粋「今日はいい夜だね。月が血に染められて真っ赤になってるよ。」
黒川「・・・・。」
粋は遠い目で月を見てそう言った。
十紀人「どうやらお迎えが来たみたいだな。俺は帰るとするよ。」
そう言って俺はベンチを立ち上がり歩き出そうとした。
粋「どこに行く気だい?十紀人。」
十紀人「家に帰らせてもらおうと思ってね。」
粋「無事に帰れるとでも?」
十紀人「そう思っているけど。」
粋「君は図太いね。」
十紀人「俺の息子の話か?」
粋「・・・・。」
どうやら冗談をいう雰囲気ではないらしい。
十紀人「そんな怖い顔をするなよ。せっかく旧友に会ったのにな」
粋「旧友?違うね。僕と君とは敵同士だ。昔も今も。」
十紀人「それはそれは、こんな俺を敵としてみてくれているんだな。嬉しい限りだ。」
粋「君の人を馬鹿にする態度は見ていて虫酸が走るよ。」
十紀人「そうかい。機嫌を損ねたなら謝ろう。」
粋「・・・・。」
粋は強く睨みつけるようにして俺を見た。
十紀人「それで、俺になんの用かな?」
粋「時が来たんだ。」
十紀人「時?」
粋「そう。今日は待ちに待った日。」
十紀人「どういう事だ?」
粋「すべての準備が整ったってことだ。」
十紀人「粋。訳がわからない。俺の質問に答えてくれ。」
粋「言葉のままの意味さぁ。君を殺すための準備と僕を邪魔する奴らを破壊する準備さぁ。」
俺を殺すのは分かる。でも邪魔するとはどういう事だ?
十紀人「お前を邪魔する?」
粋「そう。僕の周りをこそこそ嗅ぎまわっていた政府の犬たちをね邪魔だから排除するんだよ。」
十紀人「なるほど。そういうことか。」
粋「奴らは僕からおもちゃを取り上げようとしたからね。それの罪の重さを味合わせなきゃいけない。」
十紀人「へぇ~大変苦労人なんだな。」
粋「手始めにまずは君を、一番目障りな君を殺させてもらう。」
十紀人「遠慮したいところだね。」
粋「その余裕がいつまで続くかな?」
十紀人「さぁね。」
粋「黒川。」
黒川「はい。」
ずっと黙っていた黒川は俺の方に向き直り構えをとる。
俺はそんな黒川と向き合い眼を見つめる。
粋はそんな俺達を横目でさっきまで俺達が座っていたベンチに腰掛ける。
粋「僕はここで見物でもさせてもらうよ。」
十紀人「粋。」
粋「なんだい。」
十紀人「俺はお前を許せないと思っていただけど俺はお前を許せなかったんじゃない俺は桜姉ちゃんを守れなかった俺とお前と向き合わないで逃げた俺自身を許せなかったんだ。」
粋「・・・なにを言ってるんだい?」
十紀人「俺は今決めた。俺はお前を・・昔のお前を取り戻してみせる。正義のヒーローをな。」
粋「意味不明だよ。どうやらどこかで頭を打ったららしいな。初めてくれるかな黒川。できるだけ苦痛を味合わせながら殺してやれ。」
黒川「・・・はい。」
十紀人「俺は正義の味方だ!!」
俺と黒川は見つめ合う。
いけるのか俺。俺は呼吸を整えて戦闘体制に入る。
大丈夫だ。今まで伊達に修行をしてきたわけじゃない。
しかし俺が黒川に勝つなんて出来ないだろう。だからせめて俺の思いを乗せた拳を一発を粋にぶつけれればいい。
それは拳に力を入れる。
最初に動いたのは黒川の方からだ。
俺と黒川の距離は一瞬でつめられて黒川の拳は真っ直ぐに俺の顔へとやってくる。
十紀人「待ってたよ。防御障壁!!」
防御障壁を手のひらにだけ展開して黒川の攻撃を受け流してバランスを崩す。
黒川「!!」
バランスを崩した黒川は前につんのめるようにして転びそうなる。
俺はその場から一気に粋の方に駆け出す。
十紀人「粋!!歯くいしばれよぉ!!」
粋の目の前に行き拳を高く振り上げる。
黒川「・・・驚きました。」
十紀人「っな!!」
いつの間にか黒川は俺の真横にいて攻撃態勢をとっていた。
俺の拳が粋に届くより早く黒川の拳は俺の腹を捉えようとしていた。
すかさず防御をするが防御を弾かれて俺は弾き飛ばされる。
なんとか受身は取れたが粋との距離は先程よりも離れてしまった。
さすがというべきか防御の上からでもかなりのダメージを受けた。
防御した腕はジンジンと痛みを放っている。
粋「黒川。僕を焦らさないでくれよ。」
黒川「申し訳御座いません。・・・デバイスオン。」
どうやら俺は黒川を本気にさせてしまったようだ。
もともとこの奇襲の一発にすべてを欠けていたのだけどそれも無残に阻止されてしまった。
大分こちらに不利なってしまった。
粋「十紀人。君は面白い技を使えるようになったんだね。」
十紀人「そうでもないさ。」
粋「本当に君は僕を怒らせるのがうまいみたいだ。」
十紀人「そうか、それは悪かったな。」
粋「いつもいつもいつもそうだ。君は常に僕の上を行く。僕が出来ることのさらに上にいて僕を見下す!!
