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彼が望むP/あの日、託されたもの ③

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 リストレインドーパントが身体から数本のロープを射出。アクセルの四肢を束縛しようとする。
「遅いッ!」
 だがアクセルはそれら全てを見切り、掴み取る。そして両腕で思い切り引きちぎった。
 リストレインのうめき声が響く。だがそれと同時に何かが風を切る音が。それはロープに繋がれて飛んできた大型の木材だった。さきほどのロープ攻撃はフェイク。二段攻撃だ。
 だが照井は回し蹴りで飛んできた木材を木端微塵にした。
「ひゃあっ」
 木材の破片が隅にいる亜樹子にもいくつか降りかかる。
「このままの状況で戦うのは危険か」
 アクセルは振り返ると廊下の行き止まりとなっている壁を見やる。
「所長、俺の横へ」
 そう言って亜樹子を移動させると、勢いよく壁を殴りつける。大きな音と共に人が通れるほどの穴が開いた。外の景色がそこからのぞいている。
 亜樹子を両手で持ち上げると、アクセルは穴から飛び出す。さきほどいた廊下は二階だったため、二人は数メートル落下。しかし、アクセルの高い身体能力で二人とも怪我をすることなく着地に成功した。
「所長は離れていろ」
 アクセルは亜樹子をおろすと、さきほどの穴を見上げた。少ししてリストレインがそこから姿を現した。同じように飛び降り、再びアクセルと対峙する。
「広い場所にくれば勝てると思ったか?」
「所長の身を案じただけだ。お前こそ俺に勝てると思ってるのか」
「笑わせるじゃないか。三日間監禁されて衰弱しているお前が俺に勝つ要素など皆無だ」
 リストレインはそう言って再びロープを射出。鞭のようにアクセルを狙う。
 どれも威力はたかが知れている。アクセルは臆することなくリストレインに近づく。飛び交う攻撃も時に回避、時に受け止めながら、着実に距離を詰める。
 残り五メートルほどに近づいたとき、ロープが真上から襲いかかる。避けるまでもないと思いアクセルは両手でガードをしようとする。だが、ロープが何かをくくりつけた状態で襲いかかってきたため、アクセルは慌てて横に転がりながら避けた。
 鈍い音とともに地面に亀裂が入る。ロープにくくりつけられていたのはアクセルの武器であるエンジンブレードだった。
「お前をさらったときにこいつも奪わせてもらったよ。重いがいい武器だ」
 そう言ってリストレインはエンジンブレードを使って再び攻撃を仕掛けてくる。ロープ単体での攻撃にくらべ、ブレードでの攻撃は一撃があまりにも重い。アクセルは慎重にならざるをえなかった。
 避けているうちに、縮めた距離が再び遠退く。さらに衰弱した身体での戦いだ。体力があっという間に尽きていく。
 そんなアクセルに攻撃が直撃するのは時間の問題だった。
「足が止まってるぞ」
 横薙ぎされたブレードが直撃。アクセルは思い切り吹き飛ぶ。衰弱した身体には致命的な一撃だった。地面に倒れたまま中々起き上がることができない。
「もうおねんねか? この一撃で終わらせてやる」
 リストレインはブレードを高く振りかぶる。止めの一撃にするつもりのようだ。
「俺は……ここで負けられない……! 今戦えるのは俺しかいない……!」
 アクセルはなんとか起き上がると、トライアルメモリを取り出す。『トライアル!』それを見てリストレインはブレードを振り下ろし始める。
「俺は……この街を守る仮面ライダーだ!」
 アクセルはトライアルメモリをアクセルドライバーに差しこんだ。そしてハンドルを回す。
『トライアル!』
 トライアルメモリについたランプが点灯。ボディカラーが黄色に。
 振り下ろされたブレードがアクセルに迫る。
 再びランプが点灯。ボディカラーが青色に。余分なアーマーが弾け飛び、スピードに特化したフォーム、アクセルトライアルに。
 ブレードが頭上まで迫る。だが寸での所でアクセルはそれを回避した。
「そんな姿もあったとはな……。だが、俺が勝つことに変わりはない」
