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クリスタル・フィッシュ

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   1

 おれたちがいつものように、薄汚い珈琲店で苦いだけのインスタントを啜っていると、窓ガラスに肌色の何かが激突した。それはスキンヘッドの男で、ガラスには血がへばりついていた。地面にずり落ちたそいつはへらへらと笑っていた。
「ずいぶん気分が良さそうだな」向かいの席に座っていたアクタガワが言った。彼女はなにも注文せずに煙草をふかしている。
「ああ」おれは言った。「何やらキメてるんじゃないの。あるいはすごくいいことでもあったか」
「おいあれ」
 アクタガワが指差したのは黒服の男たちだ。そいつらは地面で笑い続けているスキンヘッドに近寄ると回転式の拳銃を取り出し、頭を撃ち抜いた。黒塗りの車が停まって、男たちはトランクにスキンヘッドを入れると、何事もなかったかのように立ち去った。
 ケンカですらなさそうだ。あまり見てて面白いものではなかった。ぶん殴り合いがひょっとすると見られるかもしれないと期待したのだが、スキンヘッドはラリりすぎて、男たちは事務的すぎた。
 帝都に行きゃ、魔術師たちの決闘が見れたかもしれないのにな、と思った。特に古いタイプのやつらの戦いは面白い。最初はしかめつらしく名乗りを上げているのに、どいつも判で押したように汚い手を使い始めるのだ。最後はやぶれかぶれで魔術を乱射したり、やけになって見物人を攻撃し始めたりする。しかし、ここみたいな一地方都市じゃあ、そういったエンターテイメントを期待するほうがおかしい。
「それで」おれが言う。「何の話だったかな?」
「飯の話」とアクタガワ。「一日に何食食うかっていう話をしていたわけ。私は二食でお前は一食、これは少しばかり少ないんじゃないかっていう話を……」
「いや。いやちょっと待ってくれ。何の話もしてなかったんじゃないか? そうだ。おれらはずっと、ぼーっとしていたはずだよ」
「だから」アクタガワが言う。「そういう話を一時間くらい前にしていて、それを中断してずっと、なにもしていなかったんだ」
「一時間か……」
 それだけの時間何もしていなかったというのか。もっと有効な時間の使い方があるんじゃないか、とおれは他人事のように思った。
「人々が会話しているとき――例えばパーティとか、学校の教室とか。そういう場所で、いきなり全員が沈黙する瞬間ってあるだろ?」とアクタガワ。「そういうのを『天使が通る』っていうらしい」
「そいつは洒落た表現だ」おれは言った。
「だから、今天使が通ってたんだよ。このカフェの上空を。一時間ずっとだ。天使の行列が通ってたわけ」
「なるほど」
 おれはカップの底に残っていた珈琲を一気に飲んだ。おそろしく苦くて吐き気がした。口を押さえてうつむくと、汚い床が見えてさらに気分が悪くなった。そしておれの目が確かなら、黒いものが横切った……最悪の昆虫が。
「おっと」
 アクタガワが足でそいつを踏み潰した。「このゴキブリ野郎が。私の前にノコノコ出てきて、生きて帰ったゴキは一匹もいないんだ」
「お前はよく足で潰せるな」おれが感心したような、呆れたような口調で言うと、
「素足じゃないし、それに相手は昆虫だから」
 潰れたそいつを見てしまった。脚をばたばた動かし、そいつはもがいていた。おれはとっとと帰って寝たい気分になった。