おまえなんか大っ嫌いだ!!黒川!!」
黒川「はい。」
粋「手加減する必要はない!!奴を殺せ!!」
黒川「・・・。」
粋「どうした?僕の言うことが聞けなかったのか!?」
黒川「・・・いえ。任務遂行します。」
俺は覚悟を決めて神経を研ぎ澄ます。
どんな攻撃でも一発目をかわせれば相手は対外体制崩すそこを叩けば負けることはない。
クロから教わったことだ。
黒川はゆっくり俺に近づいてくる。
俺は再び呼吸を整えて黒川をじっと見る。
黒川「十紀人様。せめてもの情けです。痛みを感じさせず殺してあげますので抵抗しないでください。」
黒川は俺にだけ聞こえるようにそういった。
これは黒川なりの優しさなのだろ。だけど今の俺にはそれを受け入れることは出来ない。
十紀人「嬉しい誘いだけど俺は死ぬわけにはいかない。抵抗させてもらうよ。」
黒川「任務は絶対です。私はできる事なら貴方を殺したくはないです。」
十紀人「その気持だけで十分だ。」
黒川「残念です。貴方とは別の形で知り合いたかった。」
俺は黒川の口からそれだけ聞ければ十分だった。
ある程度距離がつまったところで黒川は踏み切って一瞬で距離を詰めてきた。
十紀人「防御障壁!!」
黒川の攻撃は防御障壁にぶつかる。
すごい衝撃だった。
今にも体ごと吹っ飛ばされそうなのを耐えながら攻撃を受け止める。
黒川「このような防御ではいつまでももちません。諦めてください。」
十紀人「俺は諦めないよ。向き合うって決めたんだ。俺は粋をあの頃の粋戻す。」
黒川「あなたが何を言っているか私にはわかりません。」
十紀人「そのうち分かるさ。」
黒川は何度となく攻撃を防御障壁にぶつける。
徐々にその攻撃は大振りになり勢いを増していく。
黒川「・・・・仲間を呼ばないのですか。」
十紀人「っく!!呼ばないさぁ。これは俺と粋の問題だ。それに彼女たちを巻き込みたくない。」
黒川「一人で私に勝てるとでも?」
十紀人「勝つつもりは無いさ。ただ俺は粋を一発殴りたいだけだ。それで俺も粋に殴ってもらう。」
黒川「主はそれで納得しないと思います。」
十紀人「俺たちは難しく考えすぎていただけなんだ。本当はもっと単純な話だった。だけど時間が難しくしてしまった。それだけなんだ。」
黒川「・・・・。どちらにしても貴方はもう主の下にはいけません。」
確かに難しいだろ。
俺は黒川の攻撃を受け止めるのでやっとだ。
それもいつまで続くかわからない。
黒川「・・・話は終わりです。」
黒川の持つ鎌に力が入るのがわかる。
それと同時に防御障壁が崩れていくのがわかる。
黒川「終わりです。」
俺は急いで防御障壁を張り替えようとするが黒川の攻撃のほうが早かった。
鎌は俺の目の前に迫ってきていた。
百鬼「終わりなのはお前であります。」
黒川「!!」
鎌が俺に当たる寸前で百鬼の拳が黒川の腹部をがっちりと捉えるのが見えた。
黒川はそのまま数メートル吹っ飛ばされて地面に倒れる。
十紀人「百鬼!なんで百鬼がここに。」
百鬼「散々捜し回ったであります。それよりマスター。百鬼が言ったこと覚えているでありますか?」
百鬼は俺の目の前に来て怒った顔をする。
十紀人「えぇ~っとなんだったけ。」
百鬼「寄り道をするなといったであります。」
十紀人「そ、そうだったね。」
百鬼「まぁお説教はあとであります。今はあいつを何とかしないといけないであります。」
そう言って百鬼は黒川の方を睨みつける。
黒川は既に立っていて服に着いたホコリを落としていた。
百鬼「黒川でありますね。」
黒川「百鬼ですか。十紀人様のデバイスは白雪だけかと思いましたがまさか貴方もだったとは・・。誤算ですね。」
百鬼「マスターを殺そうとした罪は重いであります。」
黒川「・・・・。」
白雪「ご主人様。待たせたな。」
黒川と百鬼の間に白雪が現れる。
十紀人「白雪!!」
クロ「私も居るのだがな。」
白雪の背後からクロが現れる。
十紀人「クロ!!」
白雪「はぁ。美味しいところが百鬼に取られてしまったな。」
百鬼「百鬼一人で十分であります。白雪たちは勝手についてきただけであります。」
白雪「貴様というやつは好き勝手いってくれるな。」
十紀人「二人共喧嘩はやめろ。」
白雪「もともとご主人様が悪いんだぞ!!私たちに黙ってこんなことするから!!」
