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9夜目 激闘・勝敗・ただ今戻りました。

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俺達はオフィス街に入り全く人気の大きな道路を歩いている。
街灯が等間隔で配置されていて俺達の行く手を静かに照らしていた。オフィスビルと言ってもこの人気の無さは異状だ。
たしかに夜更けではあるが普段なら夜勤の人や残業帰りの人が一人や二人いても可笑しくはない。
なのに人影はもちろん車ですら一台も見当たらないのだ。
もしかしたら向こうには俺達が今日攻めてくる事がバレているのかも知れない。いやバレているのだろうな。
しかしそんなことはどうでもいい。俺達は真っ向から挑んで勝つ。ただそれだけだ。
陸橋にさしかかった時、目の前に赤色の髪をした女の子が俺達の前に立っていた。
名前はたしか赤だと翠から聞いている。

赤「やっぱり、来たっスか。」

その赤は俺達に気づいたのかこちらに話しかけてくる。
そしてゆっくりと俺達に近づいて立ち止まる。

赤「やな予感はあたるもっスね。・・・翠、今ならまだ言い訳できるっスよ。こっちに戻ってくるっスよ。」

赤はそう言って翠の方を見る。
翠はゆっくりと赤を見つめて口を開いた。

翠「私は戻らない。あそこでは楓お姉様を救えないからな。」
赤「なんでっスか!!私たちは仲間じゃないっスか!!どうして裏切るっスか!!」
翠「っふ。仲間か・・・。赤、本当の仲間の絆はあんな所にはなかったよ。あったのは悲しく冷たい場所だ。私たちはただその中で寄り添い合っていただけに過ぎない。自分の弱いところを隠すようにな。そのような関係を仲間とは呼ばない。」
赤「僕には翠の言っていることがわからないいっスよ・・・・。」
翠「すぐにお前にもわかる。私と共に来い。」

翠はそう言って赤に手を出す。
赤は差し出された手をジッと見つめて口を開く。

赤「それは出来ないっス。もう、斉藤博士は動き出したっスよ。もう、誰も止められないっス。」
翠「私たちが止める。」
赤「そうっスか。デバイスオン・・・ロートランナー。」

赤がそう唱える。赤の足元にインラインスケートとのような靴が装着される。
驚きはしなかった。粋のコアデバイスが奪われた時からこうなることは分かっていたからだ。
白雪たちの強さの象徴である武器そは今や相手も扱えるようになったのだ。
相手の扱うデバイスのほうが俺達のはるか上の存在になってしまった。
そして俺達が勝てる可能性はなくなったかも知れない。だけど、止まれないのは俺達も同じだ。
こんなところで引くわけにはいかない。
百鬼が黙って一歩前へとでる。

百鬼「マスター、ここは百鬼が引き受けるであります。」
十紀人「わかった。」

俺たちは百鬼を置いて赤の横を通り再び歩みを進める。
そして二人は睨み合う。

百鬼「素直に通してくれるでありますね。」
赤「この先に行ったところでなにも変わらないっスよ。お前たちは僕達には勝てないっス。」
百鬼「百鬼は強いでありますよ。」
赤「結果はこの前と同じっス。なにも変わらないっス」
百鬼「デバイス・オン。・・・鬼金棒。」

百鬼の足と腕に甲冑が装備される。

百鬼「この前みたいには行かないであります。」
赤「口だけっス。」
百鬼「口だけか見せてやるであります。」

百鬼は拳を振り上げて赤に向かって走りだした。
それを見た赤はデバイスに付いているローラーを回して百鬼に向かって突進していく。
百鬼は拳を振り下ろし赤は足を蹴り上げる。
拳と蹴りがぶつかり合い周りに衝撃波が生まれて周りの街灯が割れてあたりが薄暗くなる。
紅く染まった月が二人をゆっくりと照らし出していた。
今二人の戦いは始まった。
・・


俺達はあのまままっすぐに歩いていた。
背後では時たま夜の雑音に混じって何かが壊れる音やらが遠くの方から聞こえてくる。
しかし、ここにいる誰もが振り替えろうとはしなかった。
心配でないかと言われればそんなはずはないと即答できるだろう。
今にも振り返って駆け出したい衝動にかられながら俺達は一歩一歩進んでいく。
百鬼なら大丈夫と何度も自分の心に言い聞かせる。
そして俺達の目の前に問題のオフィスビルが見えてきた。
入り口の前には無数のかつて百鬼が全部壊したはずの黒川によく似た人形機械兵器ドールズたちがずらりと並んでいた。
肉眼で簡単に数えて700~800はいるだろう。
その奥には喪服に身を包んだ小柄な少女いや幼女と言ったほうが適切かもしれない。その子が立っている。

白雪「思ったよりすごいな。」
十紀人「あぁ正直これだけを相手にしてたらいくら命があっても足りないな。」
翠「しかもその先には黒美が待ち構えている。」
十紀人「絶体絶命ってこのことを言うんだろうな。」
翠「それでも引く気はないのだろ?」
白雪・十紀人「もちろん。」
翠「黒美は私に任せてくれ。」
十紀人「頼めるな。」
翠「あぁ。そのかわり楓お姉様は任せたぞ。」
十紀人「あぁ。」
白雪「心得た。」

