Neetel Inside ニートノベル
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 作家志望が集まるワナビスレ
1 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 ワナビたちのスレです

100 自分:名も無き作家志望[] ID:raisuke
 二話目って何書いていいのかワカンナイ(´・_・`)
 とりあえず最終目的とライバルキャラみたいなの出しとけばいいのかな?
 人気が出そうなライバルってどんな感じだろ? ちなみにラブコメ
 メインヒロインは関西弁のデブス

101 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 >>100
 ツンデレお嬢様貧乳ロリ眼鏡委員長実は隠れオタク
 好きなのを選べ

102 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 デブスとか誰得だよ
 そもそもブサイクははじめから出てこない方が良いに決まってるだろ……

103 自分:名も無き作家志望[] ID:raisuke
 >>102
 はい、その通りです。生まれてきてスンマセン……
 今、関西弁のデブが人気あるって噂で聞いて(汗)
 それじゃメインヒロインは、本当はブスでは無かったっと ((φ(..。)カキカキ
 >>101
その中から人気出そうなのを貰うよ
 とりあえずエロくすればいいんだろ(笑)

104 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 ただエロければいいわけじゃなくってだな
 恥じらいとか羞恥心も大事だとオジサンは思うんだよ
 あとは、ギャップってのもあるね
 「気弱で大人しそうな女の子が実は毒舌」とか
 「なんでもできそうな完璧超人がヘタ過ぎて激マズな料理作ったり」

105 自分:名も無き作家志望[] ID:raisuke
 >>104
 ありがとうございます
 「恥じらい」と「ギャップ」っすね。ちょろいちょろい
 でも主人公が料理下手くそな設定なんですよ。困ったな(´・_・`)

   □■□

 登場人物紹介
 佐々木 浩一:この作品の主人公。身に降りかかる不幸に負けないように頑張る
 「普通の」高校生

 矢内 神奈子:メインヒロイン。ピンク髪でオッドアイのデブ。どうやらブサイクでは無いようだ。

 レストラン店長:当て馬(サブヒロイン)。ツンデレお嬢様貧乳ロリ眼鏡委員長実は隠れオタク。

   □■□

 皆さん、おはようございます! おなじみ皆の恋人、矢内神奈子です! 今日は世にも不思議な生物「はぐれ金髪ヤンキー」の生態に迫ってみようと思います。
 おおっ、はぐれ金髪ヤンキーの部屋は常に綺麗に片付いているようですね。ポスターが水着のグラビアなのも昭和っぽくて神奈子的に高ポイントです。あそこでのんきに眠っているのが今回のターゲットはぐれ金髪ヤンキーです。
 しっ、静かに! はぐれ金髪ヤンキーは非常に獰猛な生物です。奴のテリトリーに入ったが最期! 強靭な腕力によってバラバラに引き裂かれて鋭く発達した牙で頭から食われてしまうかも知れません。 ハァハァ……私、自分で言ってて興奮して参りました///
 おーっ、今なら奴の寝床に忍び込めそうです。ぐっすり眠ってますよ!
 どれどれエロ本は何冊持ってるのでしょう? あるいはパソコンの類が見つかれば良いのですが……。
 これは!? ――っと昔の私の写真ですねぇ。おやおや、やっぱり私のことが好きなんじゃないですか。なのに彼ったら顔を合わせると「死ね!」「帰れ!」「デブス!」しか言わないんですよ。素直じゃないですよね。私は今も昔も浩一さんのことが大好きだっていうのに……。
「オイ、てめこら! 俺の部屋で何してんだ!?」
「ちゃうねん! ちゃうねんこれは! 別にエロ本とか漁ってた訳やないねん! ちょ、ちょっとオシッコ行きたくなって……(震え声)」
 響く鈍い音。そして遅れてやってくる叫び声。それが私が佐々木家で初めて迎える朝でした。

