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1夜目 出会い・契約・って!!何馴染んでるんですか!!

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美人「十紀人くん。」
十紀人「貴方は最高に綺麗だよ。」
美人「あなたも最高にかっこいいわ」
十紀人「今日は最高の日だよ。こんな綺麗な人と一夜を過ごせるのだから。」

俺の隣で美人な女の人が笑っている。
夢じゃ無いかと錯覚してしまうくらいだ。
いやこれは夢じゃない。夢であるはずがない。

少女「お兄ちゃん!!」

誰だ?俺を呼ぶのは!!今いいところなんだ!邪魔をするじゃない!!
俺はあたりを見渡して俺を読んだ人物を探すがここには俺と名も知らない美人だけだ。

美人「私を見て。」
十紀人「おっと!ごめん。誰かに呼ばれた気がしたものだから。」

俺は美人の女を見つめて優しく微笑む。

少女「お兄ちゃん!!起きてください!!」

おっと!誰だ!このクソ忙しいときに俺の体を揺らすのは。
激しく体を揺さられる感覚がする。

美人「私を見て」
十紀人「ん?どうしたんだ美人さんよ。ぼやけてきているぞ?」

横に居る美人の女の人がぼやけて見える。
どういう事だ?何が起きているんだ!

少女「もう!!早く起きてくださいよ!!」

体が宙に浮く感覚のあとに後頭部に激しい痛みと共に飛び起きた。

十紀人「いたああぁぁぁ!!」
少女「あっ!お兄ちゃんごめんなさい!!」

ぼやけていた世界がはっきりとしてきて俺はあたりを見渡す。
先程まで俺の横で微笑んでいた美人はどこにもいない。
いるのは俺の部屋で目の前に申し訳なさそうな顔をして立っている妹だけだ。

十紀人「ん?妹よ。美人の女の人をみなかったか?」
少女「はぁ~お兄ちゃん、まだ夢の中にいるんですか?」

俺はズキズキと痛む後頭部を手で撫でながらあくびを一つする。
今俺の目の前に立つクリクリの目にサイドテールがよく似合う少女は我が妹の静だ。
妹と言っても血は繋がってはいない何故なら親父が俺がまだ小さい頃に妹が欲しいといった次の日に養子に迎えた子だからだ。
いやはやうちの親父は思いっきりがいいというかむちゃくちゃな人というか・・とりあえずそんな親父に俺は一言言ってやりたい。
グッジョブ!!

静 「さぁお兄ちゃん。顔洗って来て下さい。私はお兄ちゃんの部屋の掃除をしますから。」
十紀人「掃除ならあとで誰かがしてくれるだろ?」
静 「お兄ちゃんの部屋の掃除や身の回りのお世話は私の仕事なんですよ。」
十紀人「そうなのか?」
静 「そうです。わかったら早く行ってください。遅刻してしまいます。」
十紀人「わかった。わかったから押すなよ。」

我が妹に追い出されるように部屋を後にして俺は洗面所に向かった。
鏡に映る俺は寝ぐせが出ていて眠たそうな顔をしている。
蛇口を撚り両手に水を貯めて顔にかけると冷たい水が眠気も一緒に洗い流してくれる。
ここで少し俺の自己紹介をしておこう。

十紀人「俺の名前は道明十紀人、ハンサムでナイスガイな男の子だ。
    道明という名はここらじゃかなり有名な名前だ。
    どうしてかと言えばこの街の中心には道明財閥が所有している一番高い超高層ビルがある。
    なにを隠そうそこの社長が俺の親父なのだ・・・って親父自慢なんてしてもかっこつかないか。
    まぁつまりは金持ちということだ。
    俺はというと親父のことを抜けばただの普通の学生、住んでいる家も周りの住宅と変わらない普通のところ。
    違うといえば一軒のこの家に妹と二人で住んでいて俺達が学校に行っている間に本宅から家政婦が来て掃除やら何やらをしてくれる。
    それも最近では妹が全部してしまって家政婦はほとんど様子を見に来るだけとなっている。
    まったくよくできた妹だよ。」
静 「お兄ちゃん。鏡の前で何を話しているんですか・・・。」

っふ。俺としたことが・・。いつの間にか声にだしてしまったらしい。
しかし!!痛い!痛いぞ、妹よ!!そんな目で俺を見ないでくれ!!
などと声にならない悲鳴を心の中で叫んだ。

静 「なんでもいいですけど。早く学校に良く準備をしてください。」
十紀人「そうかもうそんな時間なのか?」
静 「お兄ちゃんの準備が遅いだけです。」

静を見ると既に学校指定の制服に袖を通していつでも出発出来る状態になている。
女子生徒の制服はワンピース型で胸のあたりには校章が刺繍がしている。
腰の周りをベルトの変わりに大きめのリボンで締めている。
結び方にもいろいろあるが基本的には蝶結びだが結び方にこれといった規定がないので各々が好きな結び方をして来る。
最近見てかわいいと思ったのはジュエリーボウという結び方だ。
そんなことよりもリボンを付けるとクビレが強調されてとてもスタイルが良く見えるのが一番のポイントなのだ!
そのせいだろうが我が校の女子生徒にスタイルが悪い人なんていない。
いつも男子生徒の受験競争率が非常に高いのはこの為とも言えよう・・近年では進学有名校として名高いのだ。
俺はその受験戦争を勝ち抜いてこの学校に入学したというわけだ。
制服には夏服と冬服にわかれて今妹が着ているのは冬服の方だ。
夏服も魅力的だが俺的には冬服の方がかわいいと思う。
まぁ後数ヶ月もすればその姿も見納めで衣替えとなり夏服の出番となるだろう。
妹の制服姿を堪能してから俺は急いで部屋にもどり制服に着替える。
男子の制服は学ランにカッターシャツとネクタイといった普通な感じだ。
男子生徒の中にはカッターシャツとネクタイをしないでTシャツで来るものもいる。
などと考えながら着替え終わり部屋を見渡す。
いつ見ても俺の部屋は綺麗だ。これも静のおかげというものだ。
そんなことをしていると階段のしたの方から静の声がする。

