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第十二話

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第十二話

学園祭二日目、僕はこの日も朝の集会が終わった後はずっと、屋上でぼーっと時間をつぶしていた。別に学園祭が嫌いなわけではない。みんながはしゃぎまわっているのをそんなに鬱陶しく思っているわけでもない。ただ、そこに僕の居場所がなかっただけだ。それはことさら悲しいことでもなく、僕はただ、そう実感していた。

昨日と同じ青空の下、今日は寝そべって空を眺めていた。青空は、昨日も今日も、変わらない。ゆっくりと形を変えていく細やかな雲の動きを、昨日とはうって変わって静かな気持ちで眺めていた。

昨日、彼女の家の前で自分に投げかけた問い。
「何のためにこの歌を歌うのか?」
僕は答えを知っている。
しかし、僕は同時に理解してしまっていることがある。
彼女は、たぶん、やってこない。
だったら、僕がこの歌を歌う意味は‥‥‥?


初めて会った夜、彼女がこちらへ歩いてきたときの表情。
並んで無言のまま吸った煙草の匂いと、そのときの彼女の横顔。
僕を夕飯に誘ってくれた彼女の一言。
ファミレスでの他愛もない会話と、その合間にちらつく、寂しげな表情。
別れ際のとびきりの笑顔。
呼ばれて振り返った時の、少し困惑したような、はにかみ顔。
男が尋ねてきた時の、驚きと困惑、期待の入り混じった表情。
男に弄ばれて漏らした喘ぎ声。
少し疲れた顔で、僕に謝る声。
僕の過ちに気づき、僕を抱き寄せたときの暖かさ。
彼女を犯した僕に向けられた、最後の笑顔。

一つ一つ思い返し、気づく。

僕はきっと、初めて、居場所が欲しいと思った。
そこで、彼女の笑顔を見て、彼女の悲しみを少しでも分かち合いたい。
そして、その願いはきっと叶わないということも。



だから‥‥‥


今、僕はこの歌を歌おう。


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