第二章 佐々木浩一は一人で暮らしたい

「ほらよ、朝飯だ。」
 浩一は、神奈子に向かって皿、そして上に乗った"何か"を差し出した。
「えっ、朝ごはんでしたら私が作りましたのに」
 神奈子は不満そうに皿を受け取った。神奈子の人生の中で、見たことのない黒い食べ物(?)が乗っていた。
「俺は他人の作ったものは食いたくねー。それも、信用してない奴のなら尚更だ」
「はぁ、そういうものですか」
 浩一は表情一つ変えずにパクパクと食べる。目はテレビのニュースに釘付けだ。
「……あまり美味しくないですね」
 黒焦げになった何かは、炭の味と生の身の感触が混ざり合って、一言で表現するとするならば不快だった。
「これは……伝説のダークマターでしょうか?」
 神奈子は黒焦げになったソレを色んな角度から眺めては「ほー」とか「へぇー」と、感想を漏らす。それを見て浩一は「食えりゃ良いんだよ、食えりゃ」とでも言いたげに睨んだ。
 ひとしきり観察を終え満足した神奈子はダークマターをガリガリと噛み砕き飲み込む。が、よほど苦かったらしく眉間の辺りを抑えて約5秒間ほど悶絶した。
「マッズい! デラマッズイッ! こりゃ私が作ったほうが絶対美味しいッスよ兄貴!」
「あーそう! 別に嫌なら食わなくていーんだよ!」
 浩一は皿を掴んで奪い取ろうとする。だが、神奈子も離そうとしない。両者はしばらくテーブルを挟んでにらみ合ったが、浩一は大人しく皿の主導権を渡した。
「……食うんなら残さず食えよ」
「はい!」
 神奈子はキリッと敬礼すると黒焦げのダークマターを箸でつまみ上げる。
「わ、わぁ~! 醜いブタのワシにふさわしいゴミみたいな朝飯や~! ありがてぇありがてぇ、ブヒヒヒヒヒヒイイイイイ!」
 神奈子は卑屈な笑みをこぼし、涙を流しながら食べる。せめて褒めるか貶すかどっちかにしろよ。やれやれ、浩一は溜め息をついた。

「俺ァ今日はこれから出かけてくるからよ」
「はぁ、せっかくの日曜なのにですか?」
「テメーは大人しく留守番してろよ。変なことしたらマジでぶっ殺すぞ!」
 浩一は外出の準備をして玄関でそう言った。「んー」神奈子は唇に手を当ててしばし考え込んでいたが、こんな質問をした。
「では、これから恋人とデートですか?」

 なんで、そうなった。

 意味がわかんねー。浩一は頭を抱えた。なぜこの女はこんなにも恋愛脳なのだろうか。
「もうすでにお付き合いされている恋人がいるのなら、私と付き合えなくても合点がいくのですが……」
 何を考えているんだ? このバカ女は? 脳にスイーツでも詰まってんのか? 浩一は怒りを抑えて答える。
「そんなんじゃねーよ、バイトだバイト。恋人とかいねぇ。欲しいとも思わねぇ」
「じゃあ、私と付き合いましょうよ。えっちなことしましょう! Let's えっち!」
「ヤダ」
 浩一はコンマ数秒で断った。神奈子は泣きそうになった。
「なんでや! 私がブサイクだからですか? それとも変な髪の毛してて変な目の色だからですか!?」
 神奈子は浩一に詰め寄った。浩一は答えに迷ってしまった。髪や瞳の色は嫌いではない。――むしろ好みだ。だって俺は、昔の神奈子に憧れて金髪に染めたのだから。
 ではブサイクだから嫌なのか? これも違う気がした。太ってはいるが顔のパーツは変わっていない。浩一はなんだか神奈子のことを……あんまりブサイクだブタだといって殴るのも可哀想に思えてきた。
「いや、良く見たら……髪の色とか瞳とかスゲー綺麗じゃん……それに顔もブサイクではないよ。痩せたら美人になるんじゃねーの?」
 浩一は、ついポロっと本音を言ってしまった。普段他人を褒めるのが苦手な浩一だが、素直に正直に褒められたと思う。心臓が早鐘を打ち、全身が熱くなっているのが自分でもわかった。顔とか耳とか紅くなってたら嫌だな。

 神奈子はどんな反応をするだろう。少なくとも、俺のこと嫌っているふうではなさそうだから、素直に喜んでくれると嬉しいんだが。
「んん? 何? よく聞こえなかったですけど」
 だが、神奈子はとぼけた顔で耳を差し出してきた。浩一は内心ホッとするとともに怒りが湧いてきた。もう一度、今度は少しだけ、声を大きく、はっきりと。
「だ・か・ら! 痩せたら美人だって言ってるんだよ! お前は!」
「え~~~~~~~っ? 何なにナニ? よぉ聞こえんて~~」
「お前は綺麗だって言ってんの!!!」
「もっと大きな声で!!!!」
「美人だよ!!!!!」
「ぜんっぜん伝わってこない! もっと高らかに、サンハイ!!!!!!」
「世界一可愛いよ!!!!!!!!」
「もっと!!!!!!!!!!!!!!!!!! 世界中に聞こえるように!!!!!!!!!!!!!!!」