静 「お兄ちゃん。早くしてください。遅刻しますよ。」
十紀人「やれやれ。わかった。今行く。」

俺は再度いつも綺麗な部屋に感謝しつつ支度済ませて部屋をあとにする。

静 「お兄ちゃん。お弁は持ちましたか?ハンカチは?お財布は?」
十紀人「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」
静 「うぅ~。お兄ちゃんはすぐ忘れ物するんですから気をつけてくださいよ。」
十紀人「分かってるよ。」
静 「ホントですか?・・まぁいいです。行きましょうか。」

静といつも通りの通学路を通り学校を目指す。
なんとも憂鬱な時間だ。いや、静と歩くのが憂鬱なわけでも学校自体が嫌いなわけではない。
ただ学校は暇なのだ。学校にいくら位なら部屋でパソコンをいじっていたほうが幾分がましというものだ。
まぁ実際、そんなことをしていたら我が妹になにを言われるかわからないからたまったものじゃない。

静 「お兄ちゃん、私今日行くところがありますので先に帰らせてもらいますね。」
十紀人「なんだ?珍しいな、何か用事があるのか?」
静 「いえ、大した用事じゃないんですけど・・・。」
十紀人「っは!!もしや!!お兄ちゃんというものがありながら他の男とデートという奴なのですか!!そうなのですか!!」
静 「いえ、違いますが・・。」
十紀人「ええぇい!!俺もまだデートしたことないのに!!」
静 「だから違いますって!!人の話を聞いてください!!ただ外せない用事なので・・。」
十紀人「ん?そうなのか?大した用事じゃないのに外せないのか?」
静 「いいじゃないですか!!とにかく用事があるんです!!」
十紀人「まぁわかった。今日は一人で帰るとするよ。」

そんなやり取りをしているといつの間にやら学校に付いてしまった。
学校はとても真新しい創立57年とは思えないほどだ。
それもそうだろう俺がここに入学した際に親父が勝手に校舎全体を改装してしまったのだから。
いつもそうだ、小学の時も中学の時もそして今の高校の時も何も言わないで勝手に何でもしてしまう。
それは俺を想ってしてくれているのは分かるが・・・。
まぁそのせいで俺もいろいろと辛い思いをして来たのだ・・。
妹と下駄箱の前で別れて俺は自分の教室の自分の席に腰を降ろす。
俺の席は窓側の一番後ろというなかなかの席を確保している。
これは俺の素敵センスのおかげだろう。ここの席から見える窓越しの風景を俺はなかなかに気に入っている。
しばらくしてチャイムがなるとザワついていた教室も静かになった。
今教室の扉が開くとダルそうに教師が中へと入ってきて学級委員長の号令で今日一日の始まりを告げる。
俺は机にもたれかかり腕の中に顔を埋めて眼を閉じる。
眼を閉じるとすぐに睡魔が俺を襲って俺そのまま眠りの中に入った。
・・


静「まったく、また寝ているんですね。」
生徒「おぉ静ちゃんいつもかわいいね」
静「あっご学友の皆さん失礼しています。」
生徒「そんな奴ほっといて俺達とご飯食べようよ。」
静「お兄ちゃんと一緒に食べる予定なので。」
生徒「いいじゃん。ほっとこうよ。」
静「すいません。それはできません。」

まったく人が寝てると思って好き勝手言ってくれる。
これでは起きづらいじゃないか・・。

静「お兄ちゃん。起きてください。お昼時ですよ。」
十紀人「ん?もうそんな時間か・・。」

良く寝たと言ってから伸びをして今起きたことをアピールする。
我乍ら完璧な演技だ。誰がどう見ても今起きたとしか見えない。
っとそう願いたいものだ。

静「おはようございます。お兄ちゃん。ご飯にしましょう。」
生徒「・・・」

ご学友たちという者を横目で見ると何事もなかったように弁当をつついている。
先程の静とご学友みなさんの会話を聞いて感づいただろうが。
俺はあまりクラスに馴染めていない。クラスに馴染めいていないということは学年はもちろん下の学年も上の学年もそうだ。
いうなればこの学校で気軽に話せるのは静以外いないのだ。
まぁ俺は人より少し変わっているから仕方ないといえば仕方ないのかも知れない。
しかし俺は今の状況が嫌とかそう言うのではない。これはこれでいいとすら思えている。
時たま影で何か言われている時があるがそれに外は何もしてこない。
具体的に言えば俺をいじめるとそういうのは全く無いのだ。
だから俺も必要以上には親しくしなくていいと思っている。

十紀人「そうだな。今日は屋上で食べようか。」
静「はい。」

弁当をもって教室を出て屋上を目指す。
この学校は設備が整っていて不便な点はない。
ちなみに一般には生徒たちに開放されていない場所が多数はあるが俺と静だけはそういったところに入ることが出来る。
屋上もそのひとつに入っている。
これも親父様の力なのだろう。
ポケットからマスターキーを取り出して屋上への扉を開ける。
扉を開けると心地よい風が頬ををなでるのを感じる。
誰にも解放されていない場所なのに屋上の設備は完璧だ。
花壇には色とりどりの花が植えられている。
いくつかは俺の知っている花も植えられている。
冬知らずにパンジーにビオラなど他にも花は咲いているが俺がしているのはそれくらいだ。
そしてベンチがいくつか置いてあり食事が取れるように備え付けのテーブルまで完備されている。
花壇は丁寧に手入れがされているがそれを誰がしているのかは俺にはわからない。
まったく俺たちしか使わないの大した設備だと思う。
こじんまりとした公園とさほど変わらないのじゃないかと思うくらいだ。