百鬼「そうであります。」
あぁまずった。いらぬ火の粉を被ってしまった。
粋「白雪・・・。君なのかい。」
粋が白雪を見つめていた。
白雪「ん?お前は誰だ。」
粋「僕だよ。覚えていないの?昔君と会っているじゃないか。」
白雪「すまん。記憶にないな。」
粋「嘘だ。約束しただろ。大きくなったら契約を結ぶと。」
白雪「・・・・」
白雪は観察するように粋を見る。
白雪「・・違うな。お前は鼓動が違う。確かに私は昔一人の少年と約束を交わしたがお前のような鼓動はしていなかった。」
粋「白雪。それが僕だよ。」
黒川「・・・。」
粋「僕は君をずっと待っていたんだ。さぁ僕と契約を交わそう。子供のところ僕と約束したように。」
十紀人「どういう事だ?」
粋は白雪の声など聞かずに一歩一歩白雪に近づいていく。
白雪「それ以上、こちらに来るな。来るのであれは容赦なく貴様を斬る。」
粋「白雪。思い出してよ。僕だよ。伊集院粋だよ。」
黒川「主。それ以上近づいては危ないです。」
粋「黙れ!!お前なんて用済みなんだよ!!」
黒川「っく!!」
粋は前に出た黒川を蹴飛ばした。
白雪「腐っているな。」
粋「腐ってなんかないさ。おもちゃなんてどうでもいいだよ。思い出してよ。白雪。僕だよ。紅月の公園で約束したじゃないか。」
白雪「!!。なぜお前がそれを知っている。」
粋「僕だからだよ。君とあの日僕は約束したんだ。」
白雪「私は間違えたというのか?いやそんなはずはない。あの時の鼓動を間違えるはずはない。」
十紀人「・・・。」
白雪は自分の頭を左右に振る。自分が間違えるはずはないと肯定するように・・。
確かに白雪は俺と会ったときに言った。
昔約束をしたと。
俺にはその記憶がない。そして粋にはその記憶がある。
これこそが物語っている・・・。
白雪は間違っていたのだ。約束をした相手を・・。
そう、幼い頃に約束した相手は俺ではなく粋なのだ。
どうして間違えたかはわからない。
俺たちは黙って二人を見ていた。
白雪はただ黙って粋を見つめた。その瞳はどこか悲しそうな眼をしている。
粋も白雪を見つめた。何かを白雪に求めるような眼差しで。
あたりには沈黙が流れる。ただ夏を先取りした夜の虫たちの声が耳に鳴り響いていた。
・・・。
最初に沈黙を破ったのは白雪だった。
白雪「そうか。お前たっだのか。・・・ご主人様、聞いてくれ。私は昔、ある少年に出会った。」
白雪は俺の方を見て話し始めた。
内容は白雪がまだ作成されてまもない頃。まだ生まれて間もなくでデバイスも何も無い見た目は普通の女の子のようなときの話だった。
白雪は好奇心から研究所を抜けだして外に出た。
理由は簡単だ。外の世界を見てみたかったからだ。
研究所の窓から見える夕日に染まったオレンジ色の街は白雪から見ればとても暖かいものに思えた。
きっとそんな街に住む人たちは温かいのだろうと思い白雪は研究所を黙って一人で外に出たのだ。
しかし始めての世界で右も左もわからない幼い白雪にとって外の世界は厳しいものだった。
そう、白雪には街の人たちと決定的に違うものがあった。
それは髪の色と眼の色だ。
そんな彼女を見た人たちは得体の知れない者として白雪を見た。
その人達の目線に白雪は戸惑、その場から逃げ出したのだ。
幼い白雪からしたらそう言った目線はすごく冷たいものに感じて悲しくなった。
しかしどこに行ってもその目線から白雪が逃げ切れることなくその目線に恐怖すら感じるようになってきた。
気づけばそこは白雪の知らない場所だった。
帰る道もわからず。どこに行けばいいかわからない状態。
夕日の中途方にくれる白雪はいつの間にか公園にたどり着いていた。
白雪はその公園のブランコに腰を降ろして小さく揺れる。
白雪「私は外に出るべきではなかった・・。」
涙はでない。だけど悲しい感情が白雪を襲っていた。
夕日は徐々に傾いてオレンジ色は一層濃さを増して行く。
オレンジ色の街は温かくなかった。
白雪「温かいと思ったのだがな。」
白雪は苦笑の笑を浮かべる。
子供1「なんだあいつ。」
子供2「ん?何が?」
子供1「あいつだよ。髪の毛銀色だぜ。気持ちわりぃ。」
子供3「ほんとだ。」
そこに子供が3人やってきた。
