Neetel Inside ニートノベル
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「おは陽、おは陽、ハムにいるよー」
「まぶC、まぶC、和田がいるのー」

「お前らうるせー!なんJでやれ!!」

サンライトライオット、予選会を突破したボクらはホテルのカラオケで声を張り上げていた。遠方からの出演者のことも配慮し、

明日の決勝トーナメント出場バンドには大会からホテルの1室が与えられていてボクらはそこで英気を養っていた。

ボクはマイクを布団に放り投げるとベースに弦を張っているマッスに声をかけた。

「おいマッスー、某巨大掲示板でカラオケは出来ないだろー?ちゃんと突っ込んでくれないと困るぜー?」
「いちいちお前に的確に突っ込んでられねぇよ。明日は決勝戦までいくと5曲以上演奏するんだろ?セットリストは考えてるのかよ?」

ああそうか、ここで明日の決勝トーナメントのルールを整理しよう。決勝トーナメントは今日の予選を勝ち抜いた6組とこれまでの功績を考えて

シードされた(正確に言うと音楽界がメディアに売り出したい)『きんぎょ in the box』とネットで人気の『惨劇メークアップ』の2バンドを加えた8組で争われる。

対戦方式はトーナメント方式で持ち時間10分で演奏し、持ち点100点の10人の審査員投票の他に、観客や地元テレビ視聴者からの投票によるひとり1点のツイッター投票を総合した得点が多い方が次に勝ち上がることが出来る。

「さっぱりわからん」という方は2曲演奏して得点が高い方が次に勝ち上がれる『音楽版M―1』をイメージして欲しい。

だからマッスが言ったように決勝まで勝ち上がる為には色々演奏曲を工夫する必要が出てくるのである。

地元テレビとの簡単な契約でカバー曲や、決勝トーナメントで1度演奏した曲は再び演奏できない事になっているのもボクらを悩ませる理由のひとつになっていた。

しばらくしてミルキィホームズのOPを歌い終えたあつし君がマイクをテレビの横の充電器に突き刺した。32型のブラウン菅には58点の文字が踊っている。はは、相変わらず平凡な点数だ。

弦を張り終えたマッスがベットから立ち上がって言った。

「よし、風呂でも浴びてくるか。ティラノ、行くか?」
「ああ、後でいくよ。オレ、セットリスト考えなきゃいけないから」
「あんまりひとりで抱えんなよ。あつしはどうする?」「おれも一緒にいくよ」

そういうと2人は部屋から出て行った。ボクはドアに耳を押し付け足音が遠くなる事を確認すると服を脱ぎ捨ててベットにルパンダイブを決行した。

うほー、やわらけー!体が沈む高級マットをしばらく堪能するとちょっとだけ映るペイチャンネルのAVをオカズにちんこを擦り上げた。

ウジウジ悩んでたって仕方ねぇ。俺は今日、約21分の1の倍率を勝ち抜いて予選会を突破したんだ。どーだすげぇだろボンクラ共。そんな自分にご褒美オナニー。

「ハウッ!ハホッ!ベボベ!ベースボールベアッー!!!」

全然関係ないロックバンドの名前を口走るとボクはベット横の観葉植物におちんぽシロップ16gをぶちまけた。途中から読んだ人、すいません。

「Tーれっくす」はヘンタイ向けの小説です。再び火照ったベットに潜り込み、互いのカラミを称え合うとテーブルに置いた携帯が鳴った。

「あ、三月さん!?...なんだあつこさんか」
「なんだとは何よ。いま何やってんの?」
「オナニーしてたけど」
「え?やだ、もしかして私のことオカズにしてたりとか?!」
「いや、全然。フツーに名も無き金髪ギャルで抜いてた。で、何のよう?」
「あ、そうそう!T-Mass、決勝進出おめでとう!明日、にわとりの卵採ったら見に行くから!頑張ってね!」
「ああ、ありがとう。あつこさんから教えてもらったソフトタッチ奏法のおかげで力まずに演奏出来たよ。イッツオーライ、明日は絶対優勝してやるぜ!」
「そうだよ、そのいきで明日は優勝、かっさらっちゃってよ。忙しいだろうから切るね。パンツ穿けよ!徹夜するなよ!」

いかりや長介のようなセリフで締めくくるとあつこさんは電話を切った。するとすぐさま着信があった。病院で知り合ったユキヒロ少年、

学校のクラスメート、作者に存在を忘れられた司くんなどたくさんの人から電話やメールがどっさりきた。なんだか有名人になった気持ちだ。はは。

しばらくするとあつし君がドアを開けた。

「あ!?ティラノ、素っ裸でナニやってんだよ!?」

あ、やべ。携帯を放り投げ、パンツを穿くと付き合いの長いマッスが察したようにボクに聞いた。

「手、床。どっちでやったんだ?」
「はい、床です」
「あーあ、ベット二つしかねぇのにどうするんだよ!」

声をあげるあつし君を見てマッスはため息をついた。

「まぁ、いいや。オレはさっき知り合った女の子バンドの部屋で寝るから」
「決戦前夜に女抱こうとしてんじゃねぇよ。まぁ、近こうよれ」
「いやだよ。それよりもう消灯時間だ。ティラノ、明日はちゃんと朝シャンしろよな」
「セットリストは明日考えようよ。今日はもう、休め...!休め...!」

あつし君のよくわかんないマンガのモノマネを聞きながらボクらは就寝の支度をした。つーか、あつし君とあつこさんがわかりづらいな。その辺は察して欲しい。

今日1日の疲れもあり、ボクらはすぐに眠りについた。ロックの神様、ボク達T-Massを優勝させてください。ベットに潜ってそんな夢を見ていると急な痛みで目が覚めた。

え?まさか、こんな時に...!焦ったボクはベットから飛び起きて急いでウエストポーチから痛み止めの薬を取り出し、水道水でそれを飲み込んだ。

あと1日、あと1日でいいんだ。もってくれ。俺の右足首。脂汗を吹きながら死んだように眠るマッスと床でいびきをかくあつし君を痛みがひくまでずっと見つめていた。

       

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