静「お兄ちゃん。今日は此処で食べましょう。お日様が丁度当たって気持ちがイイですよ。」

静は屋上の丁度真ん中にある。
テーブル付きの椅子に座り弁当を広げる。
他にも日陰になっている事ろもあるが静はそこを選んだ。

十紀人「そうだな。たまには太陽と戯れるのもいいものだしな。」

静に誘われるままにその席に着き昼食にする。
弁当を開ける色とりどりに作られたおかずの数々が眼に入る。
この弁当から見ても静の料理の腕前はかなり物だろう。
いや、実際静の作る料理はそこら辺にある飲食店より遥かに美味しい。
そんな静が作った弁当を空にすると腹が膨れて眠くなる。
早々に静と別れ教室にもどり午後の授業を寝て過ごすための準備にとりかかる。
毎度毎度思うが学校とはつまらないものだ。
・・・
・・


十紀人「ん?」

どれぐらい寝ていたのだろうか。
目が覚めると教室は茜色に染まっていた。
窓の外に眼をやると既に夕日が沈みかけていて生徒たちの姿はない。

十紀人「そうか。静は用事があると言ってたな。」

なるほど・・いつもなら静が起に来てくれるが、今日はそれがない。
そのおかげでこんな時間まで寝てしまったのか。
などと考えながら寝ぼけた頭が覚めるまで待っているといよいよ月が顔を出し始める。
この勢いじゃ生徒はおろか教師も帰ってしまっただろう。

十紀人「はぁ戸締まりでもして帰るか・・。」

鞄を持ち教室から出る。
廊下は既に真っ暗になっていて月明かりだけが下駄箱までの道のりを照らしている。
今日の月は紅く染まっている。この月を見ると昔を思い出してしまい心が沈んでしまう。
俺が人と馴染めないのはそのせいかも知れない。

十紀人「嫌な月だな。」

横目で月を見つつ下駄箱までの道のりを急ぐ。
下駄箱から靴を出して正面玄関を出て鍵を締める。
マスターキーというものはなんとも便利なものかと感心しつつ校門を目指す。

十紀人「ん?」

違和感を感じた。
正面玄関から校門までのいつもと変わらない風景なのだが確かな違和感を感じる。
なにが違うわけでもない。ただ何かが違う違和感だ。
そうか・・雰囲気がいつもと違う。そう気づいた瞬間、息の詰まりそうな感覚が俺を襲う。
一歩一歩足を前に出して歩くが次第に足取りは重くなっていく。

十紀人「なんだ??」

どうしたというのだろうか。
何とも言えない圧迫感。鼓動が早くなり呼吸が乱れる。
視線??誰かが俺を見る視線を感じる。
まぁ俺はいつも誰からか見られるナイスガイだからな仕方ないだろ。
いやいや、こんな時に冗談をいっている場合ではない。
目線を感じる方に目をやると校庭の真ん中で紅月に照らされてポツンと佇む少女が一人いた。
瞬時に理解できた。この圧迫感や違和感はその女からはなたれているものということが・・。

十紀人「こんな時間にだれなんだ?」

少女と目が合うのがわかった。
目が合うと少女はゆっくりとこちらに近づいてくる。
紅月に照らされる少女の髪は黒光りするくらい美しく歩くたびにその髪がはねるのが分かる。
肌は透き通りそうなくらいの白。瞳の色は真紅で見つめると吸い込まれそうになる。
この場には似合わない黒をメインにして白のラインやフリルが付いているメイド服を着ている。
まさに可愛らしいとはこういう人の事を言うのだろ。
しかしその可愛さとは裏腹に少女の表情や視線は何も感じさせない。
敵意があるわけでもないし好意があるわけでもない。
ただ俺を見てこちらの方にゆっくりと歩いてくる。
等身大の美しい人形が動いているのかと錯覚すらしてしまうくらいだ。
少女が口を開いたのは俺との距離があと10数メートルってころだった。

少女「貴方が道明十紀人ですか?」

なぜ会ったこともないこの少女が俺の名を?
いや、俺はそこそこ有名人だから名前をしられていても不思議ではないのだが・・。
そんな事よりも少女から発せられた声が全く感情のない無機質な声なことに俺は驚いた。
丁度人形が喋るならこんな感じだろう。

十紀人「なんで俺の名を?いや、こんな美人さんに名前を覚えてもらっているのは光栄だけど。」
少女「そうですか。・・・・デバイスオン」

刹那。
俺は自分の目を疑った。
少女が口を閉じると同時に10数メートルくらいはあった少女と距離がいつのまにかなくなっていた。
つまりこの少女はあれだけの距離を瞬間的に移動して俺の目の前に現れたということだ。

少女「死んでもらいます。」
十紀人「え?」

何が起きた?少女が俺の耳元で何かを言った後に俺の体はペットボトルを空に向かって投げたように空を舞っていた。
そうわかった瞬間、俺は地面に激突して体全体に衝撃が走り意識が飛びそうになるのをこらえてた。

少女「まだ、デバイスが安定してないみたいですね。手加減が過ぎました。」

おいおい待ってくれよ少女よ。男の俺を軽々と空中にほうり投げておいて手加減しただ?
それで死んでいない俺も俺だが、冗談も体外にしてくれ・・。
今ので体のあちこちが痛い。骨が砕けたんじゃないと思いたくなるくらいだ。
そもそもなんで俺が殺されなきゃいけない。
少女は自分の手をみて開いたり閉じたりしている。
俺は痛みに耐えながら起き上がって口を開いた。

十紀人「なんで、俺を殺そうとするんだ?理由くらい教えてくれよ。」
少女「聞いても死ぬのですから意味が無いと思いますが。」
十紀人「知っときたいんだよ。自分が死ぬ理由くらい。」
少女「人間の考えは良くわかりませんね。」

