Neetel Inside ニートノベル
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 私の家はマンションです。だから洗面所までは遠くありません。弟の部屋は、私の部屋の前に位置しています。母の部屋はリビングの隣の和室です。
 短時間で洗面所に足を踏み入れた私は、最初に照明のスイッチを点けて、私の体を確認しました。
 鏡を見ると、確かに私の頭には犬耳らしきものがふたつ。それと左目がドクの目と同じものになっていました。左腕なんか肩から先が全部真っ黒です。
 耳を引っこ抜こうと思って、両手で両耳を掴んで左右に引っ張ってみましたが、髪を思いっきり引っ張られるみたいな痛みが……。小さな声で「いたた」と呟いてしまいました。それから少しして金髪人が洗面所にきました。
「これっ、これは何ですか!? どうなってるんです!?」
 こんな馬鹿げたことが現実だなんて。だけどもこうして起こっている以上現実なんですよ。認めなくては、受け止めなくちゃいけません。いくら買い物に出かけたと思ったら腕が飛び、倒れて起きたら体に色々付属されてたとしてもなんです。
「落ち着けって、家族が起きるぞ」
 金髪人の言葉通りだとしたら、今は夜なんでしょう。私は慌てて静かにしました。なんか表現が変ですね。
「説明してやるけどよ、服貸してくんない?」
 金髪人を見てると一気に正気になれた気がします。落ち着いた私は金髪人を連れて自室へ。金髪人は私より背が10cmほど高いので、それでも着れそうなスウェットと下着をタンスから取り出し、渡しました。私も寝巻きと下着を着込みます。
「さぁ、話してくださいよ」
 私が着替え終わったので、説明の催促をします。着替え終わった金髪人は、ベッドに腰掛て話し出しました。
「これから言うことは、お前の意識がなくなった頃からだかんな」
 やれやれ。そんな動作が似合う外人みたく肩をすくめてから、話し出しました。

@@@

 私は、あぁ、ここでいう私は金髪人の方だ。それで私は天使なわけよ。これ黙ってて欲しいんだけど。ツッコミしたそうだが、黙って聞いてくれ。
 分かりやすく説明すると、お偉いさんから『地獄の犬を殺して来い』って命令を受けて地上にやってきたのよ。その地獄の犬ってのがお前と一緒にいた犬なのさ。
 地獄の犬は、成長すると最終的にケルベロスになるんだとさ。後の説明がしやすくなる様に先に説明しとくが、この世界は私等天使が住む天界、いわゆる地獄な地界、そしてここ、顕界だ。
 私等としては、ケルベロスが量産されると厄介だから、顕界に出た子供のケルベロスを殺すために下っ端天使を顕界に派遣したって流れだ。難しそうな顔をしてるが、ここんとこは理解しなくていいんじゃね?
 地界としては、育てれば強くなるケルベロスを地界で育てたいが、地界で育てると均一に育ってしまうそうだ。つまり個体差がなくなっちまうって話だ。ケルベロスは子供のうちに、能力をひとつ得るわけよ。顕界だと育ち方が様々だから色々な能力を得たケルベロスが育つらしい。
 ケルベロスの子供は顕界に100体送られたって話だから、残りは99体だ。一体は私が殺したし、他の天使が動いてればもっと数は減っているだろうな。
 質問される前に先に答えとくが、ケルベロスは扱いが最悪だと、得る能力が大体決まってるんだ。優しく育てられた個体は地界じゃ珍しい。そんなレアを増やす為に顕界にケルベロスの子供を送ったんだろうな。
 前フリはこんぐらいにしといて、本題に入ろうか。

 私は土手で、お前の左目を『天使専用近接武器の天使の輪』で突き刺して抉ったんだ。天使の輪って頭上に浮いてるだけじゃないのかって? そんなんお前等の妄想だろ妄想。勝手なイメージを押し付けるなっての。
 その武器の形状はチャクラムみたいなもんさ。白いチャクラム。そんな輪でお前の目を抉って、腕を切ってついでに左耳を削いだのよ。
 そしたらお前が「ドク……助けて」とか言いながら倒れてよぉ。それからだ。それからケルベロスの子供、そのドクってのがお前の体に取り憑いてだな……。いや、まぁケルベロスだからさ。霊体みたいなもんなんだよ。魂を原料に動く生き物だし。
 どうやら子供のケルベロスは人間に憑くと能力を大人並に使えるみたいだな。そんでドクの能力は――。

@@@

「ドク!!」
 ドクの定位置である部屋の角からドクの声が。ドクが私以外の人がいる時に鳴くなんて本当に珍しいです。でも私以外の人がいる時にドクが鳴く場合って何かしら嫌な事があるんですよね。金髪人とか良い例です。
 ドクの姿は少し小さくなっていました。3まわり小さくした感じです。私が倒れている間に一体何がドクの身に何が起こったのでしょうか。
「マズイ、敵だ」
 金髪人が切羽詰った感じの雰囲気で、勢いよく立ち上がりました。敵ってなんでしょう。天使(笑)の力で何か察知したのでしょうか。
「ゴミを見る様な目で人を見るんじゃない。いいから外行くぞ」
 金髪人は私の右腕を掴み、玄関へ急ぎ足で連れてかれました。これから外に行くみたいですね。

       

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