こんばんは。
千世子です。
今日は桐子さんとビアレストランへ行ってきました。
先週は多忙な平日、驚きのイベント、失敗だらけの平日というハードな1週間だったので、布団に入ったままぼんやりテレビを見ていました。ドラマとか芸能人を悪く言う毒舌番組って、ついつい見てしまいますよね。
そうしてダラダラしていると、桐子さんからメールが来ました。
『今夜暇だったら、どこかご飯食べに行かない?』
休日でもたまにお誘いが来たりします。今日のお誘いはいつも以上に嬉しかったです。最近いろいろ考えすぎていて、胸焼けのような気分の悪さがありました。そこにこのような誘い。断るはずがありません。
『中華料理が食べたいです』
『脂っこいから却下。ビアレストランに予約したから、そこにしましょう』
以前、ビアレストランに行ったあとに交わした約束を、覚えてもらえていました。詳しくは5月22日の日記の最後を見てください。
……最初からビアレストランを予約していたかどうかは、気になるところです。
それからいそいそと準備をして、待ち合わせ場所に向かいました。10分前に着きましたがすでに桐子さんはいました。
普段のポニーテイルではなく、ばさりと髪を下ろして、メガネをかけていました。普段のポニーテールとコンタクトレンズは仕事モードで、リラックスモードのときはこのような格好らしいです。
「すみません、待ちましたか?」
「ううん、今来たところ」
何だか恋人のような会話をしつつ、ビアレストランへ。
なんと個室を予約してくれたようです! なんてステキなエスコートでしょうっ。
「個室のほうがくつろげるからね」
「はい、そうですねっ」
くつろぐ前にまずはドリンクです!
私は当然黒ビール、桐子さんはレモンサワー。チーズ盛り合わせやトマト、ウィンナーの盛り合わせとスモークサーモンも頼んで、そわそわと待ちます……
そしてドリンクがやってきましたっ。
「それじゃ、かんぱーい」
「おつかれさまでーす」
じゅるるるる。
「えへへへっ」
泡の部分のおいしさは以前語りましたので、今日は省略します……うーん、やっぱりおいしいですねっ。
黒ビールのおいしいさは当然ですが……自分を隠すことなく誰かと呑んでいると、思わず笑みがこぼれてしまいます。
泡がほとんどなくなったら、あとは勢いに任せて……
ごきゅごきゅ。
「うふふふ、おいしぃ」
ごきゅ、ごきゅん。
「えへへ」
もう空っぽです。
頼んでいたフードがやって来ました。次はもちろんハーフ&ハーフ。
……ちょっと呑むペースが早かったですね。
「千世子さぁ」
「はい?」
「その顔さぁ、もっと別の人に見せたほうがいいと思うなぁ」
どんな顔でしょうか……うーん。
さて、来ました来ました、ハーフ&ハーフです! 待っている間のスモークサーモンもおいしい!
こく、こく、コクッ。
「くぅ、ふぅぅぅぅっ!」
薫り高さ! シャキッとしたのどごし!
あと濃厚なチーズとジューシーなトマトが良いアクセントっ。
「おいしい、これはおいしいっ」
「テンション高いなぁ」
「そりゃあテンションも高くなりますっ」
ちびちびとレモンサワー片手にウィンナーを食べています。
こういうところのウィンナーは、種類が豊富で実にステキです。ああっ、マスタードが良いアクセントですっ。
「ところでさぁ」
ぽりぽり。
ウィンナーを齧っていると、桐子さんが言いました。
「はい?」
「最近さぁ、何かあった?」
ぽりぽ、り。
「な、なぜですか?」
「千世子ってさ、見てるとすぐわかるのよ。4月も心ここにあらず、というときがあったし」
4月……赤霧さんのときですね……
最近は……まあ、アレですね。うーん、悩みが顔に出ているんでしょうか……
「ええ、まあ、いろいろと……」
ここで、私は……山崎くんとのことを言うかどうか。少し悩みました。
そりゃあ、少しぐらい考えていました。相談しようかなーっと。ですが、プライベートなことを、職場の、先輩に言っていいものかどうか。迷惑ではないか。変に気を使われるようなことはないのか。
「実は……」
私は、言いました。正直、一人で考えるのは限界でしたし、相談相手もほしかったんです。
「……ということがありまして……」
「へぇ……」
桐子さんはレモンサワーを一口。私はウィンナーを食べ終えて、ハーフ&ハーフを一口。
……同性とのコイバナって、どうしてこう、恥ずかしいんでしょうね……
「桐子さんは、どう思いますか?」
「付き合っちゃえば?」
軽い! とても軽いです!
「そ、そんなっ、人事だと思ってっ」
「違うわよ」
このとき、桐子さんは人差し指を立てました。
「まず、『年下が無理』という理由。
年上がしっかりしている、年下は頼りない。これは悪い先入観。
これは私の経験だけど、年下でも私以上にしっかりしている男の子はいる。
山崎くんは、千世子も知っている通り、仕事もできるし、すごくしっかりしている。
それで断るというのは、少しもったいないと思う」
全部はしっかりと覚えていませんが、こんな感じのことを言っていました。
たしかにそうです。先入観うんぬんや、桐子さんの経験則を差し引いても、山崎くんはしっかりしている人です。
「次に『後輩としか意識していない』という理由。
これはね、そういうものなの。後輩、というポジションが悪いんじゃなくて、告白された側って、意識していなかった相手から告白されたら、そう思うもんよ……て、そんなことなかった?
相手を想う気持ちってのは、一緒にいること、過ごすこと、愛を育むこと。それで、関係が変わっていく……じゃなかった?」
たしかこんな感じでした。
あいにく、今までに告白されたときは、その相手には少しぐらい意識していたものです……なので、このようなケースは初めてなので何とも言えません。
「ただ……」
ここで、指を折りました。
「『憧れの勘違いによる恋愛感情』。これはあると思う。特に年下の男の子って、そういうものだしね」
ここだけ唯一、肯定。
「なのでっ」
ニヤリ。
時々見かける、何かを思いついたような、笑み。
「しばらく貸しなさい」
「……え?」
「最近仕事がきつくってさ、使える人間がほしいのよ。新人を一人割り振るからさぁ。
千世子から離れることで、それが単純に『憧れ』なのか、『恋愛感情』なのかがわかると思うのよ。
だから。
私に。
彼を。
貸しなさい」
単純に、人手がほしかっただけ、なのだと思います。
「はい、私は大丈夫です」
桐子さん、が山崎くんに興味があるようには感じません。
「山崎くんを、お願いします」
以上が今日の出来事でした。
逃げたつもりはありません……が、人によってはこれは逃げ、と思うかもしれませんね。
隣の席というのは、私には厳しすぎます……ちょっと距離を置ければいいな、と思います。
ビアレストランを出たあと、締めにラーメンを食べに行きました。どうしてお酒のあとはラーメンが食べたくなるんでしょうね。