絶望的な状況なのだろう。
ドールズたちが俺達に向かって行進を始める。
それを見て俺達も構えをとる。
飛び出すタイミングを見計らって足に力を入れる。
刹那。
俺の真横を何かが通りずぎて進行してくるドールズの一体に突き刺さる。・・・クナイだ。
クナイが刺さったドールズの一体はその場に倒れて動かなくなる。

???「突撃を開始してください!!」

その声を共に忍者服に身を包んだ人たちが群となってドールズたちに突撃を仕掛けて乱戦状態となった。
振り返るとそこには短髪の・・けど俺たちがよく知っている女の子が立っていた。

十紀人「髪を切ったのか?」
静「はい。ちょっとしたイメージチェンジですよ。お兄ちゃん。」

静はゆっくりと歩き十紀人の前に跪くて口を開いた。

静「政府に仕える御庭番の静は死にました。ここいる私は道明家に仇なす全ての者からお守りする御庭番、そしてお兄ちゃんの妹である道明静です。」
十紀人「そうか。」

俺はそれ以上深く聞こうとはしなかった。
いや聞かなくてもわかる。
静は俺の家族・・・妹だったということだ。

静「ドールズは私たちが抑えます。お兄ちゃんたちは先に進んでください。」
十紀人「ありがとな。静。」
静「任せてください。・・・白雪さん。」
白雪「なんだ?」

進もうとした白雪を静は呼び止める。
そしてゆっくりと近づいて白雪にしかきこえないよ様に呟いた。

静「まだ諦めたわけではありませんが、お兄ちゃんをよろしくお願いします。」
白雪「ふふ、わかった。」

静の言った言葉のいに見はいろいろな意味が含まれている事を白雪は分かっている。
だから、こそ白雪はただわかったといったのだ。
そして先に行っている十紀人と翠の所に足を進める。

楓「いいのですか?貴方達まで私に付き合って。」
虎「先程も申しましたが我らのお頭は一人です。いいも悪いもありません。」
楓「そうですか。」
・・


刀が振り下ろされる音が虚しくあたりに響く。
地面には静の髪留めゴムがで束ねられた髪がふわりと落ちる。

虎「髪は女の命と言います。これで我らのお頭はここで命を落としました。」
静「虎。」
虎「そして我らも」

黒尽くめたちは自分の後ろで束ねられた髪を次々に切ってい地面へと捨てていく。
全員が捨て終わると再び全員が静に跪く。
そして虎はゆっくりと口を開いた。

虎「我らは道明静に仕える者。もとより政府などに仕えてなどおりません。ご命令を・・・。」
静「私は幸せ者ですね。・・・これより私たち御庭番の主である道明家をお守りします!!全員修羅となって道明家に仇なす者に天誅を下してください!!」
黒尽くめたち「御意!!」

そして黒尽くめたちはその場から消え去った。

静「私はお頭失格ですね。私情を持ち出してしまいました。」
虎「いいのではないでしょうか。我らとて人の子。抑えきれない感情の一つや二つくらい持ちあわせております。」
静「ありがとう。虎。」
虎「はい。」

虎は静を見てニッコリと笑ってみせた。
しかしすぐに顔を戻して前を見る。

静「えっ!?今虎が笑った。」
虎「笑ってなどおりません。お頭の見間違いです。」
静「いえ、ちゃんと見ました。虎もう一度笑ってください。」
虎「お断りします。先に行きます。」

そう言って虎は走り去る。

静「ふふふ。虎が照れているの初めて見ました。」

静はしっかりと虎の頬がほんのり赤くなるのを見たのだった。
そして、虎の後を追うように静も走りだした。
・・


静たちが切り開いてくれた道を通り抜けて俺達は黒美の待つ正面玄関へとたどり着く。
黒美はたどり着いた俺たちを見て口を開く。

黒美「・・・待って・・いた。」

翠は俺達より一歩前に出て木の棒を構える。

翠「お前の相手は私だ。」
黒美「どうでも・・・いい・・・どうせ・・・みんな・・・死ぬ。」
翠「十紀人殿、ここは私に任せて先にでくれ。」
十紀人「任せたぞ。」
翠「あぁ。」

俺と白雪は翠と離れてオフィスビルの中へと進む。

翠「なんだか久しぶりだな黒美。」
黒美「裏切・・・者」
翠「そう言われて仕方ないとは思っている。」
黒美「なら・・・大人しく・・・死ね。」
翠「残念ながらそれもできない話だ。」
黒美「なら・・・・殺す。」
翠「前の私だと思うなよ。」
黒美「それは・・・・こちらも・・・・同じ。デバイス・・・・オン・・・・鉈。」

黒美の手の中に鉈が現れる。

翠「まんまだな。もうちょっと名前とかを考えなかったのか?」
黒美「面倒・・・嫌い。」
翠「そうか。なら面倒ついでにおとなくしといてもらえないか?」
黒美「・・・断る。」
翠「そういうと思ったよ」
黒美「・・・影。」