   2

 家に帰って実際そうして、翌朝六時くらいに目が覚めた。普段より五時間くらい早く起きたことになる。体を起こして、一服した。
 窓の外を眺めると、ずっと向こうのビル街の辺りから黒い煙が上がっていた。火事か。あるいはどこかのイカれた若者が、車に火でもつけたか。
 テレビをつけようとしたがリモコンがなかったので、近づいて直に押した。ニュースが映ったが、アナウンサーの顔が緑色だった。このオンボロめ。
 どこかで起きた殺人事件のニュースが終わると、天気予報が始まった。今日は全国的に晴れらしい。しかしおれの気分は、どんよりと曇っていた。
 その日はなにもすることがなかったので、アクタガワを家に呼んでポーカーをしていた。ルールがよくわからないので、お互い独自の役を出し始め、ゲームは破綻した。
 アクタガワとは三年位前に、路上で倒れているのを介抱して以来の友人だが、素性は未だに良く知らない。どっかのB級バンドのグルーピーだとか、雑貨屋のバイトだとか、占い師だとか、いろいろやっていると言っていてそのどれもが嘘っぽかった。一日中なにをしているのか良くわからず、呼べばいつでもやって来た。酒をこよなく愛し、おれの家にあるアルコールの量で態度が変わった。
「この前」ビールをあおって彼女が言う。「気持ち悪いものを見た。魚の幽霊だ。いやバケモノだ」
「そいつはすごいな」
「アーケードを夜中歩いていると、そいつが屋根のあたりを飛んでいるんだよ。真っ黒な魚で、ギザギザの牙が口からはみ出ていた」
「帝都から出てきた魔術師どもの仕業じゃねえのかな。あいつらが何を考えてるかはわかんないしわかりたくもない……」
 帝都ではいくつもの企業がぶっ潰れ、治安も昔よりずっと悪くなっている。ガキどもが薬や、闇医者に二束三文でしてもらった脳手術のせいでおかしくなって、魔術師を殺したり、逆に殺されたりしている。ガキどもはいくつものチームを作って暇つぶしのためだけに、魔術師やそうじゃないやつらを殺す。もちろん冷酷非情な警備隊がそれを許すはずもなく、あっという間にひっとらえられる。ちょっとムシャクシャしたからといって、やばいチームに手を出し、その結果昨日のスキンヘッドのように殺されることだってままある。面倒ごとや痛いのが嫌いなので、おれはそういう危ないのには極力手を出さないつもりでいる。
 酒がなくなった後、おれたちは話すのも面倒になって早々に寝ることにした。

   3

 しかしなんというか、世の中にはほんとうにイカれたやつらがいるもんだと日々感心している。夜中に起きて散歩していたらゴミ袋を持ったオバちゃんが話しかけてきて、ダンナを殺したんだが燃えるごみの日に出していいのかと質問してきた。見ると袋から手が出ている。おれは多分それでいいと思いますよと言うと、早々にその場を立ち去った。それから不意に、焼死した人間はその後火葬するのかな? という疑問が浮かんできたので、帰ってアクタガワに聞くことにした。彼女はたぶんそうじゃないかと言うとまた寝てしまった。
 しばらくしてから起きると、ちょっとした事件があった。
 アクタガワの寝ているソファが血まみれになっていたのだ。おれが彼女に文句を言うと、傷口が開いただけだから気にしなくていいよと言われた。
 普段はぐしゃぐしゃの長髪で分からないが、彼女の額には三センチくらいの傷痕があってそれが開いたのだった。その傷の話は前に聞いたことがある。アクタガワは生まれたとき眼が三つあったらしい。第三の、どんよりと濁った目が額に。親御さんはそのまま気にしないで育てたのだが、本人は十四歳の誕生日のときやっぱり気になって、ケーキを切るナイフで抉り取ったらしい。それをケーキの上に投げ捨てて、当時付き合っていた彼氏の家まで歩いて行った。彼氏は驚いて救急車を呼んで搬送中ずっと、素人が下手なことするとロクな目にあわないと説教した。
 アクタガワによると第三の目が、夢を見ているときに開くことがあるらしい。だから彼女の家のベッドは茶色く固まった血でごわごわしている。寝ると鉄の臭いがして落ち着かないが、ヤニ臭いおれのベッドよりはましだと本人は言っている。
 おれは血がそれほど好きというわけではないので、また外出したくなった。床にまでアクタガワの額から出た血がこぼれていた。