子供たちは白雪を見て思い思いに白雪を罵った。
子供2「うわぁ。ほんとだ。なんだろうなあいつ。幽霊みたいだ。」
子供3「いや。おばあちゃんだろ。」
子供1「幽霊なら俺達が退治しないとイケないな。」
子供2「そうだな。」
子供3「退治したら。俺たちヒーローじゃん。」
白雪は立ち上がり子供たちの前に立つ。
子供1「おいおい幽霊がこっちに来たぞ。」
白雪「・・・なぜ、お前たちはそんな目で私を見る。」
子供2「何言ってるんだ?」
子供3「俺に聞くなよ。」
白雪「お前たちのその目はなんだ。なぜ私をそんな目でしか見れないんだ。」
子供2「気持ちわりんだよ!!」
一人の子供が近くにあった石を手にとって白雪に投げつける。
白雪「っく!!」
石は白雪の頭にあたり頭から赤いものが頬を伝って地面に落ちる。
子供1「おい!やっちまうぞ!!」
白雪「やめろ!!」
白雪の声は子供たちに届かず。
子供たちはひたすら近くにあった石を白雪に投げつけた。
白雪は抵抗できなかった。生まれたばかりの白雪は弱く普通の幼い女の子と変わらない。
そんな白雪がこの子供たちに勝てるハズもなく。白雪はただ身を丸めて子供たちの攻撃を耐えるしかなかったのだ。
どれくらいたったのだろう。痛みを耐えるだけでやっとだったためそれが短いか長いかはわからない。
突如、あたりに轟くくらいの声が響いた。
粋「そこの悪党ども!!その辺にしときな!!」
子供1「なんだお前。」
子供たちは石を投げる手を止めて粋を見た。
粋「俺か!俺は正義のヒーローだ!」
子供3「あいつ馬鹿だろ。」
粋「女の子をいじめる悪党は俺が成敗してやる!覚悟しろ!!」
粋はそのまま子供たちに向かって行った。
結果はボロ負けだった。
子供1「弱いじゃんこいつ。」
子供3「なにがヒーローだよ。」
子供2「全然カッコよくないし。」
粋「くぅ~。」
子供1「なんかあきた。帰ろうぜ。」
子供3「そうだな。」
子供たちはその場を去って行って粋と白雪だけ残された。
・・
・
子供1「あぁ~つまんなかったな。」
子供3「たしかにね。」
子供2「でもヒーローとか言って弱いの面白かったんだけど。」
子供1「たしかにばっかみたいだね。」
十紀人「おい。お前ら。」
子供1「ん?誰お前。」
十紀人「俺か、俺は正義の味方さ。」
子供2「っぷ!あはははは」
子供3「あはははは。また、馬鹿が現れた。」
十紀人「俺の友達がお前たちの世話になったみたいだな。」
子供1「お前さっきの見てたの?」
子供3「どうせビビって出て来なかったんだろ?」
子供2「今更出てきても遅いっての。」
十紀人「人の正義を邪魔するほど俺は野暮じゃない。」
子供1「なにいってんのこいつ。」
子供3「さぁ」
十紀人「お前たちに天罰を下す。」
子供1「おい。こいつもやっちまうぞ。」
子供2・3「おう!!」
十紀人「来い!!悪党ども!!」
・・・
・・
・
公園に取り残された二人はベンチに座っていた。
あたりはすっかりと暗くなり月は紅く染まっていた。
粋「大丈夫?」
白雪「あぁ。私は大丈夫だ。」
粋「そっかよかった。」
白雪「・・・なぜだ?」
粋「ん?なにが?」
白雪「なぜ私を助けた。」
粋「僕はヒーローだから」
白雪「ヒーロー?」
粋「そう。ヒーロー!ヒーローは弱い者の味方だから!!」
粋は笑顔になりベンチから飛び降りて白雪の前に立つ。
白雪「そうなのか。」
粋「うん。そうだ!名前なんていうの?」
白雪「名前?」
粋「うん。君の名前。」
白雪「私は白雪だ。」
粋「白雪か。いい名前だね。」
白雪「・・・。」
白雪にとって粋の存在は正しくヒーローだった。
この外の世界で出会った・・たった一人のヒーロー。
白雪「ありがとう。」
粋「お礼なんて言わないでよ。結果的に僕はあいつらに負けたんだから。」
白雪「そんなことない。お前はあいつらから私をしっかりと守ってくれたではないか。」
粋「ん~。じゃそのありがとうは素直に受け取っておくよ。」
白雪「そうしてくれ。」
粋「はぁ~。僕はあの子のようにはなれなかったなぁ。」
白雪「あの子?」
粋「うん。僕の憧れの子。僕と同じ年なんだけどね。優しくてカッコよくて強くて本当のヒーローみたいな子。」
白雪「会ってみたいなそんな子に。」