人間の考え?少女よ、君だって人間だろう。

少女「主の命令だからです。」

その言葉を聞いた瞬間俺は死を覚悟した。
何故なら少女の手には突如大鎌が現れたからだ。
怪力少女と思いきや死神少女だったとはな・・。
少女が最初の一歩を踏み切った瞬間俺は自分の死を受け入れた。
退屈な日々だったがまぁ良い人生だった。
静、怒るかなぁ。ごめんな。先立俺を許してくれ。
死にたくねぇな。そういえばあの人が死んだのもこん紅い月の日だったな。ごめんなさい。
俺は静かに目を閉じた。
閉じる瞬間、死神少女が大鎌を振り上げるのが見えて俺の人生はここで終わりなのだと覚悟した。
・・・・。
次に俺を襲った感覚は切られる感覚ではなかった。
俺を襲った感覚はフワっとした優しく体が浮く感覚だった。

???「待たせたな。ご主人様。」

第一印象は涼し気な声。
第二印象は目を開けた時だった。
見た目の年は俺とさほど変わらないだろう。
白銀の髪がなびいて月明かりを反射している。
見るものを虜にし、息をするのも忘れさせるくらいの美女。
瞳は死神少女と一緒で紅の瞳をしている。
白をメインで構成された和風の着物にパンクアレンジを施したかのような服に身を包み美少女は俺を抱き抱えて学校の屋上に着地する。
着地は俺を抱えている事など感じさせないくらい軽やかだった。

白雪「時間がない。お主人様。ポートを開いてくれ。すぐに契約をかわしたい。」
十紀人「え?ポート?契約?」

会っていきなり何をいっているんだ?ご主人様?ポート?契約?
いや、とりあえず俺は助かったのか?
死神少女に殺されかけたあとは謎の美女か?
これは夢なのか?まぁ夢ならこの現象も考えられるな。
しかし最初に受けたダメージがこれが現実だということを如実に物語っている。

十紀人「待ってくれ。俺は今何が起きているか全く理解していない。」
クロ「おい。人間。」
十紀人「え!?」

別の声をしたが俺の目の前に居るのはいつの間にかいた黒猫が一匹と白銀の髪をした美少女が一人だ。
あたりをキョロキョロするが他にはだれもいない。

クロ「いや、おい。ここだ?」

俺の目線は自然と黒猫を見る。
なぜならこの猫の方から声がしたからだ。

十紀人「まさかな。猫が話せるわけないよな。」
クロ「そのまさかだ。」
十紀人「えええぇぇ!?」

初めて見てしまった。・・喋る猫なんてホントにいたんですね。
いやぁ世界は広い、広すぎます。喋る猫が居るくらいですから。
世界は俺の知らないことが多すぎるんですね。わかります。
などといかに自分が世界から見たらちっぽけな存在かを改めて実感させられる。
えてして未知との遭遇と言うものはいつも唐突なものだ。

クロ「おい、人間。遠い目をするな。いいか一度しかわいないからよく聴け人間!聞いているのか!?」
十紀人「あっ!はい。」

猫に一括されて俺は正気に戻る。
その猫の前に正座して猫の話を聞くことにした。

クロ「今は時間がないから手短に話す。お前は白雪に選ばれた主人だ。」
十紀人「え?選ばれた?主人?」
クロ「今は質問をするな。今この現実を見ろそして無理矢理にでも理解しろ。」
十紀人「・・。」
クロ「わかったら返事をしろ!」
十紀人「はい!」

猫の前に正座して猫の話を聞いている俺は端から見れば変人だろうな。
なんともシュールな図になっていることはいうまでもないだろう。

クロ「いいか。今お前の命を狙っているあいつは黒川という奴だ。それでお前は白雪の主人だ。今の白雪ではあいつには勝てない。しかしお前と契約を交わせばもしかすると勝てるかも知れない。」
白雪「もしかしなくても勝てる。クロさっさとしろ。」

白雪はあたりを警戒しながらクロを急かす。

クロ「わかっている。簡潔に言う。死にたくないなら白雪と契約を交わせ。」

いや、全くといっていいほど状況が飲み込めない。
なぜ俺が命を狙われる。そこまでの恨みを買う行動はしていないつもりだ。
それにこの猫は何だ。なぜ人間の言葉をさも当然のようにしゃべっている。
頭は混乱するばかりでなにも答えなんか出て来やしない。

白雪「まずい黒川がこちらに気がついたぞ」
クロ「人間早く決断しろ。」
十紀人「喋る猫さんよ。俺はまだ死にたくないのは確だ・・しかしだな、契約と言っても何をどうしていいかわからない。」
クロ「決まりだな。白雪準備に取り掛かれ。」
白雪「クロ、サポートをよろしく頼む。」
クロ「任せておけ。」
白雪「2分だ。」
クロ「わかった。」

白雪が俺の目の前に立つ。白雪の美しさに一瞬にして思考が止まってしまう。
彼女の真紅の瞳と目が合う。

白雪「ご主人様。契約を交わすぞ。」
十紀人「待ってくれ。俺は何をどうすればいいかわからないのだが。」
クロ「安心しろ。私が言う言葉を復唱すればいい。」
十紀人「わ、わかった。」
黒川「見つけました。」

先程の死神少女こと黒川が屋上に軽やかに着地して俺達を見つめてくる。
黒川が踏み切る瞬間、俺達と黒川の間にクロが割って入る。

クロ「防御結界展開。」

クロがそう唱えた瞬間、黒川は見えない壁みたいなのに遮られ立ち止まる。

黒川「・・・」
クロ「悪いが邪魔はさせない。」
黒川「止めれると思っているのですか?」
クロ「思ってはいなさ。ただ、契約する時間くらいは稼げるとはおもっているのだが?」
黒川「デバイスオン」

