第二章「連載を始めようとしているあなたに」
この章は主に、まだ新都社で連載をしたことのない方に向けて書きます。既に連載を始めている方、連載予定のない方は読まずに飛ばしてもらって構いません。
「新都社は誰でも参加可能な自作漫画コミュニティサイトです」
新都社の採用情報・FAQのTOPにはこの文面が置かれています。これは間違いのないことです。絵や文章が下手な方でも、PCスキルのない人でも(登録後の試行錯誤で何となく理解出来る方ならば)、人格破綻者であっても参加可能です。「新都社に書き下ろしの作品に限る」などのルールはありますが、その辺りはFAQを熟読してください。
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※ 新都社に限らず、ネット上の投稿コミュニティに参加する際には気をつけた方がいいことがあります。存在を知ってすぐに参加するのではなく、一ヶ月でも一週間でもいいからそのコミュニティを観察し、「どのような行為が叩かれるのか」「作品発表から感想もらえるまでの流れはどんな感じなのか」といった、場の空気をなんとなく掴んでおくことです。「初心者だから知らなくて当たり前でしょ?」「質問にはさっさと答えてください」といった態度では、あなたの作品がどれだけ傑作であったとしても、まともな評価はしてもらえなくなります。
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新都社というサイトは、2ちゃんねるの「ニュー速VIP板」から誕生した当初とは違い、巨大なものとなっています。一日何万というPVがあり、新都社での連載経験を糧として(かどうかは知りませんが)プロデビューした人も何人か出ています。
作者の数も多ければ読者の数も多いのです。そして読者の目は肥えています。新都社を見に来るような人たちは当然漫画好きで、たくさんの商業漫画を読み込んでいることは元より、WEB漫画の傑作・秀作・良作・怪作を読み慣れています。
そこに、本当に漫画を描くのは初めて(あるいは絵すらまともに描くのは初めて)の人が、紙に鉛筆で描いた作品をデジカメで撮影してアップ、といった形で連載を始めてみるとしましょう。寄せられるコメントは
「読みにくい」
「写植(手書きで台詞や説明文を書くのではなく、PCで打ち込んだ文字を張ること)しろ」
「デジカメ撮影だと……?」
「紙を押さえてる指が可愛いです」
「絵が下手すぎる」
といった、そもそも内容にまで踏み込んでもらえないものが多くなります。
WEB漫画用に読みやすくカスタマイズされた漫画(見やすい絵柄、写植されて読みやすい台詞、細かすぎないコマ割り、適切な画像サイズ、明るさ調整など)のように「読まれやすくする工夫」を施していないと、一部の物好きな読者に目をつけられるだけで、一般的な読者からはそっぽを向かれます。
とにかく連載さえ始めれば、人気作家と同じ土俵に上がるわけだからどうにかなるだろう、という考えでは、限られた読者しか得ることは出来ません。
先ほどの例は「アナログ+デジカメ撮影」でしたが、「ペイント+マウス」というパターンもあります。こちらは写植もしやすいので、比較的読まれやすいです。しかし元々絵心のある人以外には、マウスでの漫画作りはなかなか難しいので、話力が必要となります。新都社黎明期にはこういった漫画でも十分人気を博すことが出来ていましたが(もちろん話が面白いことが前提です)、前述の通り目の肥えた現在の読者には読みにくかったり、既視感溢れたものになりがちです。絵よりも文字による説明や長台詞が多くなるなど、作者の思想が反映しやすいことで、読者の反感を買いやすくなったりもします。
読者はあなたの家族ではありません。同じクラスのみんなではありません。友人でも恋人でもありません。描けばとりあえず読んでもらえて、「面白かったよ」と作り笑いを浮かべながらお世辞を言ってくれる存在ではありません。読みやすくて面白い漫画がそこら中にあるのです。あなたの作品だけ特別扱いして立ち止まったりはしてくれません。
「頑張って描いたのに……」などと言ったところで無意味です。皆さん頑張っています。何かしら突出したところのない作品では人気作品になることはあり得ません。新都社には既に「絵も話もプロ級」「更新速度が異常に速い」「五年間毎週休まず連載を続けている」「商業誌ではとても見ることが出来ないようなマニアックな層にストライクな漫画」「可愛すぎる絵柄」「常人ではとても思いつかないようなアイデアをぽんぽんと出してくる」といった作品が溢れています。並の画力、並のストーリー、並の発想では、毎日更新されていく作品の洪水の中に埋もれてほとんど注目されず、賞賛も批判もないまま忘れられていくだけなのです。
ここまで読んでもまだあなたは連載を始めようという想いを持ち続けていられるでしょうか。
やめようと思ったのならそれで結構です。一読者に戻るなり、雑誌投稿に専念するなり、他のWEB漫画サイトを探すなりするとよいでしょう。
それでも描きたいんだ! 投稿したいんだ! という方に向けて、簡単な助言やツール紹介などをしておきます。
「最初は失敗するのは当たり前」
初めて漫画を描くにしろ、こういう場所での投稿が初めてにしろ、最初から何もかもうまくいく人なんていません。つまらない作品を投稿しても、完成させられずに投げ出しても、逮捕されたり殺されたりすることはありません。失敗を積み重ねることで「こうすると失敗する」という経験を得ることが出来ます。そうしているうちにいつの間にか、自然と面白いものを作れるようになっているかもしれません。
才能がないなら努力すればいい。センスがないなら磨けばいい。死ぬほどに悩み苦しみ、血の滲むような努力を重ね、描き続けてみる。それでも結局漫画や小説では評価を得られないかもしれませんが、努力した経験は人生においてマイナスになることはないはずです。
<ツール紹介など>
「これが正解」というのはありません。各人がいろいろ試してみて、自分に合ったものを見つけてください。使い方は各自検索して解説サイトなどを探してください。
・ペイントソフト
「AzPainter」「SAI」「 pixia」といった辺りがよく使われているようです。
・スキャナ
それほど高性能のスキャナでなくてもいいようです。
・ペンタブレット
ペンタブで描き慣れるまでには時間がかかるでしょう。最初のは使い潰すくらいのつもりで安いのでいいかもしれませんが、購入する前にいろいろ検索して検討してみてください。
・アナログ派の方へ
ペンとかインクとか紙とかいっぱい種類があるのでいろいろ試してみてください。
<読みやすくするために>
・画像サイズ
基本的に1ページ辺り800×600(縦×横)が読みやすいとされています。
・文字
紙で読むのとは違うので、文字だらけだと読むのに疲れます。手書きでも読みやすく丁寧ならば構いませんが、写植する場合と違い、文字を詰め込みすぎる傾向があるので気をつけてください。ただやはり写植をしていないと読者数は少なくなります。
・コマ割り
全体的にコマは大きめの方が見やすいです。ただし、大きいコマで背景が真っ白だと手抜き感が目立つという短所もあります。
・視線誘導
検索してください。
・その他起承転結、引きなど基本的な創作テクニックは、誰かに教えられて学ぶより、自ら試行錯誤を重ねていくうちに「ああ、こういうことか」と体得するのが理想的です。遠回りに思えるかもしれませんが、案外上達への近道だったりします。あっさりと身についたものはあっさりと身からこぼれます。
さあ、とりあえずは描きましょう、書きましょう。