第十一話
家に帰ってからも気になっていたのは、小林に言われた一言だった。
彼女は、来ない。来るはずはない。
まず誘ってもいないし、僕は彼女のことを誘えるような間柄ではない。
でも、
僕は、何のためにこの歌を歌うんだ?
彼女以外の誰のために?
だったら、僕が今、するべきことは‥‥‥―
僕は今、彼女の家のドアの前にいる。
後悔しないように、僕が今できる、最大限をしよう。
そう決めた。だから‥‥
僕は彼女には会わず、家に帰ってきた。
ただ、一枚の手紙を残して。
「明日、うちの学校で学園祭があります。僕はバンド演奏をするんだけど、もし暇なんだったらぜひ来てほしい。君にどうしても聞いてほしいんです。演奏は午後三時から、体育館です。よろしくおねがいします。 水口」