翠の周りに黒美が創りだした人の形をした影たちが地面から起き上がるように現れる。
影に囲まれた翠は黒美を見て笑う。

黒美「何が・・・・おかしい。」
翠「いや、なんでもない。」
黒美「・・・・そう・・・・殺れ。」

黒美の合図で影たちは一斉に翠へと襲いかかる。
刹那。
翠は棒を大きく回して黒美の作った影を一瞬で消し去ってしまった。

黒美「!!!」

黒美はお腹を押さえてその場に蹲る。
顔だけを上げて翠を睨みつけた。

翠「言っただろう以前の私とは違うと。」
黒美「何を・・・・した。」
翠「お前の影の特性は知っている。そしてそれの対処法もな。」
黒美「生命力・・・での・・・攻撃」
翠「これを習得するのは辛かったぞ。」

そう言って翠は棒をクルクルと回して黒美へと近づいていく。

黒美「油断・・・・でも・・・・次は・・・・ない。」

黒美はゆっくりと立ち上がり翠を迎え撃つ。
翠は棒を振り下ろし黒美も鉈を振り下ろして二人の武器がぶつかり合う。

翠「第二ラウンドだな。」
・・


ビル内の正面ホールは薄暗く窓からは月の光が仕込んでホールを照らしていた。
あたりは静かで外での戦いの音が時折耳に届く程度だ。
ホールの先を見るといくつかのエレベータが見える。
あの中の左から三番目のエレベータが地下へと続くエレベータであることは出発する前に翠から聞かされていた。

十紀人「エレベーターはこの先か。」
白雪「そうだな。ご主人様は先に行っていてくれ。私は野暮用がある。」
十紀人「そうか。お前ともここで別れるのか。」
白雪「しばらくの間だ。今生の別れではないのだ・・そう悲しむな。」
十紀人「そうだな。・・・白雪、お前に頼みがある。______。」

そっと白雪の耳元で話してそっと離れる。

十紀人「じゃぁ行ってくる。」

白雪に背を向けて俺は歩き出そうとした。

白雪「ご主人様!!」

白雪は俺の腕を取って俺を呼び止める。
俺は白雪の方を向いた瞬間。
唇に柔らかいものが触れてそっと離れる。
そして頬をほんのりと赤めながら白雪は口を開いた。

白雪「私たちは勝つよな。ご主人様。」

俺は白雪の頭にそっと手を乗せって言った。

十紀人「当たり前だ。俺達は強い。」
白雪「あぁ。そうだな。」

そして俺は改めて左から三番目のエレベータに向いエレベータに乗り込む。
白雪はその姿が見えなくなるまで見送った。

白雪「戦場に向かう夫を見送る妻の心境は今の私と同じだろうか・・・っと言っても私も戦場の中にいるのだがな。」
楓「ご主人様は行かれましたか。」
白雪「覗き見とは趣味が悪いぞ楓。」」

そう言って白雪が振り返った先には紅葉柄の着物に身を包んだ楓が立っていた。
月明かりに照らされた楓の顔はどこか悲しそう見える。

楓「私がいることに気付いていらしたのにその言い草は意地悪だと思いませんか?」
白雪「そうかもな。・・・少し見ない間に随分と窶れたな。楓」
楓「そう見えますか?」
白雪「あぁ。」
楓「いいんですよ。これでやっとご主人様を保護できます。」
白雪「どういう事だ?」
楓「私たちの今回の任務はご主人様を博士の元へ送り込むことと貴方達の破壊です。」
白雪「・・・楓よ。争わずに済む方法はないのか?」
楓「ないです。貴方達は危険な存在なんです。」
白雪「今のお前たちもさほど変わらないだろ?」
楓「たしかに、そうですね。人間にしてコアデバイスの適合者。私の目が赤くなった理由です。最初は自分が選ばれた存在だと思っていました。けど、蓋を開けてみたら・・結果は貴方たち兵器となにも変わらない。お笑いじゃないですか・・・。力を欲したあまり私は人間で無くなってしまった。人から生命力を吸い上げて敵を抹殺するただの兵器。抗おうにも巨大な力の前ではそれにひれ伏すしかなないただの臆病者。そして、いつの間にか止まれなくなってしまった。今となっては貴方達と過ごした日々が夢のように思えます。・・・・私にはもう何をしていいかわからなくなってしまいました。」
白雪「哀れで掛ける言葉も見つからないな。」
楓「気休めなどいりません。だから私は兵器なら兵器らしく任務を真っ当します。・・・貴方たち旧デバイスを殺します。」
白雪「そうか。お前の心には悪党が住み着いてしまったのだな。なら私が目覚めさせてやる。この正義の味方がな。」
楓「デバイス・オン・・・菊一文字則宗」
白雪「デバイス・オン・・・雪風」

楓の手と白雪の手に一振づつ刀が握られる。
そしては二人は同時に踏み切り武器と武器が激しくぶつかり合う。

楓「素晴らしい剣速ですね。」
白雪「おまえもな。楓。」
・・


互いの攻撃が激しくぶつかり合う。

赤「たしかに前回より少しは強くなってるみたいっスね。」
百鬼「お前も少しはやるようになっていて安心したであります。」
赤「うっさいっスよ!!」

赤が百鬼の足を払いそのまま蹴り上げる。
百鬼は空中で体制を立て直して赤の蹴りを受け止める。

赤「ほんとに嫌になるくらいタフっすね。はあああぁぁぁぁぁぁ!!」
百鬼「っな!!」

赤は防御の上から大きく体と足を捻り足を振り抜いて地面へと叩きつける。

百鬼「今のは少し効いたでありますよ。」
赤「そろそろしめっスよ。」
百鬼「もうちょっと遊びに付き合ってくれると思ったでありますけどね。」

ゆっくりと百鬼は起き上がり再び構えを取る。

赤「僕は前よりはるかに強くなったっス。POSシステム起動・・・第3ゲート・・・解放・・・出力100%・・・安定。」
百鬼「やっと本気を出したでありますか。」
赤「これでももう終わりっスよ。」
百鬼「そうは簡単には破れないありますよ。百鬼甲!」

