「ハッ」
キョウコさんは目を覚ましました。電車で居眠りをすると逆に疲れてしまうことがしばしばですが、この日は妙にすっきりとした気分でした。
すぐ隣のボックスシートにいた女性は、すでにいなくなっていました。
それどころではありません。
電車は止まっていて、扉が開いていました。
「あっ……!!!」
そこは最寄りの駅、つまり降りる駅でした。手荷物をつかみ、ばたばたと走って間一髪、ぎりぎりのところで飛び出しました。。
「…………」
さっきまで見ていた夢。キョウコさんはしっかりと覚えていました。
最後に聞いたカクテルの名前。決して忘れないようにと、口ずさみながらキョウコさんは歩き出しました。