   4

 それで、夜明け前のアーケードへ行っておれも魚の幽霊を見ようとしたが、それは見られなかった。しかしおかげで魔術師に会うことができたので、アクタガワにも感謝すべきか。
 そいつは小柄な男で、ひどく神経質そうな顔をしていた。おれが無人のアーケードでキョロキョロしていると話しかけてきて自分は魔術師だと言う。少し払ってくれれば良いものを見せてくれると。
「先に払わなきゃだめか?」おれは言った。
「ああ、だめだ」やつは頑なだった。
 おれはポケットに入っていた小銭をやつの手に乗せた。やつは顔をしかめて、もっとないのかと文句を言った。おれは煙草をぐしゃぐしゃの箱ごと渡そうとしたが、吸わないと断られた。
「じゃあ代わりに一曲歌うよ。放火の歌だ。空に煙が上がってるのを見て思いついたんだよ。『あいつの家に火をつけろー、火をつけて排除しろ、排除しなくちゃいけないんだ』」
 やつはおれの音程の外れた、やる気のない声にうんざりして魔術を見せてくれた。
 広げたやつの手の中に何かが現れた。
 城だった。
 よく見てくれとやつが言ったのでそうすると、中から何人もの兵隊が現れた。ミニチュアサイズながら、馬に乗り甲冑を着けた雄雄しい軍隊が、手のひらに整列した。
 すごいもんだなと思っていると、兵士たちは後から後から出てくる。まるで蟻の大群だ。そのくらいで良いよとおれは言ったが、魔術師は恐慌状態におちいっている。溢れる兵士たちは腕を伝わって男の体を進み、手に持った槍であちこちを刺し始めた。やつはその場に倒れ痛みにのたうち回った。やがて兵士たちは男の体全体を覆ってしまった。銀色の甲冑が血にまみれ光っている。一刺し一刺しは小さな威力でも力を合わせれば一人の人間を倒せるのだ。おれは童話に出てくる巨人の討伐を見た気になった。
 そしてどうやら死んだらしい男に背を向けて、おれはその場から立ち去った。死体から金を漁ろうかと思ったがやめた……
 家に戻るとアクタガワは帰っていた。ドアが開けっ放しだったので、泥棒に入られたらどうするんだ、と思ったが、考えてみれば盗まれるものはなにもない。おれはドアを開けたまま寝た。

   5

 翌日起きて朝飯を食おうとしたら、冷蔵庫の中にはソースと干からびたパンしかない……おれは何かを食いに外に出た。家から一分歩いたところで警備兵に話しかけられた。そいつは意地の悪そうな顔をした、背の高い男だった。おれは下手なことを言うと何をされるかわからないぞ、と思い無難に答えることにした。
「どこに住んでいるんだ」やつが聞いた。
「すぐそこですよ……何なら、案内しましょうか」
「結構。ところでお前は浮浪魔術師ではないだろうな。まさか、まさかとは思うが」
 やつがにやにや笑い出したのでおれは朝っぱらから(もう正午だが)嫌な気分になった。
「おれは単なる人畜無害の一市民ですよ」
「犯罪者がよくそう言うんだ」
 どうやらこいつは、おれをからかっているつもりらしい。もちろん相手が同じように自分をからかうことは許しはしない。そうしたならこいつは、暴力的な行為に訴えるつもりだ。そういうタイプの人間だとおれは勝手に断定した。早々にその場を立ち去りたかったがやつは妙な話を始めた。
「お前はふらふらとしているが、今がどういう時代かわかっているのか。西の果てには新大陸が見つかったんだぞ。何千人もの人間が希望を抱いてそこへ渡っているのにお前ときたらどうだ」
 冗談のつもりかと思って顔を見たらそいつは、至極真剣らしかった。眼が妙にぎらぎらしている。おれはいつまでこの兵士につき合わされるのだろうと思っていたが、「ちょっと急いでいるので失礼」などと言えば、とたんにケツを蹴り上げてきそうな感じだ。
 フロンティアについて言及したかと思えば、なんと今度は天動説を唱え始めた。おれが直立不動で聞いていると突然男はおれの背後を見やった。
 そこにいたのは、薄汚れた外套を纏った魔術師らしき男だ。警備兵の矛先がそちらに向いた。なにやら大声を出しながら魔術師に近づくと、彼はいきなり相手の顔面に拳を叩き込んだ。魔術師はその場に倒れこんだ。
 兵士はもう一発見舞うつもりだったが、うめいて自分の手を見た。指が二本なくなっていた。相手の魔術による反撃だろう。どうやらこれから一戦始まるらしいが、おれは腹が減っていたので、集まりつつある見物人を尻目に退散した。それにしてもなんであんなおかしい男が公務員をやっていられるんだ……まあどのカテゴリにもまともじゃないやつはいる。その比率が違うってだけの話だ……