黒川の手には再び鎌が握られた。

黒川「・・・。」

その鎌が見えない壁打ち付けられると激しい衝突音と共に鎌を弾き返す。
黒川はそれでもやめずに何度も激しく鎌を見えない壁に打ち続ける。
先程までの余裕そうだったクロの表情が歪むのがわかった。

クロ「っく。白雪。早くしてくれないか。」
白雪「あぁ分かっている、こっちの準備はもうできた。」
クロ「なら、詠唱に入るぞ人間、いいか。」
十紀人「あ、あぁ。」

ただならぬ緊張感が俺を襲う。
手に自然と汗が出て俺はそれを握り締める。

クロ「Thine is my sword」
十紀人「バ、Thine イ、is my ソ、sword」
クロ「Thine is my escutcheon」
十紀人「バ、Thine is my escutcheon」
クロ「Person who gives power to my thine」
十紀人「Person who gives power to my thine。 It gives it to my power and thine。」
クロ「繋がったな。」
十紀人「My proof is carved for thine」

クロの言葉を聴いていると自然と言葉が頭の中から浮かんできた。
その言葉を俺は口にする。

白雪「ポートの開放確認。接続認証開始。・・I am a sword I am an escutcheon Proxy of power」
二人「It contracts to thine and me」
白雪「・・・接続確認。」
クロ「どうやら私の勝ちのようだな。・・・白雪、ちゃんと2分守ったぞ。」
黒川「・・・・・」

黒川の大振りの一撃で壁のような物が砕ける。
それと同時にクロは勝ち誇った笑みを浮かべて飛ばされ壁に打ち付けられ意識が途切れたように地面に倒れていくのが見えた。
俺達は眩い光に包まれ眼を閉じる。

十紀人「ここは?」

目を開けるとあたりは眩いばかりに白く。
近くにある水晶で出来た花に触れてみるととても冷たくこれが氷でできている事がわかった。
それだけじゃなかった。視野を広げるとここにある木や道などすべて氷でできている。
透き通る氷のオブジェはなんとも神秘的で眼を奪われてしまい声が出せなかった。
幻想的な空間で俺の目の前に立つ白雪はゆっくりとこちらを見る。

白雪「ここは私がご主人様と契約を交わす為に一時的に作られた空間だ。ご主人様久しぶりだな。」
十紀人「久しぶり?」
白雪「・・覚えてないのか。まぁ無理もないな。」

白雪が一瞬残念そうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。

十紀人「いや!!すぐ思い出せるぞ待ってくれ。ん~っとだな。これほどの美人とあったんだ。忘れるわけはないはずなんだがな」
白雪「ふふ。無理をしなくてもいい。さぁご主人様、時間がない契約を交わそう。」

白雪の両手が俺の頬に触れる。ひんやりとした指先が火照った頬にはとても気持ちいいよかった。
だんだんと顔が近づき俺の瞼は自然と閉じる。
唇に柔らかい感触を感じる。それでも俺は落ち着いていた。
いや、何をされているか気づくのに時間がかかったんだ。
目を開けると白雪の顔が目の前にあった。
俺達は唇と唇を重ね合わしていた。驚いたが俺は離れなかった。
いや、離れたくないといったほうがいいのかも知れない。
俺の心臓は今にも爆発しそなくらい早くなっていた。
だけど、心はとても穏やかだ。
その感覚だ気持ちよくて驚きよりなによりこのままでいたいと思ってしまった・・・。
しばらくして唇が離れると口元に名残惜しさを感じた。

白雪「契約を認証。接続ポートにアクセス中・・・。アクセス完了。道明十紀人を正式にご主人様と認識。・・これからよろしく頼むご主人様。」

白雪が口を閉じるとこの空間が壊れ始めて屋上の風景が戻ってくる。
空間が崩れ終わると俺達の前に黒川が立っていた。

白雪「すまないな黒川。随分と待たせてしまったな。」
黒川「・・・邪魔するのであれば貴方を破壊させて頂きます。」
白雪「今の私に勝てるとでも思っているのか?」
黒川「・・・。」

二人の間にから発せられる空気で俺は動くことができなくなってしまっている。
そんな束縛から開放されたのはクロの声からだった。

クロ「人間。そこにいると巻き込まれるぞ。こっちに来い。」
十紀人「わ、わかった。」

そそくさと上半身だけを上げているクロの横に移動する。

十紀人「大丈夫か?」
クロ「あぁまだ体は痺れているが問題ない。」
十紀人「そうか。」

そのときどこからか携帯の着信音のようなものが流れだした。

黒川「・・・」
白雪「出たらどうだ。何もしない。」

黒川はしばらく考えて武器を降ろす。

黒川「・・・。」

ポケットから携帯を取り出して耳に付ける。

黒川「黒川です。」
・・・。
黒川「はい。」
・・・。
黒川「失敗しました。申し訳ありません。」
・・・。
黒川「はい。」
・・・。
黒川「破壊した後に任務遂行します。」
・・・。
黒川「はい。そうですかわかりました。」

耳に当てていた携帯を放しそれをポケットに戻す。

黒川「命令があったので私は戻ります。」

そう言って地面を軽く蹴って夜の空に消えて行った。

白雪「行ったか・・。」

白雪はそれを見送ると構えを緩めこちらに向き直る。

白雪「私を思い出したか?ご主人様。」
十紀人「ごめん。まだ思い出せない。」
白雪「そうか。残念だがいい。やっと会えたんだ。今はこの喜びを噛み締めたい。」

そう言いながらこちらに歩いて近くまで来ると俺に向かって倒れてきた。
それを受け止めて顔を覗き込む。

クロ「ここのところ寝ないでお前を探していたからな。一気に疲れが来たんだろう。」
十紀人「そうなのか?」
クロ「あぁ。寝かせてやってくれ。」
十紀人「わかった。とりあえず俺の家にでもつれていくか。」

