Neetel Inside ニートノベル
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 廊下のきしむ音をいちいち気にしながらゆっくりと自分の部屋に戻った。ドア閉めるとすぐに部屋の窓の鍵を確かめ、閉まっていることを何度も確認するとカーテンを閉めた。部屋の中は光という光は全て遮断された。
 不意に背中に気配を感じた。だが振り返って見ても暗くて分からない。携帯電話を開くとそれからこぼれる光をたよりに部屋の電気のボタンを探し押した。
 誰もいないことを確認し、安堵のため息をつくとまた電気を消した。
 布団に潜る。眠気は無い。携帯電話をまた開く。二時十三分。
 寝よう。そう思い目を閉じる。無心に、ただ寝ることだけを考える。寝てしまえば、恐怖心も関係ない。だがそう思えば思うほど頭は冴えてくる。
 なにか、気を紛らわそうか。ではオーソドックスに羊さんを探す旅に出かけよう。まずは一匹。その隣に二匹目。柵の向こうには三匹目が……。これの難点は何匹数えたら寝られるのだろうかとふと考えてしまうと、もう寝れないということだ。少なくとも英正はそうだ。そして十匹で既にそれを考えてしまう自分の忍耐力の無さを英正は呪った。
 また携帯電話を開く。二時十五分。まだ二分かそころらしか経っていない。こうなったら覚悟を決めてずっと起きているか。日が昇るのははやくて後四時間。四時間も粘れるのか? 羊を十匹も数えられない自分が? 
 
『怖いか?』
 久しく聞かなかった声がした。しかも自分の中から。まあ久しく聞かなかったと言っても数分程度。でも、何時間も過ごしたような感じがしていた。
『まあ怖がるなと言っても、無理だろうな』
 そう少し苦笑いしたようなニュアンスで声の主は言った。
(……少し、寝れないくらいだよ。そんなに怖くない)
 自分でも何言っているか訳わからない。でも向こうに自分の精神状態だけは伝わったらしく、ククッと苦笑いする声がした。そして、急に真剣な声になった。
『これから、これがまだ楽しい部類に入るって思うくらいのことが起こるかもしれない』
 それを聞いた英正は口を横一線にしたまま、その場に固まってなにもしようとはしなかった。声の主も黙った。

 そのまま、何時間が過ぎただろうか。気がつくと携帯電話の目覚ましアラームのなる音が部屋中に響き渡っていた。夢ごこちの中、とりあえずアラームを止めるべく携帯電話を探す。昨日のは、夢だったのだろうか? それにしても携帯電話がいつも寝る前に置いている所にない。一体どこから鳴っているんだろう……。
 そして一分後、それがいつもの置き場所とは違い、ベットの横に無造作に落ちていたのを拾った時、英正は昨日のことがすべて本当だったのだと改めて確信した。

       

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