   6

 昔は機械と魔術が共に栄えていたらしい。おれは実際に見たわけでないのでなんともいえないが。しかし徐々に魔術は衰えていった。原因は知らない。そして今みたいな機械じかけの都市郡と、その下層に住む貧乏人だけが残った。
 そういうわけでおれは今日も、恐ろしく安い定食を食いに、汚さでは町で一番の食堂へやって来た。なぜ掃除をしないのか疑問だが(そうすれば少しは客の入りは良くなるだろうし、勤労意欲も湧くだろうに)、まあ人のことを言える立場じゃない。うちの流し台の底からは得体の知れない臭いが漂っているし、きれい好きな人間が立ち入ったら卒倒しそうなほど風呂場は汚れているから……いや、飯の前に考えるのはやめよう……。
 やる気のない顔の店員が運んできた定食を食いながらテレビを見ていると、人工月のニュースをやっている。ずっと昔に帝都の魔術師が打ち上げた、直径五百メートルの月の腐敗が問題になっているそうだ。もともと短期間、魔術の媒介に使うために飛ばしたものをずっと放っておいたので、内部から腐り始めて崩落は時間の問題だという……下に住む市民の避難は完了し、今から打ち落とすらしいがどうもおれは嫌な予感がした。
 結果を見ずに家に帰って寝て起き、テレビを点けるとおれの予感が的中していた。月の内部に巣食っていたものがあふれ出して人々を襲っている。そいつらは見た目としては真っ黒いタールでできた巨大なゴキブリといったところだ……アクタガワでもさすがにこいつは踏み潰せないだろう。どうなるのかは分からないが気分が悪くなったので、おれは窓を開け本物の月を見ようとした。しかし雲で隠れていて、少しも見ることはできなかった。

