Neetel Inside ニートノベル
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海はとても広くて大きくて、青かった。天気もとても良くて、遠くにある大きな入道雲がまるでお化けみたいに口を開いているようにはっきりと見えた。チリチリと音を立てそうな日差しはちょっときつかったけれど、ちゃんとビーチパラソルも用意してあったから大丈夫だった。
小萌もあゆみも水着になって、僕も海パン一丁で海に飛び込んだ。まだまだ僕も若いんだ!そう。きっとそうだ。ちょくちょく休憩を挟みながら、小萌に釣りを教え、あゆみと三人で立派な砂のお城を建築し、ビーチバレーをポンポンはずませ、浮輪に乗ったあゆみと小萌に水を掛け、アイスボックスの中に入っていたお弁当を食べ、うっかり砂のお城を踏みつぶし、小萌に泣かれ、ご機嫌取りにアイスを買って食べさせたりなんかしているうちに夕焼けになってきたので、帰ることにする。
あゆみと小萌の水着姿をカメラに収めることができたので、僕は満足だ。おっと。鼻血が。
まだ水際で貝を拾って遊んでいる小萌をチラチラと監視しながらあゆみと後片付けを始める。
「小萌は元気だなぁ」
「若いっていいわね」
「僕だってまだまだ!」
「もうおっさんじゃない。」
「いいや。まだ若いんだぁあ」
 地元の小学生たちが砂浜野球をしていて、飛んできた球を僕は少年たちに投げ返す。とびっきりのカーブをかけて「おじさん。球めっちゃ曲がるで!」「すげえ!あんなんはじめて見たー」「ありがとう。おじさん」
「ほらな。」
なんて二人で話しながら僕らはビーチパラソルをたたみ、ビニールシートを巻いた。
オレンジ色に変わってきた空がとても美しかった。程よい疲労感と海の懐かしい香りが心地よく、ずっとこの瞬間が続けばいいなと思った。月並みだけど幸せだった。
「おーい。小萌帰るぞ!」
「はーい」
パタパタと砂を蹴りながら小萌がかわいらしくこちらに走ってくる。
「おとーさーん!」その笑みが何とも愛しい。

ゴガーーン。

真っ白い何かが目の前の小萌を呑みこむ。一瞬で視界が真っ白になって轟音にやられた僕は尻もちを付く。ぼんやりとした頭であゆみの方を振り向くとすごい目を見開いて絶叫しているあゆみがいる。
「こもえーッ!」
僕はまだ真っ白な余韻が残る小萌のいるであろう場所に叫ぶ。

雷だ

そう気がついたのは僕の前髪がチリチリになっていることに気がついたときだった。

       

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