賭博神話ゼブライト
【像】
砂の海にぽつぽつと金色の影が浮かんでいる。
わたしは熱を帯びたようにふわふわしながら近づいていく。
膝をつき小さな花冠を握り締める老戦士。
忍装束の不気味な鬼。
痩せた赤い竜。
サソリの尾で腕に刺青を入れている男。
足がすべて逆に折れ曲がってしまった巨大な蟹。
バラに埋もれる黒い蛾。
ヘッドフォンをつけた異国の踊り子。
翼を棘で絡め取られた翼馬。
ほかにも、ほかにも。
ほかにも――。
無限にめぐる夢の砂漠に散らばる『像』はとても数え切れない。
なにひとつとして同じものはなく、
どれひとつとして失いたくない。
砂でできた『像』は絶えず崩れ、積みあがり、瓦解し、復元する。
泡のように、塵のように。
こういう夢を毎晩見るものだから、わたしの夜は、あまり飽きない。