 浩一は神奈子の耳を掴んで穴を拡張した。そして、その状態で深呼吸か~ら~の~
「うるせぇ!!ブス!!勝手にしろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」である。

「ウギギー! やかましいねん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 両者ともにボロボロである。近所の皆さん、休日の朝からすみません……。
 神奈子は片耳を塞いだまま、浩一を恨めしげに見つめ、勢いよく指差した。
「ほ、ほれ見ィ! やっぱりわしゃぁブサイクやないか!!! 変な色の髪のせいで! 左右の目の違いのせいで! 不細工な顔のせいで! どこに行っても虐められるし初恋の人にもフラれるし! マジで生きる価値無いからもう死ぬしかないな!」
「あーあ!」
「あーあ!!」
「あーあ!!!」

 床に伏したまま神奈子は泣き出した。浩一には何が何だかわからなくなった。
「お、お前アレだな……。顔よりもよっぽど性格に問題あるな!」
「そんなこと無いもーん! 容姿以外は完璧ですもーーん!」
「あぁそう。俺バイトの時間だから。勝手に喚いてろよクズが!」
 少年時代の「初恋の女の子」が、残念なんて生ぬるい言葉じゃ形容できないほどの救いようのないダメ人間になったのを再確認しつつ、浩一はバイト先のレストランに向かった。

   □■□

 埼玉県のほぼ中央。クロノス市の片隅にそのレストランはあった。
 レンガ造りの小さな店舗で、屋根は落ち着いた緑色。ファンシーなドアの前には小さな手描き看板。日替わりメニューが丁寧な女の子の可愛らしい文字とイラストで描かれている。浩一が一週間前からバイトし始めた『創作レストラン&カフェ エクレール』はそんな店だ。
「うーっす」カランカラン
「遅かったわね! 1分35秒の遅刻よ」
 店の奥で苛立った女性の声が聞こえた。店長が特製スープの仕込みをしているのだろう。店内から獣の濃厚な異臭が店に立ち込めて浩一は眉をしかめた。
 何度通っても、この匂いは好きになれない。だが、やめるのも気が引けた。店長は浩一を外見で嫌わず雇い入れてくれた数少ない人なのだ。
 浩一は従業員ロッカーでエプロン姿に着替えるとカウンターやテーブルを拭き始める。それにより店内のすべてが柔らかい照明を受けて輝き出す。なにより、この消毒液の匂いが好きだ。もしかしたら俺は、自分で思っている以上に掃除が好きなのかもしれない、なんて思いながら。

 ふとした瞬間にベルが鳴った。客か、珍しいこともあるものだ、と浩一は思った。
「あっ、すんません。まだ準備中なんですよ」
「ど~ぞ~、お構いなく~うふふふふふ」
「ぬぅん!」
 浩一は力ずくでドアを押し戻すと、ガチャガチャと鍵をかけた。それは――聞き覚えのある声が聞こえたからで、さらに言えば不吉なピンクの丸いシルエットが一瞬、確実に見えたからでもある。
「ちょ、なんでやの!? 開けて、あーけーて!」
「まだ準備中だっつってんだろが! だが、たとえ開店してもペットは入れん!」
「ギャワーン、ひどいワン!」
「お前はブタだろうが!」
 二人はドアを挟んで罵り合った。このまま二人は平行線なのだろうか?

