Neetel Inside ニートノベル
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何故仮面を被ってるのだろうか。
同じようなことで悩んだのだろうか。
あるいはただの変態なんだろうか。


HSのことを考える時間が
とても有意義に感じられた。
長い授業が少しでも短く感じられる。
なんとなく楽しい気持ちになってしまった。


「何にやにやしてんの?」
「気色悪っ」

そんな
なんとなく楽しい気持ちを
一瞬にして粉微塵に吹き飛ばすのは
角の席に座ってる伊藤と山本だった。

「そんな顔面で笑われたら不愉快だわ。」
「あっ、そうだ!」


伊藤が席を立つ。
手に持ってたのは太い油性のペンだった。
二度目なので、何をされるか分かっていた。

「塗りつぶしたらわかんなくなんじゃね?」
「いいねぇー、つぶそうつぶそう!!」

持ってたペンで私の顔を
塗りつぶそうとする。抵抗はするものの
やっぱり勝てない。山本が遠くから
馬鹿みたいな大声で私をあざ笑う。



念のために言っておくが、今は授業中である。
普通なら、席から立つことも、大声で笑うことも
許されないはずなのに、それが通ってしまう。

さらに言っておくが、先生の目も、生徒の目もある。

先生はまるで私が存在しないかのように
黒板に向かって、授業をすすめようとする。
皆は次の標的になるまいと、あらゆる手段を使う。
直接被害を加えようともしないものの、
遠くから私をみて笑うやつもいる。

胸の辺りがぎゅっと締め付けられる。
なんで頭で感じてるのに、胸が苦しくなるんだろう。
だから”心”臓なのかな。

時間をやり過ごすために、とにかく何でも
無駄なことをたくさん考えた。
でも、なかなか時間は過ぎない、終わってくれない。

チャイムが鳴り、この顔で授業は受けれまいと
私は学校を早退した。下校時も、できるだけひと気が
無いところを歩いて帰らなければならない。

駅まで着くと、
トイレにこもり、私は涙を流した。


家に帰るとすぐに、洗面所に駆け込んだ。
少しでも早く、顔に付いたインクをとりたかった。
汚い顔を、みにくい顔を、ゴシゴシとこすった
消えればいいんだ、消えればいいんだ。
心の中で何度も叫んだ。
伊藤も山本も、インクも、私の顔も。

顔を流す水が、黒く濁って排水溝へ流れ落ちた。
インクは流れ落ちても、胸の痛みは流れ落ちない。
苦しくなると同時に、いがいがした感覚を持ち始めた。

       

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