こんばんは。
千世子です。
仕事の帰りに、赤霧酒店に行ってきました。
「最近、ペースが早いですね」
お会計をしているとき、何気なく訊かれました。
たしかに一昨日、昨日も来ました。しかも、必ず日本酒を一本買っています。
ですが、このペースは初めてというわけでもありません。過去にも何度かあったのですが、こんなことを訊かれたのは初めてでした。
「このところ、日本酒を呑むことが多いんですよ」
「そうなんですか?」
「冷酒やロックもいいですが、炭酸で割って呑むのがマイブームなんですよ」
まさかやけ酒で消費が激しい、なんて言えませんからね。それとなくごまかしました。でも、強めの日本酒の炭酸割りがおいしいのは本当ですよ?
「このあと、お時間ありますか?」
「え? あー、はい、大丈夫ですよ?」
「なら、奥、行きませんか?」
このときは気づきませんでした。いつも赤霧さんは「呑んで行きますか?」とか「奥、行きますか?」と、相手の都合をそれとなく気にしているのに……このときは誘っているような、そんな口調でした。
今日はそんな気分でもなかったのですが、特に断る理由もなかったので行くことにしました。
奥に入れば、買ったばかりのお酒と軽いおつまみが出てくる……このいつものことが、今日はありませんでした。
「千世子さん」
「はい?」
「僕で良ければ、お話し聞きますよ」
いつもの笑顔でした……それなのに、ギクリとしてしまいました。
「え、あの、どうして……?」
「購入のペースが早かったので、ちょっと心配だったんです。
余計なお世話かもと思いましたが、お酒は『命を削るカンナ』とも言いますからね。
……本当は、嫁さんが普段の雰囲気と違うことに気づいたんですけどね」
このとき私は、親切と余計なお世話って紙一重だなと思っていました。
「何だったら、僕じゃなくて嫁さんを呼んできますので」
相手は親切のつもりでも、私には余計なお世話に感じていました……ひどいですね。自分でも呆れるぐらいです。
ですが。
「……聞いて、もらえますか?」
私はすがりつきました。なりふりかまわず、相談しました。
昔のことは話さず、今の状況だけを話しました。なるべく客観的に話そうと思いましたが、どうしても自分優位な……行ってほしくないこと、相手がどう思っているのかわからない、とかを話しました。
「うーん、なるほど」
一通り話し終えて、私は出されたお茶(奥でお茶なんて初めてでした)を一口。赤霧さんはいつもの調子で何か考えているようでした。
「会社勤めとかしたことないしなぁ……」
「あはは……」
「でも、遠距離恋愛って、案外大丈夫ですよ?」
ちゃんと昔の話もしておけば良かったです……ですが、たしか赤霧さんも遠距離恋愛の末の結婚だったはずです。
「大丈夫なんでしょうか……?」
「ええ、とっておきの方法があるんです」
「とっておき?」
「はいっ」
「その彼氏さんのことを、信じてあげてください。
男性の肩を持つわけじゃありませんが、その彼氏さんは千世子さんのことを誰よりも愛しています。
そして、自分のことを、ちゃんと信じてください。
お互いがお互いを信じ合い、自分が自分を信じれば大丈夫ですよ」
「……それで、大丈夫なんですか?」
「はい、大丈夫です」
「本当ですか?」
「本当です」
経験から来る自信、のような感じでした。
ここで相談はおしまい。あとはいつものようにお酒とおつまみを頂きました。
これが今日の出来事でした。
いろいろ考えるところ、書きたいことはありますが、体調が良くないので、今日はもうおやすみします。