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第六回(ベニー作)

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 少年と、トウヤが出会って、次の日。
 
 夕方。トウヤは蔦谷高の前に仁王立ちでいる。
「キーリ」
 黒は白の名を呼んだ。
『はいはい』
「緊張感ねぇな……で、どうよ?」
『いるねぇ、うじゃうじゃ』
「だよな。感じるぜ」
 トウヤは、鋭い視線と、微かな笑顔を、ある教室に送った。
「悪魔の波動を、な」
『で』
「ん?」
 キーリは、滑稽なくらいに明るい口調で言う。
『残念なお知らせ。今日はキーリ君、そっちに行けません!』
「分かった」
『えぇ!?』
 予期していなかった反応だったのだろう。
「来れないんだろう? じゃあ、“コテツ”と“アン・ゼリカ”頼むわ」
『いやさ? そのぉ……なんで来れないとか、そのくらいは訊くべきじゃ……』
「かたな。つばさ」
『…もう一つ、ちょっと残念なお知らせ』
「あぁ?」
『今日は“コテツ”、送れません!』
「はぁ!?」
『こっちのリアクションのが大きい……』
「たりめーだろ! 武器なきゃ闘えないっつうの!!」
『ごめんよー。もっと強力にしようと思って、腕利きの刀鍛冶に預けたらさー……三日、かかるっ
て言われたんだー』
「中断して取り返せばいいじゃねえか」
『それが、頑固な、いかにも職人! って感じの人で……こだわり? みたいな』
「…どっちらけだ」
 トウヤは、でかい溜息をついた。
『でも、大丈夫! 新しい宝具をもらったんだよ! その名も“サン・マルコ”!!』
「サンマルコ? なんだそりゃ、初めて聞くな」
『これはスゴイよー。かンなり、スゴイよー』
「分かった分かった。じゃあ、早速送ってくれ。時間はそんなにな――」
 ずしん。
 空いた空間が、いきなりなくなった。
 空は、巨大な物体に覆われた。
『送ったよ! 超級特殊型大殲滅銃“サン・マルコ”ッ!!』
 それは、巨大な塊だった。
「バカヤロー!! なんだこれデカいわ!!」
『そりゃデカいよー。なんたって、【太陽を堕とす銃】だそうだからね!』
「こんなもんいらんわ! 宝具のテストがわりっても、限度があるだろ!」
『まあ、まあ。大丈夫だから。ね?』
「お前の大丈夫は、ときに信用ならない……」
『てゆーか、それ、自動発射だから』
「なに!?」
『あと三十秒で発射されるよ。銃口、悪魔の方に向けてね』
「お前、大概にしろよ……いつか殺されるぞ、俺に」
『だってさー! “コテツ”使えないからって代用の宝具要請したらこんなの送られてきてさー!
 データ取りたかったけど今回もダメっぽいよねー。ま、身から出た錆だよね! はははは!』
「今回、お前がこなかった理由、なんとなく分かったわ。お前は、小学生か!?」
 トウヤがそう叫んだ瞬間――星を穿つが如き衝撃が、“サン・マルコ”の周辺数キロに渡って炸
裂した。
 太い光線が、教室に一直線に向かっていく。

 光線の放たれた次の瞬間には、もうトウヤは天界に戻って来ていた。
「あ、トウヤお帰りー」
 トウヤは、今にもキーリに掴みかからんばかりばかりの形相であった。
「…怒ってる?」
 キーリは、首を傾げて。
 トウヤ、頷く。
「そう……まあ、そうだよね。今回はボクのミスだった。うん。認めるよ。ゴメンね、トウヤ」
「…俺に謝ってどうする。下では、たくさんの――」
 キーリは、トウヤを制するように、モニターを指差した。
 モニターは、“サン・マルコ”発動前と変わらない街並が映されていた。
「これは……」
「“サン・マルコ”は清らかなる破壊の光。撃ち壊すのは、不浄の存在のみ、だってさ」
「…だから、お前は送って……?」
 今、マニュアル読んだんだけどね。キーリは後ろを向き、トウヤに聞こえないよう、こそっと言
った。
「…よかった」
「すぐに帰ってきて正解だったね」
「なに?」
 キーリは笑って。
「だって、光線に当たったら、トウヤ死んでたじゃない」
 殴られた。
6

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