   7

 都市は海に浮かぶ島のように、平原のど真ん中にぽつりぽつりと点在している。金属でできた巨大な、機械仕掛けの島だ。昔の人たちは国を全部ひとつの都市で覆い尽くして、機械と魔術の力で管理したかったらしいが、結局失敗した。いや、一度はうまくいきかけたが、なにかがあった。とてつもなく馬鹿げたなにかが。大昔のことなのでよくは知らないが、それは病気だという。しかし普通の病気じゃない。感染者の体だけにとどまらず、人格、そしてそいつのいる場所、空間そのものにも感染する病気だという。それがどうして、機械の町が壊れ平原に戻ってしまう原因となったのかは知らない。学校の授業ではろくに教えてくれないからだ。いや、おれがろくに聞いていなかっただけか。
 だから都市と都市の間の平原には、大昔の町の残骸が、植物に飲み込まれる形で残っている。
 おれはそれを見ようとアクタガワとともに、町の外へ行くことにした。
 都市を一歩出ると忌々しい悪ガキも、犯罪者もいない。やつらはほとんど、町から離れない。離れられない。なにが原因かは分からないが、やつらは建物の隙間で生きることを自分で望み続けている。一度たりとも都市から出たことのないやつも多い。そうする必要がないからだ。あるいは、それを恐れているから。
 しかしおれにはなにがそんなに怖いのか分からない。外に出ても、同じ世界が広がってるだけだ。空気は良いし、建物もない。うるさい隣人もいない。コンビニはないし、酒場もないが、そんなのは欲しかったら帰ればいいだけだ。
 あるとき酒を飲んだ帰り、外に出てみようとしたことがあった。都市の東外れで飲んでいたしもうすぐ夜明けだったので、町の外で地平線から昇る太陽を見よう、なんてロマンチックなことを誰かが言い出したのだ。
 しかし、一人だけそれをかたくなに拒むやつがいた。挙句暴れだす始末だったので諦めて帰ることにした。そいつがなぜ都市の外に出たがらなかったのかは未だに分からないが、おれの、不潔な自宅の浴室に入りたくない気持ちとは、恐らく異なるものだろう。
 明け方におれとアクタガワは町を出た。
外壁の長い階段を下りて行くとすぐに汗ばんできて、ひんやりとした朝の空気が心地良かった。
「本当にこの世界は馬鹿ばっかりだよな」アクタガワが言った。「いかれた頭のやつらがさらに狂おうと頑張ってるんだ。我々もそうじゃないか」
「どうだろうな」おれが答えた。「比較的まともな方だとは思うよ。いかれ魔術師や殺人鬼に比べたらさ。まあみんな、おんなじなのかも知れないけど。五十歩百歩ってやつ、どんぐりの背比べとも言うかな」
「ああ」
 下に着くなり、アクタガワは声を上げた。
「見ろ。魚の化け物だ。空を飛んでる」
 彼女は興奮したように言うがおれには何も見えなかった。
「お前、素面か? なんか飲んだ?」
「素面だよ。良く見ろって。お前はいつも目をちゃんと開けてないから、見えるものも見えなくなってるんだ」
 そう言って彼女はおれの両目を指でこじ開けた。
 その瞬間電気が走った。目玉の奥に、青白い火花が飛んだ。
 空には本当に魚が泳いでいた。巨大で、アクタガワに聞いた話とは違い、透き通った青色だった。
「本当にいたのか。お前の作り話だと思ってた」
「私は作り話はしばしばするがこれは真実だよ。アーケードで見たのと違うな。もっと意地の悪そうな顔をしていたのに」
「住んでる場所が違うからじゃないか。都市の中と外じゃ、水が違うってことなんじゃねえかな」
 魚は低い声で啼くと、東へ泳いでいった。昇ってくる太陽の方角へ。
「帰るか。今日はもうなにもする気になんないな」
「帰るのも面倒だ」おれは言った。「このままどっか別の町へ行っちまうか」
「そっちの方が面倒だよ」アクタガワが笑った。
おれたちは素直に、帰って寝ることにした。

   8

 その後アクタガワとは会わなくなった。考えてみれば、あいつが自分からおれの所に来たことは一度もなかった。いつもおれがあいつを呼んでいた。
会わなくなった理由は自分でも分からない。ただ、あいつが見ているものがおれの中に入り込んで来るかもしれないと、恐れたのかもしれない。おれの額にも新しい目が開くかもしれないと。あるいはただ、飽きただけかも。
 ソファも床も掃除しないので、あいつが流した血の染みはそのままだ。おれはその鉄の臭いを嗅ぐたび、あの青い透き通った魚を思い出す。あれから二度と見ることはできなかった。
 しばらくしてアクタガワが自殺したという噂を聞いた。嘘のような気がしたが、きっと本当なんだろう。あいつが自分でついた嘘にしては、ありきたりな感じがしたから。他人にそんな嘘を吐かれるほどの存在感もないし。
 おれは今日も昼過ぎに起きて、なにもすることのない一日にうんざりする。きっと明日もあさってもそうだろうし、浴室もひどく汚いままだろうから……


   了

4

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