白雪は俺の腕の中で顔を埋めて安らかな顔で寝息を立たていた。
俺と彼女はどこかで会っている。しかし、俺にはその記憶が全くない。
そうとう子供ころあったのか?
そう思った時、俺のポケットで何かが振動する。
すぐにポケットに手を突っ込みそれを取り出す。
携帯だ。しかも、ディスプレイには静と書いてある。
俺の頬に嫌な汗がつたって行くのが分かった。

クロ「どうした人間。でないのか?」
十紀人「い、いや、出るさ。うん。・・でるよ。」

そっと携帯を耳にあてて通話ボタンを押す。

静『あぁお兄ちゃん遅いですね・・。どうしたんでしょうか。事故に巻き込まれていないといいんですけど・・。』
十紀人「静。俺だ。お前のお兄ちゃんは事故にはまきこまれていない。」
静『あぁ本当におそいですね。ご飯さめちゃうます・・。』
十紀人「静。お兄ちゃんは今すぐ帰る。安心してくれ。」
静『はぁお兄ちゃん待ってたらお兄ちゃんの声の空耳が聞こえるようなってきました。どうしましょうか・・』
十紀人「本当にすまないと思っている。機嫌を直してもらえないだろうか・・。」
静『・・・・。』
十紀人「そうだ静。今度お兄ちゃんと買い物でも行こうか?」
静『・・・あっ!!電話繋がってたんですね!!お兄ちゃん大丈夫ですか?事故とかに巻き込まれていませんか?』
十紀人「あぁ静のお兄ちゃんはいたって健康そのものだよ。」
静『そうですか。良かったです。ご飯出来ているので早めに帰ってきてくださいね。』
十紀人「あぁ、お兄ちゃんはすぐに帰るぞ待っていてくれ。」

話し終わり俺は携帯をしまう。さてどこに買い物に行こうか。
今月は厳しくなりそうだと財布の中身を確認する。

クロ「人間、顔色が悪いぞ?」
十紀人「そんなことはないさ。さぁ早く帰ろう。」

妹よ、今しばらく兄の帰りえを待っていてくれ。
俺は白雪をおぶって学校を出た。
帰り道、横に猫を連れて背中には未だに白雪が気持よさそうに寝ている。

十紀人「クロ、いろいろと聞きたいことがあるんだが・・。」
クロ「なんだ?」
十紀人「お前たちはいったい何者なんだ?」
クロ「どこから話たらいいものか。ん~今知りたいか?」
十紀人「今じゃまずいのか?」
クロ「まずくはないが白雪のことは白雪に聞いたほうがいいと思ったのだが。」
十紀人「たしかにそれもそうだな。」

クロの言うこともごもっともだ他人のことを他人から聞くのはあまりいいものではない。
なら白雪が目を覚ましてから白雪本人に聞いたほうがたしかにいいだろう。
ん?はて、何かを忘れているような気がするがなんだったんだろう。

クロ「どうした人間?難しい顔をして」

そうだ。いろいろあって忘れていたがこの猫だ!なぜ人間の言葉を話せる!!

十紀人「お前だ!!」
クロ「五月蝿いぞ。いきなりどうしたというのだ。人間。」
十紀人「なぜだ。なぜ人間の言葉を話せる!!」
クロ「そんなもの決まっている。」

何がだ!何が決まっているんだ!!

クロ「話せるからだ。」
十紀人「そうかぁ。ならしかたないな。うん。話せるものは仕方がないな。ってそんなんで納得出来るか!!」
クロ「騒がしいな人間。」
十紀人「ならちゃんと説明してくれ。」
クロ「そう言われても私にも分からんのだ。・・では問うがお前はなぜ言葉を話せる?」
十紀人「いや、元から話せたからだ。」
クロ「わたしと似たようなものではないか。」

そう言われたらなんだか納得してしまう。
しかも目の前で人間の言葉を話しているのだから疑いようがない。

十紀人「お前は何者なんだ?」
クロ「何者と言われてもな・・。私は気がついたらこの姿だった。それを説明しろと言われても私には適切な回答が出来ない。」
十紀人「そうか・・。じゃぁなんで白雪と一緒にいるんだ?」
クロ「私も白雪も一人の男を探している。」
十紀人「だれなんだ?」
クロ「それが私にも分からんのだ。ただ覚えているのは温もりと優しい笑顔だけだ。」
十紀人「そうか。」

本人にもわからないことを聞いたところでそれはわからないのは当然だろう。
人にお前はなぜ生まれてなぜ人の言葉を話せるんだと問いかけたところで返答はクロとさほどかわらないだろな・・。
なんだろうか、なれるとは怖いものだ。一度許してしまえばそれが当然になってしまう。
こうして俺がこの猫と話しているのは当たり前のように思えてきてしまう。
クロと話しているといつの間にか家の前に立っていた。

十紀人「着いたか。」
クロ「ここがお前の家か。」
十紀人「そうだ」

玄関の前に立ち俺は勢い良く扉を開ける。

静 「お兄ちゃん。お誕生日おめでとうございます。」

扉を開けるとクラッカー音とともに我が麗しの妹の俺の誕生日を祝う言葉で出迎えられた。
そうか、いろいろあって忘れていたが今日は俺の誕生日だったのか。
だから妹は用事があると言って先帰ったのだな。

静 「あれ?猫さんと・・・・女の人・・・。」

っは!しまった!!遅くに帰って女を背中に担いでるこれはいわゆるやばいパターンのやつだいうやつだ!!

