(はぁ、ここどこ・・・・・・?)
額に汗を浮かべながら進んでいく。
LIPスラグのアンダーレイルに装備されたフラッシュライトだけで照らす薄暗い廊下が不意に分かれ道に差し掛かった。十時に交差する通路のすべてから誰かに見られているような緊張感。左、正面、右、どの道が最短の脱出経路なのか。
(出なきゃ・・・・・・どこにいけばいいんだろ・・・・・・)
無意識の焦りからとんとん、と床を踏みつけると、自分で自分を急かしているようだ。
(怖い。帰りたい。みんなに会いたい。死にたくない。どうして私が・・・なんで? 嫌、やだ、怖い! 怖い! 帰りたいよ!」
気づけば叫んでいた。呼吸が荒くなり、瞳に涙が溜まる。パニックに陥った少女の判断力は著しく鈍ってゆく。
「はぁ、はぁ」
それまで歩いていた道の続き、正面の廊下を走りだす。
10m程度走ったところで暗闇から突如視界に現れたなにかに衝突し、小さな尻餅をついた。
「いたっ。はぁ、なに・・・・・・」
ゆっくりと顔をあげ正面をみると、イエローのランプが微かに装甲を照らしている。彼女にとっては死を意味するイエローだ。
「・・・・・・ぁ、、、、、、」
反射的に少女のLIPスラグのフラッシュライトが的確になにかの頭部を捉える。
が、震える指にまったく力が入らない。腕の力が抜け、反射的に構えた銃の照準が下がってゆく。
「た、、、、、、たす・・・・・・く、くぅぅ、はぁ、け、」
後ろに倒れこみ、うつ伏せになると、じわりとズボンが濡れたのが分かった。
立ち上がることさえ出来ない下半身を引っ張り、口からは声にならない命乞いを漏らしながら、来た道を芋虫のように這いずりながら逃げる。
「い。ゃ・・・・・・、、、、、、こぉ、ころ。。。。。。さ、な。・・・・・・っぃ、・・・・・・れ」
進行方向に見える先ほどの十字の角からも、同じイエローのランプが浮かび上がる。
「・・・・・・そ、んな」
少女の表情が絶望に歪み、意識を失った。
BPSがうつ伏せに倒れている少女を抱き上げると、肩に担いで闇に消えた。