赤が百鬼の視界から消えて一瞬で真後ろに来る。
刹那。
赤の蹴りがしっかりと振り返る百鬼の顔面を捉える。
百鬼はのけぞり数メートルほど地面を足で引きずったが倒れないでそのまま赤を睨みつける。

赤「へぇ~今の攻撃を持ちこたえるっスか。」
百鬼「認めてやるであります。お前は強いであります。けど、百鬼のほうがもっと強いでありますよ。」
赤「一撃耐えた位で調子に乗らないほうがいいっスよ。次は止まらないっす!」

再び赤は百鬼の視界から消える。

百鬼「ちょこまかと鬱陶しいでありますね。」
赤「右っスよ!!」

今度は赤の蹴りは着実に百鬼を捉える。
百鬼は仰け反るだけで反撃に移ろうとはしない。
赤は容赦なく次々と百鬼に攻撃を続ける。
百鬼はそれをただ耐えるだけだった。

赤「やっぱり口だけっスね。手も足も出ないじゃないっスか。」
百鬼「・・・・」

赤が姿を現して百鬼を睨みつける。
百鬼は地面に向かってつばを吐く。
その唾は赤色に染まっていた。

赤「次で抵抗も出来ないまま終わりっスよ。」
百鬼「どんな攻撃も受け止めてやるであります。」
赤「そういことは僕に一発でも攻撃を当ててから言ってほしいっスよ」
百鬼「決着は一瞬で付くでありますよ。」
赤「無抵抗のまま死ぬのが関の山っスよ。・・・・・もういいっス、こんなの全然楽しくないっス。僕が見てない間にどこえでも逃げるがいいっスよ。上には跡形もなく死んだと伝えておくっスよ」

そう言った赤は構えを解いてシッシとういように手を降った。

百鬼「理解しかねるでありますね。百鬼が逃げる理由が見つからないであります。」
赤「そうっスか。せっかく逃がしてあげようと思ったっスが残念っス・・・・もう止まれないっスよ!!」

赤は一瞬で真横に回りこみ腹部に蹴りを放つ。

百鬼「もう、見切ったであります。」
赤「なっ!!」

赤の蹴りは百鬼の腹部に届くことはなかった。
何故なら百鬼が赤の足首をしっかりと掴んでいるからだ・・・。
赤は驚きのあまり目を見開く。
百鬼は大きく振りかぶって柔道でいう一本背負いに様に赤を投げ飛ばす。
赤は地面に叩きつけられて一回大きくバウンドしてから地面を転がった。

百鬼「考えるな感じろであります。」

赤はゆっくりと立ち上がり口元から流れだした血を拭く。

赤「マグレっス。もっと早くすれば捉えらけないっス!!」
百鬼「お前の攻撃は軽いでありますから捉える必要などないであります。百鬼が全部受け止めてあげるでありますよ。」
赤「減らず口を!!!!」

赤が消え百鬼のまたも後ろに現れる。
しかし百鬼は赤攻撃をただ受け入れるように食らうだけだった。
腹部、太もも、顎、顔面。目にも留まらぬ速さで至る所に赤は容赦無く攻撃を当てる。

赤「これで最後っス」
百鬼「・・・」

赤は百鬼と十分距離を取ったところに現れてそういった。
刹那。
百鬼の目の前にソニックブームが起きて周りのビルのガラスが粉々に割れる。
そして次の瞬間、あたりに轟くほどの衝撃音がして百鬼の体はくの字に曲がり吹き飛んでビルを3棟ほど突き破って止まった。
百鬼の体は瓦礫の下敷きになっりピクリとも動かない。

赤「この前とは比べもにならないくらいの威力っスよ。どうっスか音速からの蹴りは?」

赤が瓦礫の下敷きになっている百鬼に目掛けてそう言い放った。
百鬼は沈黙したままだった。

赤「やっぱり口だけだったスか。あとはコアデバイスを壊すだけっスね。」

赤は一歩一歩百鬼へと近づいていく。
そして瓦礫に埋まった百鬼の頭をつかみ引っ張り上げる。
百鬼は眠っているよに目を閉じたまま動かないでいた。

赤「これで終わりっス。」

大きく拳を振り上げて百鬼の胸目がけて拳を振り下ろす。
しかし、赤の拳は百鬼の胸に当たるか当たらないかのところで止まっていた。

百鬼「今のはなかなにいい蹴りであったであります。」
赤「そんな・・まさか・・・アレを食らって・・・。」

百鬼の手は赤が振り下ろした拳の手首をしっかりと捕まえていた。

百鬼「たしかに。百鬼の目の止まらぬ速さで動けるかも知れないであります。けど、それだけであります。」

そう言って百鬼は赤の手首をはなす。
赤はすぐにバックステップをして百鬼から距離を取る。

百鬼「次はこっちから行くっスであります。」
赤「五月蝿いっスよ!!なら倒れるまで音速から蹴りを食らわせるまでっス!!!」
百鬼「何度やっても無駄っスよであります。」

