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【像】

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 砂の海にぽつぽつと金色の影が浮かんでいる。

 わたしは熱を帯びたようにふわふわしながら近づいていく。



 膝をつき小さな花冠を握り締める老戦士。

 忍装束の不気味な鬼。

 痩せた赤い竜。

 サソリの尾で腕に刺青を入れている男。

 足がすべて逆に折れ曲がってしまった巨大な蟹。

 バラに埋もれる黒い蛾。

 ヘッドフォンをつけた異国の踊り子。

 翼を棘で絡め取られた翼馬。

 ほかにも、ほかにも。

 ほかにも――。



 無限にめぐる夢の砂漠に散らばる『像』はとても数え切れない。

 なにひとつとして同じものはなく、

 どれひとつとして失いたくない。

 砂でできた『像』は絶えず崩れ、積みあがり、瓦解し、復元する。

 泡のように、塵のように。






 こういう夢を毎晩見るものだから、わたしの夜は、あまり飽きない。
3

顎男 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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