Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

――あれからどうなっただろう?あれからどれくらい時間が経っただろう?ぼんやりとした闇の中から俺は自分の意識を取り戻した。

俺はどうやらまだこの世界で息をしているようだ。背中にマットレスの感触、首元には羽毛が詰まった掛け布団。―ここはどこかの病室のようだ。

俺は自分の存在を現世に繋ぎ留めるためにゆっくりと目を開く。薄暗い部屋の中で瑠璃色の瞳をした少女と目があう。

「気がついたのね。お兄ちゃん」

俺は妹のアイコの方を向くのにずいぶんと時間が掛かった。感覚が麻痺しているか体を打った衝撃で首がむち打ちになっているのだろう。

アイコは俺の顔を見るといつものようにふっと笑った。

「あの日からずっと成長しないのね」

その言葉を受けて俺はゆっくりと天井に向けて首を動かす。違う。成長しようとしても何かが俺の邪魔をする。それは『テル』なのかもしれないし、
自意識によるものなのかもしれない。「とにかく生きててくれて良かったわ」

アイコがベッドに近づいて静かに俺の額に手を置く。頭には包帯が巻かれているらしく、アイコの体温を感じる事はなかった。

「とても心配したのよ」アイコがゆっくりと俺の首に手を回し抱きかかえる。俺は両の目から涙を流した。孤独で冷たい世界の中でアイコだけがずっと俺の味方だった。

涙を指の腹で拭うとアイコは布団をめくりベッドの中に潜り込んだ。俺はベッドで妹と抱き合う姿勢になった。妹のめくれたスカートの太ももに俺の隆起した陰茎があたる。

「まぁ、恥ずかしい人!」からかうように、呆れたようにアイコが声を出す。母や看護師は近くにはいないようだ。俺はアイコを抱き寄せた。

アイコは特に抵抗せず俺の両手にくるまれた。ぽってりとした唇にキスをするとアイコは俺の口に舌を入れてきた。慌てて顔を離すとアイコが恥ずかしそうな顔でニコっと笑った。

「いいの。私、お兄ちゃんとだったら」

アイコが俺に体を近づける。アイコの瞳を見ていると価値観や良心が吹っ飛びそうだ。

「いけない」俺はベッドの中から体を起こした。「今日、何日だ?こんな所にはいられない」間一髪の所で理性を取り戻すとうっとりした表情を浮かべる妹に問いただした。

「今日は7月1日。今は夜の7時半よ」「なんだって!?」

俺は勢い良く掛け布団をめくり上げる。「痛ッ!」ベッドから立ち上がろうとすると体に激痛が走る。そのままベッドに座り込むとアイコが俺の首元に腕を回した。

「いまさら間に合わないわ。それにその体じゃ演奏するなんて無理」

アイコが俺の下腹部に腕を伸ばす。寝巻きの上からさすられると俺の陰茎は再び勃起した。

「母さんは先に帰らせたわ。ナースコールもこの部屋からは届かない。私と気持ちいい事、しましょうよ」

俺は耳元で囁く妹に抵抗できないでいる。「苦しそう」アイコが俺の寝巻きとトランクスの間に指をかける。


―俺はその時とても人には言えないような恥ずかしくて暴力的な想像をした。

アイコは俺の勃起した陰茎を見ると「わっ」と顔を赤らめて向こうを見る。俺は妹の体を抱き、丁寧に服を脱がすと全身に吸いつくようにキスをして
彼女の肉と肉の割れ目に勃起したそれをねじり込み腰を振り始める。取り戻しかけた理性は吹っ飛んで兄妹は肉欲に狂った獣に変貌する―


俺はそこまでイメージを広げるとトランクスのゴムをめくる妹の手を掴んだ。

「やめろ。俺達は兄妹だ」それを聞いてアイコが驚いた顔をして手を引っ込める。そして目に涙を溜めて俺にこう言った。

「私が何をしたいか、知ってるくせにっ!」俺は痛みを抑えながらゆっくりとベッドから立ち上がった。

「日本では親近相姦は禁止されていない」俺は棚に閉まってあった自分の服を出してそれに着替えながらアイコに言った。

「俺もおまえを抱きたいと思う。それは事実だよ。でも俺には今、やらなくちゃいけない事がある」

気持ちを落ち着けながら俺はトレーナーに腕を通す。ベッドの上で泣きだす妹を見ていたたまれない気持ちになったが、友や泉との約束を思い出し俺は心を奮い立たせた。

俺は死の誘惑を振り切り、仲間がいる戦場を目指す。病院の入口のドアを開けると俺は見知らぬ夜の道を勘を頼りに歩き出した。

       

表紙
Tweet

Neetsha