粋「僕たちはいつもここにいるからまた来れば会えるよ。」
白雪「そうなのか?」
粋「うん。」
白雪「・・・。」
粋がその子の話をするときの瞳はとても輝いていた。
その瞳から見るにその子は本当に粋の中でヒーローなのだということか白雪にもわかった。
それと同時に本当に会ってみたいと思えた。
この外の世界で初めて会ったヒーローの憧れのヒーロー。
白雪が出会った外の世界の人々はほんとに冷たく。悪党のようなものだったから。
白雪は不意に良いことを思い付き。
ベンチから立ち上がって粋の目の前に立った。
白雪「私はまだ弱い。だけどこれからもっと強くなる。そしてここでお前と約束しよう。」
粋「ん?なにを?」
白雪「私が大きくなったら私がお前を守ってやる。」
粋「そうなの?」
白雪「あぁ。約束だ。」
粋「じゃぁ僕も白雪を守るヒーローになるよ。」
白雪「わかった。」
粋「うん。約束。」
粋は白雪の目の前に小指を出す。
白雪「それはなんだ?」
粋「これは約束の証だよ。こうやって小指と小指を結んで約束するの。」
白雪「そうなのか。」
粋「うん!!」
そう言って粋は白雪の手を取り小指と小指を重ねた。
粋「約束だよ。」
白雪「約束だ。」
???「白雪。こんなことろにいたのか。」
丁度約束を終えると二人の目の前に白衣を着た中年くらいの男が現れた。
白雪「博士か。」
博士「探したぞ。勝手に研究所を抜けだしたらだめじゃないか。」
白雪「すまない。」
博士「まぁいい。研究所にもどるぞ。」
白雪「わかった。」
粋「もう、いっちゃうの?」
白雪「あぁ。大人になればまた会える。その時は私がお前を守ってやる。」
粋「うん。」
博士「白雪。早くこっちに来い。」
白雪「わかった今行く。」
白雪は博士のあとに続いて公園を出る。
公園の外には黒い車が止まっていた。
粋「またね!!」
白雪「あぁ。また会いに来る。」
粋は手を降った。別れを惜しむ様に。
車に乗り込むと博士も車に乗りドアを締める。
博士「出してくれ。」
博士がそう言うと車は静かにその場を離れた。
白雪「あっ。」
博士「どうした?」
白雪「名前を聞くの忘れてしまった。」
博士「そうか。」
白雪「まぁいいか。あの子の鼓動は覚えたからな。」
博士「・・・どうだった?」
白雪「なにがだ?」
博士「外の世界は。」
白雪「怖かった。みんな悪党の様に思えた。」
そう言い白雪は窓の外を眺めた。
街の空にはただ紅に染め上げられた月が一つ浮かんでいる。
そんな夜の出来事だった。
白雪「だが、その何もヒーローがいた。私を守ってくれるヒーローが。」
博士「そうか。」
・・・
・・
・
粋「行っちゃったな。」
十紀人「粋。」
粋「ん?・・十紀人!?どうしてそんなにボロボロなの!?」
十紀人「俺は正義のヒーローの味方だからな。略して正義の味方だ。」
粋「よくわかんないよ。」
十紀人「仇だ。受け取れ。」
十紀人は手に持っていたものを粋に渡した。
それはさっきの子供が胸に着けていた缶バッチだ。
粋「これは・・。」
十紀人「言っただろ。俺は正義の味方だって。」
粋「・・・やっぱり君には敵わないよ。」
桜「二人共そろそろ帰らないと怒られるよ。」
十紀人「桜姉ちゃんだ!!行くぞ。粋。」
粋「うん。」
桜「二人共ボロボロじゃない。どうしたの?」
十紀人「正義の味方ごっこだよ。」
桜「そう。正義の味方にはなれた?」
十紀人「なれたよな。粋。」
粋「そうだね。なれたかも知れない。」
桜「それはよかったわ。」
桜は優しく二人の頭を撫でた。
これが粋と白雪の出会いだった。
・・
・
白雪は静かにそう語った。
俺たちはそれを黙って聞くことしか出来なかった。
粋「覚えててくれたんだね。随分待ったよ。君を。」
白雪「・・・。」
白雪は黙って粋を見た。
粋「さぁ思い出したなら僕と契約を交わそうよ。白雪。」
白雪「お前は変わってしまったのだな。」
粋「え?」
白雪「お前の瞳からは昔見た強い眼差しは消え。優しかった鼓動は残酷なものになってしまった。何がそんなにもお前を変えてしまったのだ・・・。」
粋「僕は・・あの頃と何も変わっていないよ。白雪。僕は君のヒーローだよ。」
白雪「ヒーローは弱い者の味方ではなかったのか?」
粋「・・・・。」