百鬼の言葉も聞かず赤の姿が消えた。
先ほどと同じようにソニックブームが起きる。
そして轟く程の衝撃音。

赤「う・・・そ・・・。」

赤の攻撃を百鬼はしっかりと受け止めていた。

百鬼「もう、終わりでありますか?」
赤「まだっス!!」

再び赤は距離を取り音速の蹴りを百鬼に食らわそうとするが百鬼はそれをことごとく止めてしまう。
上から下から後ろから左右から何度繰り返しても赤の攻撃は百鬼に止められていく。

赤「なんでっスか!!なんで止められるっスか!!」
百鬼「考えている間は無理であります。感じるだけであります。」
赤「意味わかんないっスよ!!!」

また、赤の蹴りは百鬼に止められた。
百鬼は驚き戸惑っている赤の手首をつかむ。

百鬼「百鬼が教えてやるであります。攻撃って言うのは数当てればいいってもんじゃないであります。一発。たった一発。思いと力のかぎりの一発でいいでありますよ。」
赤「離せっス!!」

赤は逃れるように掴まれている腕を振ったり百鬼を蹴ったり殴ったりするが百鬼は手首を離そうとなはなかった。

百鬼「今まで百鬼は本気をだしたことがないであります。百鬼が本気を出せばマスターの生命力を全て食い尽くしてしまうからであります。けど今なら出せるであります。」
赤「離せっス!!離せっス!!」
百鬼「マスター思いっきり貰うでありますよ!!!!」

そう言って百鬼はゆっくりと腕を引いていく。
それと同時に百鬼の引いた腕に付いている甲冑が変形をする。
腕の甲冑にブースターの様な物が付きキュウィーーンと言うジェット機が飛び出しそうな音がしてブースターの穴が光だした。

赤「離せっス!!」
百鬼「準備はいいでありますか?」
赤「やめろっス」

赤は怯えるようにして百鬼を見る。
ブースターから蒼色の炎が轟音と共に激しく吹き出して百鬼の腕は燃え盛る。

百鬼「行くでありますよ!鬼力・鬼爆掌!!」

刹那。
炎の噴射がより一層激しくなるのと共に繰り出された瞬間、半径10メートルにあるビルの窓ガラスや街灯やらが粉々に砕け散る。
百鬼は技の衝撃でのけぞり赤は吹き飛んでビルを5棟ほど突き破ってどこかの壁へとぶち当たりその場に倒れこむ。
赤が吹き飛んで行ったと思われる道のりにはところどころ青白い炎が上がっていてゆっくりと煙を出している。

百鬼「やっぱり、すごい威力であります。そしてお腹が減るでありますね。」

そう言って百鬼はその場に倒れるよに大の字で寝転がった。
あたりは災害が起きたように至るとこひび割れや大きな穴が開いている。
それだけでこの戦いがどれだけ激しいものかが分かる。

百鬼「少し休んでから行くでありますよ。」

百鬼と赤の戦いは百鬼の勝ちで終わった。
・・


翠「きりがないな。」
黒美「影」
翠「はっ!!」
黒美「消」

黒美が作り出した影は翠の攻撃が当たるか当たらないかのところで消えて再び姿をあらわす。
さっきからそれの繰り返しで黒美は攻めてるでもなく逃げるでもなく。
影を使って翠と一定の距離を保っている。

翠「このままではこっちの体力が削られていくだけだな。」
黒美「・・・影。」
翠「っく!!」

影の攻撃を翠は転がりながら避ける。

翠「かと言って止まると影が攻撃してくるか・・・。消耗戦はあいつに有利だな。・・・仕掛けてみるか。」

翠は腰を落として影が攻めて来るのを待った。

黒美「影」
翠「来た。」

影の攻撃をすり抜けて翠は一直線に黒美へを向かう。
そして黒美に向かって棒を振り上げる。
黒美は鉈を振り下ろした。
鉈は棒の先端を切り落として翠の棒を短くする。
翠はすぐに後退して距離を取って棒を元の長さに戻す。

翠「これもだめか・・」
黒美「お前は・・・私に・・・勝てない。」
翠「まだまだ、これからだ。」
黒美「そう・・・・影。」

影が翠に向かって突進して来る。

翠「これならどうだ!!伸びろ!!」
黒美「消・・・。」
翠「狙いはお前だ!!」
黒美「!!」

伸びた棒が黒美目掛けて振り下ろされる。
黒美はとっさに鉈を振り上げて伸びてきた棒を叩き切る。

翠「うん。致命的に私と黒美の武器では相性が悪いな。」

などと冷静な判断をしてみるが戦況が変わるわけでもない。

黒美「いくら・・・やっても・・・無駄。」
翠「だろうな。けど、負けるわけにはいかない。」
黒美「そう・・・遊びは・・・終わり。」
翠「そうだな私もそう思っていたと頃だ。」
黒美「POSシステム・・・起動・・・第三ゲート・・・解放・・・出力50%・・・・安定。」
翠「POSシステム起動・・・第二ゲート解放・・・出力60%・・・・・・安定。」
黒美「・・・影たち・・・行け。」
翠「来い!!」