十紀人「まて静!!これには深あぁぁぁい訳があるんだ。落ち着いて聞くんだ。」
静 「そうですか。女性の方とそんな深い事情があるんですね。わかります。」
十紀人「分かるんじゃない!!静お前は勘違いをしている。落ち着いて俺の話を聞いてくれ!!」
静 「あっ私ったらお兄ちゃんに似てたから勘違いしました。どちら様ですか?」
十紀人「妹よ。私がお兄ちゃんだ。クロおまえからも何か言ってやってくれ。」
クロ「厄介ごとを私にふるな。」
静 「え?猫が喋った?」

おっ!妹が反応した。

静 「私疲れいるのでしょうか。猫が喋る分けなんてないのに・・。」
十紀人「クロ頼む俺だと妹にいないもの扱いされてしまうんだ。」
クロ「貸1だな。」
十紀人「わかった。」
クロ「えぇっと静といったな。私のはクロだ。この二人には何も無いことは私が証明しよう。よかったら一晩とめてもらえないか?」
静 「えっ!・・あぁこれは空耳ですね。だって猫が喋るわけないです。」

静の目がだんだんと遠くを見るようになっていくのが分かる。

クロ「おい、人間。」
十紀人「なんだ?」
クロ「お前の妹の現実逃避を何とかしてくれ。話にならん。」
十紀人「大丈夫だ。ひどい時には自分の世界に入ってしまう。」
クロ「そうなのか。はぁ~貸2だな」
十紀人「その話乗った。」

この後妹を落ち着かせるのにかなりの時間を費やして今日俺にあった出来事を説明することができた。
白雪はというと使っていない部屋のベットに寝かせている。

静 「にわかには信じられませんね。」
十紀人「あぁ俺だってあまり信じたくない出来事だ。」
クロ「だが、これは現実だ。なにより私の存在が真実であることを証明しているだろ?」
静 「そうですが・・・。」
クロ「詳しい話は白雪が起きてからにしよう。」
十紀人「それもそうだな。」

ついていることに明日は学校が休みだ話すには十分時間が取れるだろう。
テーブルの上に目をやると静が俺の為に作ってくれた料理が並んでいる。
真ん中には手作りかと思われるケーキ、チョコレートで作られたプレートには俺の名前とその下に誕生日おめでとうの文字が入っていた。
そのケーキを中心に唐揚げやサラダにスープそして俺の好物の焼き鳥と寿司が並べられていつもの食卓より豪華になっている。
これ全部が静の手作りというのだからプロも顔負けだろうな。

十紀人「静。俺はお腹へったのだがここの料理は食べてもいいのか?」
静 「はい。すいません。冷めてしまいましたね・・。」
十紀人「いや、俺が帰ってくるのが遅かった俺が悪いんだ。すまない。」
静 「気にしないでください。すぐに温め直しますね。その後はケーキに火を付けてお兄ちゃんの誕生日を祝いましょう。」
十紀人「あぁよろしく頼むよ。」

静は料理をトレイに乗せて台所に向かう。

クロ「よくできた妹だな。」
十紀人「あぁ全くもって俺もそう思うよ」

そのあと俺は妹とクロに誕生日を祝ってもらい。
また一つ年を取った。クロが恥ずかしがりながら誕生の歌を歌う姿は見ていてとても楽しかった。
毎年妹と二人で祝ってもらっているが、今年は一匹増えて少し賑やかだった。
後片付けをして部屋に戻ると今日一日の疲れがどっと出てベットに倒れこむ。

クロ「私はこの部屋で寝させてもらうぞ。」
十紀人「好きにしてくれ。俺はもう寝る。」
クロ「全くそんな格好では風邪をひいてしまうぞ。」

ベットに倒れこむとすぐに睡魔が襲ってきた。
俺はそれに抗いもせずにそのまま眠りに落ちる。
体に布団のかかる感触がする。

クロ「おやすみ。」
十紀人「あぁ、おやす・み・・・。」
クロ「時間はかかったが約束を守りに来たぞ人間。」

眠りに落ちる最中クロが何か言った気がしたが俺の意識はもう眠りの中だった。
・・・
・・



俺が目を覚ましたのは窓から差し込む陽の光によってだった。

十紀人「朝か・・。」
クロ「すまない起こしてしまったか。」

日が差し込む窓を見るとクロが座っていた。
どうやらカーテンを開けて外を見ていたのだろう。

十紀人「いいよ。気にしないでくれ。」

あくびをしてベットから出る。
昨日のことが嘘のように朝はいつもと変わらなかった。
一つ変わるとするなら朝から人間の言葉を話す猫に起こされたということだ。
まず洗面所で顔を洗う。そしてこれからリビングで我が妹の作った朝飯を食べるのだ。
リビングの扉を開く。

白雪「おはよう。ご主人様。」
静 「おはようございます。お兄ちゃん。」
十紀人「おう。二人共おはよう。」
静「あっクロさんもご飯ですね。えっとクロさんはいつも何をたべてるんですか?」
クロ「あぁ牛乳で頼む。朝はあまり食欲がないんだ。」
静「そうですかでは準備しますね。」

静は小走りで台所に行き皿に牛乳を注ぐ。
俺は席についてその光景を微笑みながら見ていた。

十紀人「って!!何馴染んでるんですか!!」

あまりの馴染み具合に自然と流してしまった。

白雪「何だ騒がしいぞご主人様。朝食くらい静かに食べさせてくれ。」
十紀人「いや・・すまない。」
白雪「分かってくれればいいんだ。」
クロ「白雪体調はどうだ。」
白雪「万全だ。久しぶりにぐっすり眠れた。」
クロ「それは良かった。」
十紀人「いや、なんで君たちはこんなに俺の日常生活にこんなに馴染んでいるんだ。」
静 「賑やかになっていいじゃないですか。」

静は牛乳が入った皿をクロの前に起きてからそういった。
まぁ静がそう言うのならいいのかも知れない。
たしかに二人で暮らしていたときより一人と一匹が増えるとやけに賑やかになった気がする。