白雪「お前の求めていたヒーローは誰を使って誰かを殺すようなヒーローだったのか?!」
粋「・・・・うるさい。」
白雪「・・・。」
粋「うるさいんだよ!!お前に何が分かる!!何をやっても勝てず。好きな人までとられた。そんな人の気持ちがお前らみたいな作り物に何がわかる!!お前は僕とさっさと契約をかわせばいいんだよ!!人形が!!」
白雪「・・・・私は既にご主人様と契約を交わした。」
白雪は拳を握りしめてただそれだけつぶやいた。今の白雪にはそれを言うことが精一杯だったのだろう。
自分が信じていったヒーローが今は見る姿もなくなってしまったのが許せなかったのだろ。
粋「・・・そうかい・・もういい。お前ら全員嫌いだ!!出て来い!ドールたち!!」
粋の合図で周りから黒川にそっくりなドール呼ばれた者立ちが現れた。
白雪「何だ。こいつらはどこから現れた。」
粋「このドールズたちは前の違うよ。黒川をさらに解析してこの前戦ったデータを組み合わせて僕がくつった新兵器だ。」
白雪「貴様というやつは!!」
百鬼「救いようの無い奴であります。」
白雪「百鬼。」
黙っていた百鬼が今にも襲いかかりそな白雪の隣に来てその肩に手をかけた。
クロ「全く変なものを作ってくれる。」
白雪「クロ。」
クロも白雪の横に来て話しかける。
十紀人「白雪。」
俺は白雪の頭に手を置き白雪を見つめた。
白雪「・・・ご主人様。」
申し訳なさそうに白雪は俺を見つめた。
十紀人「俺はお前が言ってくれた。過去ではなくて今を覚えていてくれればいいという言葉を忘れない」
白雪「・・・しかし私は!!」
俺は白雪の声を遮るように言い放つ。
十紀人「だけどな、白雪約束は守れ。」
白雪「約束?・・今更どうやって守ればいいんだ。」
十紀人「あの頃の粋を守ってやれ。」
白雪「え?」
十紀人「あいつの心は今悪党に支配されてる。その悪党を俺たち正義の味方がやっつけてやろう。」
白雪「・・・。」
十紀人「俺たちは正義のヒーローの味方だ。」
白雪「・・・そうか、間違えるはずだな。あの時、あいつが言っていた憧れのヒーローはご主人様だったのか・・。」
白雪はボッソと何かを言った。
十紀人「ん?何か言った?」
白雪「何でもない。・・約束は守らないとな。」
白雪は力強くうなずいた。
その顔にはもう迷いとかそういったものは微塵も感じられなかった。
白雪「やはり。私は間違えてかなったのだな。」
十紀人「ん?」
白雪「形は変わったかもしれないがこうして粋を助ける・・いや守るために戦えるのだから。貴方をご主人様にして間違はなかった。」
十紀人「そういってもらえると嬉しいよ。」
百鬼「ドールズという奴の数は1000から1100といったところでありますね。あいつの言うことが本当なら厳しい戦いになるであります。」
クロ「大層な数だな。確かにこれは厳しい戦いになりそうだ。」
白雪「それでも私たちは負けるわけにはいかに。そうだろご主人様。」
十紀人「あぁ。勝って昔の粋を守ってやろう。みんなに命令を出しておく・・・絶対に死ぬな。」
白雪「心得た。」
百鬼「了解であります。」
クロ「来るぞ。」
粋「お前たち!!こいつらを殺せ!!」
粋の合図でドールズ立ちは一斉に俺たち目掛けて飛んできた。
俺達もそれに合わせて飛び出した。
百鬼「デバイスオンであります。鋼鉄の甲冑!鬼金棒であります!!」
白雪「デバイスオン。来い。白銀の剣。雪風!!」
クロ「防御障壁!!」
百鬼と白雪はドールズに向かっていた。
さすがというべきだろう。
ドールズを次々に倒していく二人は可憐で優雅で美しくて戦っているとは思えないほどだった。
思わず俺は見とれてしまう。
クロ「十紀人。ぼーっとしてるとやられるぞ。」
十紀人「そうだな。」
そうだ、俺は粋のことろに行かないといけない。
俺はまっすぐに粋を見る。粋も俺をまっすぐ見ていた。
その瞳はどこか曇っていて昔の面影など全く無い。
最初に会ったときに気づいたはずたっだ。
だけど俺はそこから眼を背けたしまったのだ。いやずっと前から見ないようにしていた。
弱い自分を守るようにして殻に籠った時から・・。
でも、もう逃げない。ちゃんと粋と向き合わないといけないんだ。
俺の決着を付けるためにも・・粋のためにも・・。