 再びロープとブレードでの連続攻撃。だがスピードに特化したアクセルトライアルにとってそれらの攻撃を避けるのは造作もないことだった。
「まずは武器を返してもらうぞ」
 素早い動きでブレードがくくりつけられたロープに接近。そしてくくりつけられたままのブレードを手に取る。無理やりその刃でロープを切り裂き、ブレードを解放。再び己の武器に。
「ぐぅっ」
 リストレインはロープを切られた痛みに呻く。
「お前もここまでだ」
 アクセルはブレードの切っ先をリストレインに向けた。
「ふざけるんじゃない! この俺が……衰弱した貴様に負けるわけが……」
 リストレインはわなわなと身体を震わせると、短く咆哮する。すると身体から伸ばしたロープ全ての形状が変化。太さが増し、まるで触手のような形状になった。
「負けるわけがないんだ!」
 触手をしならせアクセルに攻撃。アクセルはそれらをブレードで受け止める。だが身体は大きく後ろにのけぞった。
「これがお前の本気というわけか。ならば――」
 アクセルはエンジンメモリをブレードに挿入。
『エンジン! マキシマムドライブ!』
「俺も全力でお前を倒す!」
 トライアルメモリをドライバーから外し、スイッチを押す。メモリに付いているタイマーがカウントを開始する。その瞬間、アクセルの身体は最大加速目にもとまらぬ速度で最後の攻撃。
 リストレインがまったく反応できない速度で触手に接近、そしてブレードで切断。それを高速で繰り返し、三秒ほどで全ての触手を切断した。さらに一秒でリストレインに肉薄。後はただひたすらT字状に斬撃を浴びせ続ける。
 数秒後、カウントをストップ。
『トライアル! マキシマムドライブ!』
 アクセルはトライアルメモリのタイマーを見た。
「九.一秒、それがお前の絶望までのタイムだ」
 幾重にも刻まれた斬撃によるダメージがリストレインの体内で爆発。メモリブレイク。変身は解除され、リストレインメモリは砕け散った。


 戦闘を終えると同時に、照井は変身を解除。そして地面に倒れ込んだ。身体に限界が来ていた状態でアクセルトライアルに変身。マキシマムドライブを発動したのだ。倒れるのは当たり前だった。
「竜君!」
 亜樹子は照井に駆け寄る。
「怪我はないか所長」
「私よりも竜君が……」
「俺は大丈夫。少し腹が減っているだけだ」
 などと言うものの、照井は飽きあがるのに必死だ。時間をかけてなんとか地面に座り込むことができた。
「それよりこれからどうするかだ。今行動できるのは俺たちだけだ」
「それなんだけど」
 亜樹子はバッグからフロッグポッドを取り出した。
「さっきこれで翔太郎君を消したドーパントたちを盗聴してきたの」
 フロッグポッドのスイッチを押す。盗聴した音声が流れだした。
『……面ライダーを消して風都をめちゃくちゃにした後は何をするつもりなんだ?』
『そ、そうですね。私をクビにした上司にお返しでも』
『それだけでいいのか? もっとお前のやりたい放題にできるんだぞ』
『今はそれだけで十分です』
『そうか。だがそれも早ければ今日中に実現してしまうぞ』
『あ、今日で七日目なんですね』
『ああ。今日を無事終えれば仮面ライダー、左翔太郎は二度とこの世界に戻ってこられない。監禁している照井竜も最悪殺してしまえばいいしな。今日でライダーが二人とも消える』
『今日から街をめちゃくちゃに……ん?』
『どうした。何かあったのか?』
『今変なところで物音が……』
 録音はそこで終わっていた。おそらく見つかる前にフロッグポッドは自分で判断して撤退したのだろう。
「最悪だな……」
 照井は拳を強く握りしめる。
「良く分からないが、今日中に左をなんとかしなければいけないらしい」
「どういうことなの……この世界に戻ってこられないって」
「言葉通りの意味だよ」
 突如、離れた場所から声が発せられた。
 照井と亜樹子は同時に声の方へと振り向く。するとそこには紫色のドーパントが立っていた。翔太郎を消したドーパントだ。
「左翔太郎は並行世界、パラレルワールドへ飛ばした。この俺のパラレルメモリの力でだ」
 パラレルドーパントは得意げに言い放った。
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