Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

田舎の一軒家から海まで車で一時間。赤坂家一同でお弁当を作ったり、いろいろと準備をした後、朝ごはんを食べ、車で出発してからもう二十分ほど経ったかな。運転手の僕はなぜかしらん、ドキドキしている。「ブルース・ブラザーズ」のサントラが僕のテンションを高めているのかもしれない。僕はジョン・ベルーシの真似をしながら海を目指す。
「あ。おとーさん。ケータイなってるー。」
カバンに入れて後ろ座席に置いておいた携帯が鳴りだしたようだ。小萌が運転座席の後ろをバフバフ叩く。
「おう。小萌。携帯出してお母さんに渡して。」
「はーい。」
「え。私開いてもいいの?」
「うん。急な用事だったらアレだし。」
「はい。おかーさん。」
「ありがと。」パカッ。「お父さん。松本の竜馬さんから。」
「お。竜馬か。なんだろ。ちょっと車止めるよ。」
「私が運転する。」
「頼むわ。」
車を停止させて僕はあゆみから受け取った携帯の通話ボタンを押す。そしてドアを開けて外に出る。
『もしもし』「おう。久しぶり。」『ヒヒッ。元気してるか?』「何事もなく。元気にしてるぜぃ」
松本とは甲子園のアレ以来何かと仲良くなって(はじめはとにかく恨まれてたけど)今でもちょくちょく一緒に飲みに行ったりしている。高校時代から変わらず、生粋の体育会系で、日焼けが染みついてしまったのか冬でも色が黒い。ガッツリ抉られた胸の傷のせいで「ニセ拳志郎」と呼ばれていたらしい。今でも筋肉隆々でプロ野球選手を目指している。そんなかわいそうな男だ。まぁ僕の数少ない親友の一人だと言えるだろう。
『でな。お前JEAって知ってるか?』「JEA?知らないな」『ケッ。田舎もんが。』
「お父さん。車出すから早く乗って」
「おう」ガチャ。バタン。
『お。今外か?』「家族で海行く途中」『だったら手短に話すわ』「そうしてくれると嬉しいな。」『JEAってのはジャパンエマージェンシーアーミーの略よ。最近特殊部隊が日本で組まれることになったらしくてな。俺召集されちゃったのよ』「え!お前戦争すんの?」『さぁ。それはわからんけど、なんか明後日から島根に行く。』「そっか。まぁ頑張れよ。」『んでよう。今車で兵庫まで来てんだわ。お前がいる鳥取でゆっくり酒飲んで祝賀会しようと思ってたんだけど。無理そうだな』「わざわざ神奈川から車でよう来るなぁ。」『へへへ。ホントは国から移動費からなにから出るらしいんだが、あえて車で行く俺の美学?』「お前らしいよ。」『また帰るときにお前ン家寄ることにするぜ。』「了解。まぁまたな」『ウィーっす』
カコッ。ツーツー。パタム。
「竜馬さん何て?」とあゆみ。
「りゅうのおっちゃん!うち来るの?」と小萌。
「なんかJEAだかの軍隊?に召集されて今から島根行くんだと。」
「あららー。大変じゃない。戦争するって?」
「りゅうのおっちゃん来ないのー。ぶー。」
「いやぁ。戦争するンかどうかは分かんないって。テレビでも新聞でもそんな物騒な話聞かないしなぁ。帰るときに家寄っていいかって。」
「家寄るのは構わないけどなんか心配だわ。」
「ヤター!りゅうのおっちゃんいつ来るのー」
「いつ来るかとは言ってなかったな。」
「ぶー」
あともう少ししたら海が見えてくるはずだ。竜馬の事は僕もちょっと心配だがあいつならなんでもヒョイヒョイこなしてしまうだろう。ひとまず僕の今の一番の問題は海ではじめになにをして遊ぶかだ。ブルース・ブラザーズいいね!ヘイ!バーテンダー!チキチキ。

       

表紙
Tweet

Neetsha