粋は俺から眼をそらしてその場を立ち去ろうとする。
十紀人「今度は逃げない。まっすぐ、あの時のように俺はお前を見る。」
その後ろ姿に言い放つが粋は反応をしなかった。
クロ「人間。行くのか。」
十紀人「あぁ。昔の俺が助けれなかった。ヒーローを助けに行ってくる。」
クロ「私が止めても無駄だな。」
十紀人「うん、やっと決心がついたんだ。」
クロ「なら、私はお前を守るだけだ。」
十紀人「行くぞ。」
クロ「わかった。」
防御障壁を解いて俺とクロは粋目掛けて走りだした。
黒川「通しません」
十紀人「っく!!」
俺たちを遮るように黒川が俺たちの前に立ちはだかった。
粋の姿はだんだんと遠くなっていく。
十紀人「黒川どいてくれ。」
黒川「無理なお願いです。十紀人様。・・死んでもらいます。デバイスオン」
クロ「厄介な相手だな。」
黒川は静かに大鎌を取り出してこちらを見る。
十紀人「俺はお前と戦いない。」
黒川「貴方の意志など関係ありません。私はただ主からの命令に従うだけです。」
十紀人「俺は粋を救いたいだけだ!!」
黒川「命令なのです。」
クロ「人間。黒川に何を言っても無駄だ。」
どうすればいいんだ。俺やクロでは黒川には勝てない。
力の差がありすぎる。出来るといえば防御だけだ。
あたりを見渡して百鬼や白雪を呼ぼうにもドールズたちが紛れて姿が見えない。
クロ「防御障壁!!」
クロが叫ぶと同時に衝突音が耳を襲った。
クロ「よそ見をするな。」
十紀人「すまない。」
黒川「無駄な抵抗です。」
クロ「確かに無駄かもしれんが2対1ならなんとかなるかもしれん。」
黒川「そうですか・・。」
黒川は一度俺達と距離を取り直して大鎌を構える。
黒川「死神の型・・・斬。」
一瞬何が起こったのか理解できなかった。
黒川が何かを唱えたあと一瞬で俺達の前に来て空を斬るよに軽く大鎌を振り下ろした。
ただそれだけだった・・・。
しかし次の瞬間クロが貼っていた防御衝撃が綺麗に真っ二つに割れてクロが俺の方向に飛んできたのだ。
俺は反射的にクロを受け止める。
十紀人「クロ?」
呼びかけるがクロからの反応は全くなかった。
眼をつぶったまま動こうとしなかった。
掌に体の温かさとはちがう温かさを感じる。
そしてその温かさはじわりと掌全体に広がり地面に落ちていく。
十紀人「クロ?どうしたんだ?おい。クロ!?」
クロ「・・・・。」
俺はゆっくりと自分の掌を見る。
そこには濃い赤色をした液体が手から滴り降りるようにべっとりとついていた。
それが血だということに気付くのにはそう時間はかからなかった。
十紀人「クロ。起きてくれ!!クロ!!」
クロ「・・・。」
十紀人「どうしたんだ!!眼を開けてくれ!!」
黒川「・・・次は貴方の番です。」
そう言って黒川はゆっくり大鎌を振り上げる。
俺はそれをただ呆然と眺めた。
そして腕に力を入れて一気に大鎌を振り下ろす。
黒川「これで任務完了です。」
白雪「させるか!!」
武器と武器の衝突音で俺は我に返る。
白雪「ご主人様遅れてすまない。はああぁぁ!!」
白雪は黒川の武器を弾く。
それと同時に黒川は後飛びをして俺達から距離を取る。
白雪「ご主人様。無事か?」
白雪は構えを崩さずに目線だけこちらに向けて喋りかけてきた。
十紀人「俺は大丈夫だけど・・クロが・・・。」
クロ「うっ。」
クロはうっすらと眼を開ける。
十紀人「クロ!!」
クロ「すまない。ちょっと衝撃が強すぎて気を失ってしまったようだな。」
十紀人「良かった。死んだかと思ったぞ。」
クロ「勝手にわたしを殺すな。っく!」
そう言いながら俺の腕から飛びをりると、その衝撃でクロが一瞬ふらつく。
血は未だに止まってはいない。
十紀人「大丈夫か!?」
クロ「問題ない。・・・十紀人すまないが此処から先はお前だけで行ってくれ。」
十紀人「クロ。俺はそんな状況のお前を置いてはいけない。」
クロ「そんな顔をするな。私はそんなに柔じゃない。ただこのまま私がお前についていけば足手まといになる。」
十紀人「・・・・。」
クロ「・・・粋を助けるのだろ。私の事など心配する必要なない。行け。」
十紀人「・・・・わかった。だけど、約束してくれ。死なないと。」
クロ「あぁ、約束だ。」
十紀人「白雪!!」
