トップに戻る

<< 前 次 >>

リデルタ山脈〜

単ページ   最大化   

 ヒウロ達はルミナス王国を目指すべく、リデルタ山脈を越えようとしていた。そしてその道のりも、頂上まで残り僅かという所まで来ていた。
 山を登っている最中に、ヒウロ達は様々な魔物と遭遇していた。リデルタ山脈の魔物は、一般的な見地からすれば手強い部類に入る。だが、さほど苦戦はしなかった。
 ヒウロ達は冒険者としては、すでに一人前だった。それもそのはずだ。ラゴラの町でのメイジの修行。ここでメイジが魔法使いとしての才能を開花させた。そして、スレルミア。ヒウロとオリアーは剣の腕はもちろん、強力な武器も得たのだ。並の魔物なら、負ける要素は無かった。
「頂上が見えてきました」
 先頭を歩くオリアーが口を開いた。多少、息切れはしているが、休憩が必要な程は疲れていない。
「もしかしたら、下にルミナスが見えるかもしれないな」
 杖を補助にして歩くメイジが言った。
 三人が頂上に辿り着いた。見晴らし台。空気が澄んでいる。眼下には、どこまでも続く草原が広がっていた。脇に森が数点。そして、草原の中で圧倒的な存在感を誇る城。
「メイジさん、オリアー、ルミナスだ」
 遠目から見ても分かる、堅固な城壁。その背丈は二階建ての家屋をゆうに越している。石造りだ。そして天をも貫く勢いの城の頂点。その四方を見晴らし用と思わしき塔が囲っていた。だが、何か様子がおかしい。
「……なんだ、あの煙は?」
 メイジが目をこらしながら言った。それを聞いた二人も、同じように目をこらす。ルミナスの城下町から煙があがっているようだ。
「鍛冶か何かの煙じゃ?」
「いや、違う。黒過ぎる」
 メイジの言う通りだった。何かが燃え上がっているような黒煙なのだ。不意に轟音が聞こえた。爆発音。だが、音が遠い。
「まさか」
 ヒウロが呟く。再び爆発音。瞬間、城壁が吹き飛ぶのが見えた。黒煙。黒い影。一つでは無い。多い。しかし、人ではない。魔物か、魔族か。
「ちっ。ルミナスが襲われてるぞっ」
 メイジが声を上げた。
「そんな、早く助けに行かないと!」
「急ぎましょう!」
 三人が駆けた。山道を駆け降りる。前方に二つの影。だが、足は止めない。
「トロルですッ」
 言いつつ、オリアーがエクスカリバーを抜く。白銀の刀身。
「時間が無い。さっさと決めるぞ、オリアーッ」
 右手。魔力を帯びている。走りながらだ。
「メラミッ」
 火球。エクスカリバーに乗り移る。業火。
「火炎斬りッ! ヒウロッ」
 斬る。一体のトロルの身体が燃え盛り、倒れた。オリアーが駆け去る。
「あぁ、任せろっ」
 言いつつ、稲妻の剣を振るう。もう一体のトロルの身体が真っ二つになった。
 尚も駆ける。時折、ルミナスの方から爆音、悲鳴が聞こえていた。襲撃されている。おそらく魔族だろう。ヒウロはそう思った。城には兵士が居るはずだが、どこまで太刀打ち出来るのか。魔族を相手に戦えるのか。戦えるとしたら、どの程度まで。様々な疑問が浮かんでくる。だが、ヒウロ達に出来る事は、とにかく駆ける事だった。急いでルミナスに向かう。
「ヒュ~。さすがディスカル様だ」
 リデルタ山脈の出口で、一人の魔族が待ち構えていた。時間がない。このままではルミナスが危ない。
44

すくにえ 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

<< 前 次 >>

トップに戻る