黒美の周りに3体の人形をした影が浮かび上がる。
そして同時に跳びかかる。

翠「っく!!」

翠は次々に襲いかかてくる影に攻撃をくわえるが、攻撃が当たるか当たらないかのところで影は消えてまたすぐに現れる。
やられはしないがこのままではこちらの体力が削られて行くばかりだ。
それにあまり今の状態を保っていて自分の生命力が亡くなると他人の生命力を吸い上げてしう。
それだけは避けなければならない。
翠は一旦、黒美と影から距離を取る。

黒美「逃げて・・・ばかり・・。」
翠「お前も自分で戦ったらどうだ?」
黒美「面倒・・・嫌い。」

たしかに黒美は最初にいたあの場所から一歩も動いていない。

翠「だったら。伸びろ!!」

棒を大きく振りかぶって黒美目掛けて振り抜く。

黒美「無駄。」

伸びた棒はまたしても黒美の鉈によってきり落とされる。

翠「無駄じゃない!!何度てもやってやる!伸びろ!!伸びろ!!伸びろ!!」
黒美「・・・無駄・・・無駄・・・無駄。」

黒美の周りには翠の切り落とされた棒が虚しく地面を転がっていく。

翠「はぁ~はぁ~はぁ~」
黒美「影。」
翠「っく!!しまった!」

突如、後ろに現れた。影が攻撃を仕掛けてくる。
なんとか防御は出来たものの体制を崩して大きく仰け反るはめとなった。

黒美「終わり。」

その瞬間を黒美は逃さなかった。
影の攻撃が翠を襲う。

翠「ぐはっ!!」

攻撃をくらい翠は地面を転がる。
そして翠の武器である棒が離れたとこを転がっていく。

黒美「お前の・・・負け・・・あの・・・武器が・・・なかったら・・・怖く・・・ない。」
翠「っく。」

翠はそれでも立ち上がり武器を取るために走ろうとする。
しかし、その目の前に影が三体も立ちはだかるのだ。

翠「まだ負けてない。私は武術もできる!!はああぁぁぁぁ!!」

翠の攻撃は影に当たった。
しかし、影は歪むだけで何の意味もない。

黒美「無駄・・・行け。」

黒美の合図で影が翠を殴りしける。
翠の防御も虚しく簡単に防御が弾かれる。
三位一体の攻撃とはこのことだろう。
一体に攻撃の後に有無を言わさぬ二体目、三体目と攻撃の嵐。
翠は何も防御を取れず大人しく攻撃を食らうしかなかった。
そして三体の同時攻撃を食らい黒美の前に転がり倒れる。
体の至る所が傷だらけで痛々しい姿となっていた。

翠「・・・っく。まだだ。」

翠は地面を這いずりながら黒美へと近づいて行き手を伸ばす。

黒美「これで・・・おしまい。」

黒美は鉈振り上げて一気に振り下ろす。
ザクっという音があたりに響く。
・・・
・・・
黒美の鉈は翠の左腕に深々と刺さっていた。
翠はとっさに左腕を上げてわざと黒美にそれを切らせた。

翠「腕の一本や二本くれてやる。」
黒美「まだ・・・動けた・・・か」
翠「黒美。言っただろう私は負けないと・・・。」
黒美「!!」

翠の右手は黒美の足元に転がる無数の木の棒に触れていた。

翠「お前の負けだ!!木行吸々牢術!!」

刹那。
木の棒たちが急成長をして黒美を縛り上げていく。
黒美は逃げようとするが木の成長のほうが早く黒美は身動きがとれない状態になった。

翠「どうだ。それでは動けないだろ。この牢獄はお前の生命力を吸って成長していくからお前の得意の影も操れないだろ。」
黒美「・・・離せ」
翠「断る。この戦いが終わるまでそこで大人しくしているんだなぁ。っく!!」

翠は腕から鉈を抜いて地面に捨てる。
鉈すぐに消えて翠は傷口を止血する。
黒美対翠の対決は翠の勝利で幕を閉じた。
・・


楓「腕を上げましたね。」
白雪「おまえもな。」

鍔迫り合いしから互いに離れる。

楓「離れ際に3撃ですか。けど・・・」

白雪の頬に切り傷ができてそこから血が流れる。

白雪「お前も4撃か・・。」

楓の頬にも切り傷が出来る。

楓「・・・・。見誤りましたか。」
白雪「あまり、自分の力を過剰評価すると足元をすくわれるぞ。」
楓「過剰評価じゃありません。事実です。」
白雪「そうか。ならまずはその天狗の鼻を私が折ってやろう。」
楓「貴方がどう足掻こうと結果は変わりません。」
白雪「楓。お前はご主人様と日々を共にして何を学んだ?」
楓「・・・。」
白雪「お前が何も学んでいないなら。お前は私には勝てない。」
楓「戯言を!!」