「もう準備は終わりました。入れて差し上げなさい」
 凛と張り詰めた声がした。女性らしく優しい声色の中に理知的な厳しさが感じられる声だった。
「て、店長……でもコイツは……」
「何か問題でもあるの?」
「……」
 でも、コイツは――なんだろう? 浩一は色々考えたが、どれも入店を断る理由にはならなかった。せいぜいクラスメイトがバイト先に来てちょっと恥ずかしい、とかその程度の感情だ。
「食ったらすぐ帰れよ」
「はーい!」
 神奈子は元気よく返事をすると、メニューを眺めながら瞳をキラキラさせた。浩一は、腕組みをしてそれを眺める。
「えとね、じゃあこの『春風が運んでくれたごちそう。シェフのきまぐれほにゃらら何とかかんとかナマムギナマゴメナマタマゴっっっ』……をくらはい!」
「うぃーっす、店長! 春風一丁!」
「はーい、春風一丁!!」

   □■□
 料理が来るまでのあいだ、二人はテーブルを挟んで雑談した。浩一は嫌だったが、お構いなしに神奈子が質問してくる。
「しかしまぁアレですわね。キミがマジメに働いてるなんて意外だよね。料理好きなん? どーせ下手なくせに! ヒャッヒャ」
「うるせぇな。理由があんだよ。良いだろ別に。もう高校生なんだし」
「ふ~ん?」
 神奈子は椅子に斜めに座り背もたれに手をかけ、けだるそうに足を組んだ。お前は映画監督か。
「でもなー。レストランはキツいなぁ。仕送りがしょぼいからあまりワシ来れんよ?」
 神奈子は大げさなアクションで言った。
「それもこれも稼ぎの悪い親が全部悪いねんけどな!」
 神奈子はヒャヒャヒャと嗤った。浩一は今まで黙って聞いていたが、反論した。――いや、してしまったというべきか。

「自分の小遣いくらい自分で稼げ。一人で生きてけなきゃ生きる価値ねーだろ」

 そうだ、一人で生きてけなきゃ、自分で自分を支えられないような奴に存在価値などない。それが――浩一が16年間、誰にも頼らずに生きてきて分かったことだ。なぜなら、誰も自分を救ってはくれないのだから。
「……っ」
「バ、バカタレ! お前の些細な一言でなぁ、傷つく人がようけおるねんぞ! 謝罪しいや!」
 ※作者及び、この作品にはニート・ごくつぶし等を差別・侮辱する意図はありません。安心して、ひきつづきニートタイムをお楽しみください。

 店の奥でリズミカルに野菜が刻まれる。浩一は、いつでも料理を運べるように座り直した。
「嫌な仕事なんかしなくていいんよ! 好きなこと、夢中になれることがあれば、それが存在価値やと、ワシは思うで」
「まぁ一人でマジメに頑張ってる人も立派やけどな。スゴイ」
「やめろ、俺にとっちゃそれが普通なんだ。今度スゴイだの頑張ってるだの抜かすとシメ殺すぞ」
「その発言カッコイイ! すごい立派なこころがけ! 浩一さんSUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」
「ハイ、処刑決定」
「うぎゃおおおおおおおおおおう!!」

 ――それにしても。
 コイツはさっきからグイグイ来るな。こんなのと高校卒業まで暮らすのか……。浩一は早くも先が思いやられるのであった。
「キミは今、好きな女の子とかおらんの?」
「いねーよ」
「ワシ知ってるねんぞ! 昔はおったやろ? 強引にキスして結婚まで申し込んだ女の子が!!」
 それを今持ち出すのか。
「だ」浩一が反論しようとした瞬間――その時、厨房からありえないような轟音が響いて二人は椅子からひっくり返った。
「なっ、今の何や? なんか店が揺れたんやけど」
「ハハ、またかよ……」浩一は慣れっこといった感じで嘆息 (←作者、最近これ覚えた。これ使っとけば頭良さそうに見える) した。

「とにかくなぁワシが言いたいのは」
 神奈子はテーブルに這い上りつつ、まだ話を続けるのだった。恐るべき話の長さである。
「自力で生活できなくたって……皆に嫌われたって……我を忘れるほど夢中になれるものがあれば、そういう人は立派だとカナちゃんは思うのです」
「え? なんか言ったか?」
 奥から大皿を持った浩一が現れた。
「お、料理できたんか? なんでもないやで~」
「じゃあ、それ食ったら帰れよ。残しても良いから」
 浩一は吐き捨てるように言って、厨房に引っ込んだ。

 アレを食べれば神奈子も黙るだろう。おそらく二度とここに来ることもない。
 再び、店で掃除だけして家に帰る生活だ。本当は接客業なんてしたくもない。
「あー、やれやれ。早く終わらねーかな……」
 浩一は嘆息した。嘆息した。嘆息した。

 後半へ続きます。by作者

       

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