白雪「分かっている。私は黒川の相手をすればいいのだろ。」
十紀人「あぁ。二人共絶対に死ぬなよ。それと白雪頼みがある。」
白雪「なんだ?」
白雪は不思議そうな顔を俺に向ける。
俺は白雪の耳元で話して黒川の隣を素通りして粋の元に急いだ。
黒川「・・・。」
白雪「やけにすんなり通すのだな。」
黒川「私が動けば貴方はすぐにわたしを破壊しにかかたでしょう。貴方と十紀人様の2対1では分が悪いですから。貴方を倒した後に任務を遂行させて頂きます。」
白雪「残念だが、倒されるのはお前の方だ。黒川。」
黒川「・・・そうですか。」
白雪「クロ。お前は休んでいろ。」
クロ「世話をかけるな。」
白雪「私とお前の仲だ気にするな。」
クロ「すまない。」
白雪「死ぬなよ。」
クロはその場から離れて木にもたれかかる。
ここからは白雪と黒川がみえるがクロにその二人を見るほどの余裕はなかった。
クロ「これはまずいな。いつまでもつか・・・。」
クロは自分の傷口を見てそう呟いた。
クロ「・・・」
クロはその場に座り込んで瞳を閉じる。
・・
・
黒川「では、行きます。」
黒川は言い終わると白雪に向かって一気に走りだした。
白雪「氷夷弾!!」
真正面から突っ込んで来た黒川に対して白雪は尖った氷を数本、黒川に向かって放つ。
黒川は上に高々とジャンプしてそれを避ける。
白雪「浅はかだな。空中では身動きがとれないだろ」
黒川「・・・。死神の型・・幻影。」
白雪「なに!!」
白雪は眼を見開いて驚いた。
何故なら空中にいた黒川が3人に増えたからだ。
それと同時に黒川は大鎌を振り上げて白雪に目掛けて急速に落下する。
白雪「氷夷弾!!」
それに対して白雪は二つの氷夷弾を2人の黒川にぶつけてける。
氷夷弾をぶつけられた2人の黒川は煙のように消えて1人の黒川が残る。
黒川「はずれです。」
残った黒川はそのまま大鎌を振り下ろし白雪に攻撃をくわえる。
白雪「っく!!」
白雪は攻撃を受け止めるが弾かれて仰け反ってしまった。
黒川「終わりです。」
着地と同時に振り下ろした鎌の刃を返して白雪を斬り上げる。
白雪「お前がだ!」
弾かれた武器を背中で持ち替え体を捻り攻撃を繰り出す。
襲ってきた黒川はその攻撃に為す術はなかった。
黒川は白雪の攻撃によって胴体を断絶させる。
黒川「・・・」
白雪「甘かったな。」
胴体を断絶させられた黒川が先程同様煙の様に消えた。
白雪「なに!」
黒川「それもはずれです。」
後ろから黒川の声がして白雪はとっさに振り返る。
刹那。
白雪の後ろに現れた黒川は既に攻撃のモーションに入っていて鎌は白雪を腹部を捉える寸前だった。
白雪「っく!!氷壁!!」
大鎌が白雪に当たる瞬間に激しい衝突音と煙が舞い上がり二人の姿が消える。
最初に煙の中から飛び出してきたのは白雪だった。
白雪「はぁ~はぁ~。」
白雪は乱れた呼吸を整えながら構えを取り直す。
白雪「っつ!」
左腕から赤色の雫が滴り落ちているのに白雪は気づいた。
見ると左腕には切り傷があった。
深手ではないが傷口からは血がにじみ出ていた。
白雪は呼吸を整え終わりジッと煙の方を見る。
すると煙の中から黒川がゆっくりと出てきた。
白雪「油断したぞ。いつのまにあんな技を仕えるようになったんだ。」
黒川「・・・・。」
白雪は黒川はに聞こえるように言ったが黒川からの返答はなかった。
黒川は白雪を見て口を開く。
黒川「詰めが甘かったようですね。まさかあそこまで追い詰めて仕留めれないとは。正直驚きました。」
黒川は顔色一つ変えずにそういった。
白雪「あまり私を甘く見るな黒川。さっきは油断したが次はない。」
黒川「そうでうすね。では、次は本気で貴方を仕留めたいと思います。」
白雪「来い。黒川。いくらでも相手をしてやる。」
黒川「主の生命力をあまり削りたくなかったのですかしかたありません・・死神の型・・大幻影。」
そう黒川が呟くと次々と黒川の分身が増えていった。
数はザッと見て30から40の間といったところだろう。
黒川「死神の型・・斬・・・ご確認を、お願いいたします。」
白雪「これははまずいな。・・・どうしたものか。」
・・・
・・
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