斬りつけてくる楓を白雪ははじき返して逆に斬りつける。
しかし、斬撃が当たるか当たらないかのところで楓はかわして白雪の斬撃は空を切った。

白雪「外したか。」
楓「そのような剣速では私は捉えられませんよ。」
白雪「言ってくれるな。」
楓「そろそろお喋りも終にしましょうか。」
白雪「私もそう思っていたところだ。」

楓は静かに目を閉じる。

楓「POSシステム起動・・・第五ゲート解放・・・出力100%・・・・安定。」
白雪「ほぉ。まさか第五ゲートの100%まで引き出せるようになっているとはな。しかし、それでは1分ももたんだろ。」
楓「それは旧デバイスのこと。今私が付けているデバイスはあんな物とは比べ物になりません。私専用の私だけのデバイス。」

そう言って楓は自分の胸元を切なそうに抱きしまめる。

白雪「なるほどな。これはやっかいな相手だな。」
楓「白雪さんも本気を出したろどうです?」
白雪「・・・いいだろう。ご主人様、力を存分に借りるぞ。」

白雪が瞳を閉じて刀を自分の前にかざす。
そして一呼吸後に目を開けると銀色に輝く瞳に楓が映り出される。

楓「御覚悟の方を・・。」
白雪「道明十紀人のデバイス、白雪。ご主人様の願いのため推して参る!!」

楓と白雪は同時に飛び出して刀と刀を激しくぶつかり合わせた。
お互い渾身の力を込めた一撃を同時に振るい続ける。
やや白雪が押され始めているように見えるが、まだまだ伯仲していると言えた。
刀と刀がぶつかり合うたびに火花が暗いフロアーを一瞬だけ明るくしる。

楓「こんなモノですか!!!」

楓の剣速が速さを増して行く。
白雪は一方的な防戦を強いられじりじりと後退を余儀なくされた。
徐々に劣勢に追い込まれた白雪に、急所は避けているものの傷がいくつも刻まれていく。

白雪「っく!」

尚も楓の攻撃は留まることを知らないとういように剣速が上がっていく。
そして、ついに防御をしていた刀を弾かれて無謀になってしまう。

楓「鎌鼬!!」

楓の攻撃を受けて白雪は吹き飛んでガラスを突き破って中庭へと放り出さてる。

楓「流石ですね。今の攻撃をとっさに氷の壁でガードするとは。」

白雪はゆっくりと起き上がり楓を見る。
白雪の口元から赤色の液体が流れて地面へを落ちる。

白雪「カードしてもこの威力か・・。」
楓「行きます!!」
白雪「来い!!」

楓の一振りを紙一重で逃れて、白雪は一気に間合いを詰める。

楓「甘いです。」
白雪「っく!!」

かわせた筈の斬撃は何故か白雪の左腕を斬りつけた。
白雪はとっさに飛び退いて再び楓と距離を取る。

楓「燕返しとでも言いましょか。」

楓はそう言いながら刀に付いた血を拭う。

白雪「斬り下げて間髪入れずに斬り上げる技か」
楓「そうです。ご慧眼恐れ入りますが、その左腕ではもはや私の剣速に追いつくことは不可能でしょうね」
白雪「知れた事。もとよりお前と剣速の争うなどしていない。・・・氷夷結界」

あたりの温度が急激に下がり吐く息が白くなる。

白雪「行け。氷鳥」
楓「無駄です!!」

氷で出来た鳥は楓の鎌鼬によって粉々に砕け散る。

楓「では幕引きと致しましょう。疾風奥義・・・華蝶風月」

刹那。
一瞬で間合いを詰められ楓は白雪の眼前に迫る。
そして楓の持った刀の刃先が歪む。
前回負けた時と同じだ。

白雪「はああぁぁぁぁ!!」

初手の一撃目に合わせて白雪は刀を振り下ろした。

楓「っく!!」

楓と白雪の刀がぶつかり合い楓の動きが止まった。

白雪「奥義敗れたり。」
楓「旋!!」
白雪「っく!!」

旋風が白雪を襲い一瞬視界を奪う。

楓「まだ止まってません!!」

再び楓の刀が歪む。
そして白雪の体に傷ができて来る。
しかし、どれも致命的な傷ではない。

白雪「頼む雪風。耐えくれ。」

雪風がみしみしと音を立て始める。
そして、白雪の願いも虚しく雪風が粉々に砕け散った。

楓「これで終わりです。」

白雪と楓の周りに風巻き起こり体制を崩した白雪を引き寄せる。

楓「疾風・・・一閃!!」

素早く鞘から刀を抜き取り風に鎌鼬を乗せて白雪を斬りつけ吹き飛ばす。
そして白雪の体は中庭の壁に叩きつけられて地面を倒れる。

楓「はぁ~はぁ~はぁ~流石ですよ。白雪さんあともうちょっと貴方が耐えれていたら私が負けていたかもしれません。」

楓は肩で息をしながら倒れている白雪にそういった。
地面に転がっていた白雪の指がゆっくりと動く。

楓「・・・うそ。」

白雪はゆっくりと起き上がる。

楓「あの技を食らって・・・なぜ立っていられるんですか!?」
白雪「楓よ。私はお前に負けるわけにはいかんのだ。」

しかし、先程の一撃は白雪に深手の傷をおわせた。
腹部と左腕からは流れるよに血が地面へと落ちていく。
白雪は止血の為に腹部と見だり腕にを氷で固める。

楓「・・・次はコアデバイスごと貫きます。」
白雪「来い。雪風。」

再び白雪の手に雪風が握られる。

楓「何度やっても同じです。」
白雪「今度は違う。」

白雪はそっと刀を空に向かって高く突きあげて唱える。

白雪「・・・鍛錬・氷を纏い、鉄を鍛え、魂を打ち込む。」

突き上げた刀に氷がまとわりついて付いて銀色に輝きはじめる。

白雪「氷結雪風。」

刀を振り下ろすまとわりついた氷が砕けて雪風が姿を見せる。
その刀は今までのものとは違った。
刀の長さが2mもあっり刀からは真っ白な煙が上がっていて白銀に光っている。

