Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 不可解なことばかりだった。自分の置かれている状況と、周りと自分の不可思議な温度差。何がどうなっている?

「ここは……?」
「学校の保健室。時間は夜の二時過ぎ」
 生徒会長さんは淡々と話す。いや待て。そもそも何故学校の保健室で寝てるんだ。自分は街外れの公園で上座と話をしていたはず――


「――ああっ!? あの怪物は!? 上座さんはどうなったんですかっ!?」
「私が倒したよ。このXM2010でね。クウは無事。今は生徒会室にいる」

 副会長、もとい姐さんはそう言うと背中に背負っていたスナイパーライフルを撫でながら言った。
 一気に力が抜ける。良かった。彼女に何かあったら、自分は罪悪感に押し潰されてだろう。
 というか……何故スナイパーライフルなんて物を一高校生が持っている。


「あの……先輩達は一体……」
「レジスタンス」


 生徒会長さんは即答した。


「レジスタンス……? 何に対抗してるんですか?」
「世界さ。俺達を排除しようとする、この世界全てが敵だ。世界に銃口を、抗う者達に手を! 俺達はこの腐った世界を変える!!」


『中二病乙』
 間髪入れずにチュウ太が突っこむ。むしろ英正の言いたかった思いを代弁してくれた形だ。……というか無事だったんだな、お前。
『俺と英正は一心同体! お前が無事なら俺も無事!』
(思考を読むなし)

 茶番は置いといて、この人は本気で言っているのだろうか。だとしたら相当いっちゃってる人だ。こんな人が生徒会長だなんて、この学校も先が見える。けれど……


「佐々木、日向野君ひいてる」
「いや、本当のことだし……」
「誇張し過ぎなのよ」
「誇張? いいや、これは末端に過ぎない。奴らの真の目的は俺らの抹殺ではなく、世界の秩序を奪うことだ!」


 ……正直、昼のあの誠実そうな性格と今のアニメ見過ぎの成れの果てのような彼に戸惑うばかりだった。だが、今自分が生きていること、一般高校生がおよそ関わらないだろうこと、それらが妙な説得力を帯びていて、外面とは裏腹に内面ではそれなりに受け入れている自分がいた。

「正直……訳が分かりません」
「でしょうね」
 ククッっと姐さんは苦笑する。
「ただ……」
 英正は続ける。
「ありがとうございました。僕と、上座さんを助けてくれて」
「ん。素直な奴は好きだぞ!」
 姐さんは右拳を英正に突き出してニカッと笑った。英正もそれに応答して軽く微笑む。
「ぅぉぃ。俺も一応頑張ったんだぜ?」
 若干不満そうな表情でボソっと生徒会長さんは言った。
「生徒会長さんも、ありがとうございました」
「そう? そう? いや別に構わないさ!!」


 安心感。日常が戻ってきたような気がした。


「日向野!! 大丈夫!?」
「お、上座。この通り元気さ」
「それは佐々木のセリフじゃないでしょうに……」


 一瞬だけだけど、本来あるべき自分の立場に戻れたような。


「そういやそうだ! あははははは!!」
「まったく……」
「あははは……はぁ……。さあて、役者も揃ったことだし……」
 空気がすっと冷えたような錯覚。


 ただそれはすべて感じたままに。思った通りに――


「本題に入ろうか」
 先程とは打って変わった、鋭い眼光が場を支配する。


 ――刹那的な物だった。


       

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