十紀人「まぁいいか。」
クロ「白雪。」
白雪「なんだ?」
クロ「今人間が置かれた状況を話さなくていいのか?」
白雪「そうだな。たしかにご主人様には話したほうがいいな。」
十紀人「そうだ。俺も知りたい。お前が何者なのか。」
静 「私も気になります。よければ私も聞かせてもらえませんか?」
白雪「あぁ構わない。」

白雪は飲み物を飲み干して静かに口を開いた。

白雪「そうだな、なら私がしる限りのことを話そう。まずは私のことだな私は製造名、白雪。別名デバイス。」
十紀人「製造名?」
白雪「私たちデバイスは作られた生命体。アンドロイドとでも言ったほうがわかりやすいか。」
十紀人「まてまて今の世界そんな技術があるとういのか?」
白雪「厳密にはあったっていったほうがいいかもしれない。」
十紀人「あった?」
白雪「そうだ。私たちを作った人物を私たちファザーと呼んでいるがファザーは既に私たちのデータと共に死んでいる。」
十紀人「死んでる?」

俺はそれを口にしてしまったと思った。
他人が興味本意に人の死んだ理由を聞くのはすごく失礼に値するからだ。
しかし白雪は続けて話してくれた。

白雪「死んだのではないな、殺された。」
十紀人「・・そうなのか。」
白雪「あぁ、ファザーは知らなかったんだ。私たちが作られた本当の理由が兵器としてつかわれるということを・・。」

白雪の言葉をきいて納得し黒川と対峙した時ことで俺は実感した。
人間では圧倒的に敵うはずもない力の差を・・。
そんな力を兵器として扱えばその国はたしかに最強となるだろう。
それにしてもどっかのSF小説のような展開になってきたのだが・・。

白雪「表向きは私たちを使っての人命救助だった。しかしファザーは本来の意味を知り私たちの制作データを削除して私たちの力を使うために制約をつけけて私たちを逃がしたのだ。」
十紀人「そうだったのか。・・・あの接続とか言うのが制約ってこと。」
白雪「そうだ。接続は私たちが戦う上でとても重要な物だ。私たちにはそれぞれ武器と能力が与えられている。それを使うためには生命力が必要となる。しかし、私たちには生命力と言った物ない。そのため契約を交わしてご主人様になった人に生命力を供給してもらわなければいけない。そのための接続になるんだ。それで生命力を供給に必要なのがDNAになる。」

なるほどそのための接吻たっだのですね。
まぁ俺としてもファーストキスがこんなに可愛い子であれば文句はない。
横目で静とクロを見ると黙って話を聞いている。

十紀人「ところで黒川って少女が出した武器。あれはいったいなんなんだ?」
白雪「私たちはあれをデバイスと呼んでいる。先程言った私たちが各ひとり与えられた武器だ。」
十紀人「突然現れたけどどうやって出してるんだ?」
白雪「武器をイメージしてそこに生命力を送り込んで形成、出現させる。構造のことを聞かれても私はわからんから聞かないでくれ。」

まったくもって当然の答えだ。構造なんて開発者に聞かなきゃわからないだろうな。
まぁ聞いたところで俺には到底理解出来ないだろうけどな。
いや、聞くこともできないか。既にこの技術は失われている。
言わばロストテクノロジーってやつだろう。

十紀人「君が何者なのかはわかった。だけどなんで俺なんだ?」
白雪「ほんとに昔の事を覚えていないのか。」
十紀人「すまない。それは未だに思い出せない。」
白雪「ご主人様が小さいころ私はご主人様と出会った。そして誓ったんだ。ご主人様がおおきくなったら私がご主人様を守ると・・。」

おかしい。そんな記憶忘れるわけないのに俺にはそんな記憶がない。

白雪「思い出せないようだな。まぁいい。私はこうして契約ができてご主人様を守ることができたのから。」
十紀人「そっか・・。けどよく俺だってわかったね。子供の頃と今の俺ではかなり変わっていると思ったんだけど。」
白雪「鼓動だ。」
十紀人「鼓動?」
白雪「あぁ、ご主人様のやさしい鼓動は昔と変わっていなかったからな見つけるとができた。」

まぁ他にも聞きたいことは山ほどあるが今はここまでにしておこう。
朝からこれだけ濃ゆい話をすれば疲れるだろうしな。
いや、実際は俺が疲れてきたのだが・・・。
今後も付き合っていく必要がありそうだからまた気になったときに聞けばいい。

静「話はわかりました。それでお兄ちゃんどうするんですか?」

俺の白雪の話が終わると沈黙していた静が口を開いた。

十紀人「どうするって?」
静「白雪さんのことですよ。話を聞く限り行く宛もないんじゃないんですか?ここに住むならちゃんと部屋を用意する必要がありますから。」
白雪「私としてはどこでも寝れるが黒川がまたご主人様の命を狙ってくるかもしれんから、ご主人様の近くにいれれば問題はないのだが。」
十紀人「そうだな。行く宛もなさそうだし。外で寝られても困るから空き部屋に住んでもらうか。」
静「お兄ちゃんならそういうと思いましたよ。既に準備はしてあります。一階の階段横の部屋を使ってください。」

さすが我が妹だ。俺の考えを先読みして既に部屋を用意してくれたか。

白雪「静、すまないな。これから世話になる。」
静「構いませんよ。賑やかになるのはいいことですから。」
クロ「迷惑ついでだが。私もここに住まわせてもらっても構わんか。」
十紀人「・・・。」
クロ「なんだその目は!」
静「黒猫さんを飼うのはかなり賛成なのですが・・・。」
クロ「おいまて静まで私の何が不満だというのだ。」
十紀人・静「声。」
クロ「おまえたちと言う奴は!!」

結局のところクロも我が家に住むこととなりこうして美人一人と猫一匹が増えて新たな生活が幕を開けた。
俺はまだ気づいていなかった。これから起こる命をかけた戦いの幕が今、開けたことを・・・。
・・・
・・



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