楓「なにかと思えば。ただ長さが増えただけではないですか。そんなもなまくらと同じです。負けを認めたのですか?」
白雪「そうか。ならば見せてやる。」

白雪はゆっくりと刀を身体と水平になるように前で構えて楓との間合いを詰める。
そして白雪は体を大きく回し刀を振るった。

楓「そんな大振りでは当たりませんよ。それに振り終わったら隙が出来ます。!!」

楓は振り終わる瞬間を狙って間合いを詰めようとするが白雪の攻撃が止まることはなかった。
それはまるで優雅に舞を舞っているようでその一連の動きは止まることはなく斬撃が楓を襲う。

楓「っく!!体を回転させることで遠心力を生み出して刀を振るう!!考えましたね。」

楓は防戦を余儀なくされた。
縦横斜め至ることろから繰り出される攻撃を防ぐがじりじりと後退してく。

楓「だけどそれだけでは私は倒せませんよ!!」

楓は白雪と真逆に回転を咥えて刀と刀をぶつかり合わせる。

楓「っく!!」

白雪の回転が止まった。

白雪「あの回転を止めるか。馬鹿力だな。」
楓「お褒めいただいて光栄です。」

二人は離れて互いに間合いを取る。

白雪「どうやら私の体力も限界だ。次で終いにしよ。」
楓「そうですね。私の生命力もそこを尽きかけています。」

楓は刀を鞘に戻す。
対して白雪はゆっくりと刀を振り上げる。

楓「上段・火の位ですか。」
白雪「臆せず掛かってこい。」
楓「私の剣速が上か白雪さんの剣速が上か勝負です!!」

楓が白雪に向かって踏み込む。
刹那。
白雪は刀を振り下ろし楓は素早く抜刀する。
二人の体は交差して離れる。
そして二人は振り抜いた姿のまま沈黙する。

白雪「見事だ。」

白雪はその場仰向けに倒れこむ。
腹部の止血していた氷が砕けて再び血が流れ出す。
そして氷結雪風も粉々に砕けて亡くなった。
楓は白雪の元へ肩を揺らし覚束無い足取りで近づく。
白雪にまたがり刀を突き立てて一気に振り下ろす。
ザクリという音があたりに響く。

楓「なにが見事ですか・・。私の攻撃を全てたった一太刀で受け止めるなんて・・。」
白雪「いや、一撃受け止めきれなかった。」

楓が突き刺した刀は白雪の頬をかすめて地面に突き刺さっていた。
楓の刀も静かに砕けて風に舞って逝く。

楓「私の負けです。もし貴方が振り下ろす前に刀を裏返さなかったら私の体は今頃まっぷたつですよ。」
白雪「気づいていたのか。」

そう語る楓の口元から血が流れだす。
楓は振るえる手で懐から小刀を取り出してそっと白雪の手に握らせる。

楓「これを私の心臓を突き刺してください。それで終わりです。・・・悔しいですが私にはもうこの小刀ですら振るえる力が残っていません。私の完敗です。」
白雪「そうか。」

白雪はゆっくりと起き上がり小刀から鞘を抜き取る。

白雪「最後に言い残すことは」

楓は目を瞑る。
その目から月明かりに照らされた雫がゆっくりと頬を伝って地面へと落ちる。

楓「ゴメンなさい。」
白雪「十分だ。」

そう言って白雪は小刀を投げ捨てた。

楓「どうして・・・。」
白雪「これからなにがあっても変わらずに友達でいてくれますか?この問にご主人様はなっと答えた。」
楓「あっ・・・・。」

髪の隙間から見える赤色に染まった目からはダムが決壊したように涙がこぼれ落ちていく。

白雪「楓。お前は私たちの仲間だ。どうして仲間が斬れようか。」
楓「わたしは・・わたしは・・・貴方達にあんなひどい事をしたのに・・・・。」
白雪「その悪党は死んだ。お前の涙と共にな。」
楓「ゴメンなさい。・・・ゴメンなさい。」
白雪「もういいのだ。・・お帰り。楓。」

白雪はそっと楓の涙を拭う。

楓「はい。・・ただ、今戻りました。」

泣き顔で笑う楓の笑顔は白雪が今まで見た中で一番輝いていた。

白雪「今夜は冷えるな。中に入りたい。楓肩を貸してくれ。」
楓「はい。」

楓はそっと白雪の体を支えて中庭からビルの中へと寄り添いながら戻って行く。
月はそんな二人の背中を優しく照らし出していた。
・・


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