変わることなく、永遠に、在る。

『XXX-XX-XXXX』

　貴方が忘れてしまえば、私は消える。
　貴方が必要としなければ、私は消える。

　ねぇ。だから。
　どこにも行かないで。

　私から、彼を奪わないで。