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2010/05/29/23:36(土)「ビアレストラン再び」

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 こんばんは。
 千世子です。
 
 
 今日は桐子さんとビアレストランへ行ってきました。
 先週は多忙な平日、驚きのイベント、失敗だらけの平日というハードな1週間だったので、布団に入ったままぼんやりテレビを見ていました。ドラマとか芸能人を悪く言う毒舌番組って、ついつい見てしまいますよね。
 そうしてダラダラしていると、桐子さんからメールが来ました。
 
『今夜暇だったら、どこかご飯食べに行かない?』
 
 休日でもたまにお誘いが来たりします。今日のお誘いはいつも以上に嬉しかったです。最近いろいろ考えすぎていて、胸焼けのような気分の悪さがありました。そこにこのような誘い。断るはずがありません。
 
『中華料理が食べたいです』
『脂っこいから却下。ビアレストランに予約したから、そこにしましょう』
 
 以前、ビアレストランに行ったあとに交わした約束を、覚えてもらえていました。詳しくは5月22日の日記の最後を見てください。
 ……最初からビアレストランを予約していたかどうかは、気になるところです。
 
 
 それからいそいそと準備をして、待ち合わせ場所に向かいました。10分前に着きましたがすでに桐子さんはいました。
 普段のポニーテイルではなく、ばさりと髪を下ろして、メガネをかけていました。普段のポニーテールとコンタクトレンズは仕事モードで、リラックスモードのときはこのような格好らしいです。
 
「すみません、待ちましたか?」
「ううん、今来たところ」
 
 何だか恋人のような会話をしつつ、ビアレストランへ。
 なんと個室を予約してくれたようです! なんてステキなエスコートでしょうっ。
 
「個室のほうがくつろげるからね」
「はい、そうですねっ」
 
 くつろぐ前にまずはドリンクです!
 私は当然黒ビール、桐子さんはレモンサワー。チーズ盛り合わせやトマト、ウィンナーの盛り合わせとスモークサーモンも頼んで、そわそわと待ちます……
 そしてドリンクがやってきましたっ。
 
「それじゃ、かんぱーい」
「おつかれさまでーす」
 
 じゅるるるる。
 
「えへへへっ」
 
 泡の部分のおいしさは以前語りましたので、今日は省略します……うーん、やっぱりおいしいですねっ。
 黒ビールのおいしいさは当然ですが……自分を隠すことなく誰かと呑んでいると、思わず笑みがこぼれてしまいます。
 泡がほとんどなくなったら、あとは勢いに任せて……
 
 ごきゅごきゅ。
 
「うふふふ、おいしぃ」
 
 ごきゅ、ごきゅん。
 
「えへへ」
 
 もう空っぽです。
 頼んでいたフードがやって来ました。次はもちろんハーフ&ハーフ。
 ……ちょっと呑むペースが早かったですね。
 
「千世子さぁ」
「はい?」
「その顔さぁ、もっと別の人に見せたほうがいいと思うなぁ」
 
 どんな顔でしょうか……うーん。
 さて、来ました来ました、ハーフ&ハーフです! 待っている間のスモークサーモンもおいしい!
 
 こく、こく、コクッ。
 
「くぅ、ふぅぅぅぅっ!」
 
 薫り高さ! シャキッとしたのどごし!
 あと濃厚なチーズとジューシーなトマトが良いアクセントっ。
 
「おいしい、これはおいしいっ」
「テンション高いなぁ」
「そりゃあテンションも高くなりますっ」
 
 ちびちびとレモンサワー片手にウィンナーを食べています。
 こういうところのウィンナーは、種類が豊富で実にステキです。ああっ、マスタードが良いアクセントですっ。
 
「ところでさぁ」
 
 ぽりぽり。
 ウィンナーを齧っていると、桐子さんが言いました。
 
「はい?」
「最近さぁ、何かあった?」
 
 ぽりぽ、り。
 
「な、なぜですか?」
「千世子ってさ、見てるとすぐわかるのよ。4月も心ここにあらず、というときがあったし」
 
 4月……赤霧さんのときですね……
 最近は……まあ、アレですね。うーん、悩みが顔に出ているんでしょうか……
 
「ええ、まあ、いろいろと……」
 
 ここで、私は……山崎くんとのことを言うかどうか。少し悩みました。
 そりゃあ、少しぐらい考えていました。相談しようかなーっと。ですが、プライベートなことを、職場の、先輩に言っていいものかどうか。迷惑ではないか。変に気を使われるようなことはないのか。
 
「実は……」
 
 私は、言いました。正直、一人で考えるのは限界でしたし、相談相手もほしかったんです。
 
「……ということがありまして……」
「へぇ……」
 
 桐子さんはレモンサワーを一口。私はウィンナーを食べ終えて、ハーフ&ハーフを一口。
 ……同性とのコイバナって、どうしてこう、恥ずかしいんでしょうね……
 
「桐子さんは、どう思いますか?」
「付き合っちゃえば?」
 
 軽い! とても軽いです!
 
「そ、そんなっ、人事だと思ってっ」
「違うわよ」
 
 このとき、桐子さんは人差し指を立てました。
 
「まず、『年下が無理』という理由。
 年上がしっかりしている、年下は頼りない。これは悪い先入観。
 これは私の経験だけど、年下でも私以上にしっかりしている男の子はいる。
 山崎くんは、千世子も知っている通り、仕事もできるし、すごくしっかりしている。
 それで断るというのは、少しもったいないと思う」
 
 全部はしっかりと覚えていませんが、こんな感じのことを言っていました。
 たしかにそうです。先入観うんぬんや、桐子さんの経験則を差し引いても、山崎くんはしっかりしている人です。
 
「次に『後輩としか意識していない』という理由。
 これはね、そういうものなの。後輩、というポジションが悪いんじゃなくて、告白された側って、意識していなかった相手から告白されたら、そう思うもんよ……て、そんなことなかった?
 相手を想う気持ちってのは、一緒にいること、過ごすこと、愛を育むこと。それで、関係が変わっていく……じゃなかった?」
 
 たしかこんな感じでした。
 あいにく、今までに告白されたときは、その相手には少しぐらい意識していたものです……なので、このようなケースは初めてなので何とも言えません。
 
「ただ……」
 
 ここで、指を折りました。
 
「『憧れの勘違いによる恋愛感情』。これはあると思う。特に年下の男の子って、そういうものだしね」
 
 ここだけ唯一、肯定。
 
「なのでっ」
 
 ニヤリ。
 時々見かける、何かを思いついたような、笑み。
 
「しばらく貸しなさい」
「……え?」
 
「最近仕事がきつくってさ、使える人間がほしいのよ。新人を一人割り振るからさぁ。
 千世子から離れることで、それが単純に『憧れ』なのか、『恋愛感情』なのかがわかると思うのよ。
 
 だから。
 
 私に。
 
 彼を。
 
 貸しなさい」
 
 
 
 単純に、人手がほしかっただけ、なのだと思います。
 
「はい、私は大丈夫です」
 
 桐子さん、が山崎くんに興味があるようには感じません。
 
「山崎くんを、お願いします」
 
 
 
 
 
 以上が今日の出来事でした。
 逃げたつもりはありません……が、人によってはこれは逃げ、と思うかもしれませんね。
 
 隣の席というのは、私には厳しすぎます……ちょっと距離を置ければいいな、と思います。
 
 
 
 ビアレストランを出たあと、締めにラーメンを食べに行きました。どうしてお酒のあとはラーメンが食べたくなるんでしょうね。
 
 
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